第1349話 早めも何もないんだけどね。的なお話
熱い熱い熱い!
というか痛い!
そんな痛みにも耐えながら槌を振っているもんだからまともなものなんて出来るはずもなく、出来上がったのは粗末な剣っぽい板。
こんなんでも最初にしてはマシな方だと思いたい。
一通り作業を終えて後は研ぎをして柄と鍔をつければって所だけど、こんなのを使う事になるとは思えないし研ぎだけでいいかな。
それよりも、問題なのは腕が未だ痛いことだ。
真っ赤になってるどころかところどころ水膨れや爛れたようになってるし。
これ、火傷だよね。
どんだけの温度が必要なんだよ……。
「火傷してますね。今治します。」
アリシアさんに治療してもらってようやく腕の痛みから解放される。
キッツイなぁ……。
この痛みに耐えながら毎回鍛治をしていくとか……こんなんじゃまともな物なんて作れるとは思えないんだけど。
属性金属を扱う鍛治職人を尊敬するよ、マジで。
「今は辛いかもしれませんが、繰り返していけば自然と炎熱耐性が付いてくると思うのでそれまでの辛抱ですよ。」
「あ、そういうのがあるんですね。ってか、俺火魔法をよく使ってるのに耐性ないのってどうなんだろう……?」
「火魔法を使ってても熱に晒されてなければ耐性は獲得出来ませんから。それに、獲得できるかどうかも運が深く関わってますし。」
「世の中上手くいないもんですね。」
「……そうですね。」
さて、休憩も済んだしまたやりますか。
近づくだけで汗が噴き出すもその汗も熱量が凄くてすぐに乾いてしまう。
それだけの熱さを耐えながら一心不乱に槌を振るっていく。
汗が目に入らないように手ぬぐいを頭から額にかけて巻いているが、鍛治師や大工が頭にタオルを巻くのってこういう理由だったんだねと、改めて思ったよ。
そんなこんなを考えつつも2本目完成。
火傷を治してもらいつつ自分が作った物を眺めていくが、やはりまだまだとしか言いようがない。
耐性を獲得するまでは満足に出来ないからと時間のかからない短剣を作ってはみたものの、それでも火傷はするし出来は悪い。
「どうですか?」
「まだ全然ですね。やっぱりこの熱さがきついです。おかげで集中力が続かないですし。」
「それは慣れるしかありませんのでとにかく数をこなしてくださいとしか言えませんね。」
「分かってますよ。今はとにかく慣れる事。それを最優先にやっていきます。出来れば耐性をさっさと獲得したいんですけどね。」
おっと、そうだった。
アホほど汗かいたんだしちゃんと水分補給はしないとな。
ポ◯リ擬きをストレージから出して飲む。
でもこれ、今後はもっとたくさん必要になるだろうし今度暇を見て量産しておかないとな。
◇
魔力が必要ないので気絶せることはなく、そのせいで時間感覚が逆に崩れてしまっていて、アリシアさんに注意されるまで自分がお腹すいている事にすら気づけなかった。
「一生懸命なのは分かりますけど、それで体調を崩していたら元も子もありませんよ。」
「はい……すみませんでした。」
これは完全に自分が悪いので素直に謝っておく。
実際、アリシアさんの言う通りだしね。
「それじゃあ、夕食を食べたらその後は早く休んでください。この中じゃ分からないとは思いますが、内部時間的にはもう夜も遅い時間帯ですので早めに休んでください。それと、今度からは時間経過が分かる様に周囲の設定を少しいじっておきます。」
そんなこと出来るならとは思うが、何か理由があるかもしれないし何も言わないでおこう。
その後、速やかに食事を終えたら汚れを落として早めに就寝。
いや、内部的には夜遅くらしいし早めも何もないんだけどね。