第1343話 これは、まだまだ先は長そうだ。的なお話
膝枕23回目……。
あ、違った。
特訓23回目。
流石にこれだけの回数をこなしていればどれだけ才能が無かろうとそれなりには上達するというもので、魔力の流れをかなり抑えられるようになった。
まだ完全に抑えられるわけじゃないけど、元々薬によって魔力を垂れ流しにしているわけだから、薬を使わない状況なら多分問題ないんじゃないだろうか?
でもそれを考えるのはアリシアさんで、俺はひたすらに魔力を制御することだけを考え……あっ。
◇
おはようございます。
俺の上達に合わせてお薬の量も増えているので毎回こうして膝枕をされている。
なんかもう慣れすぎてこれが普通だという感じになってきたよ。
日常に戻った時に、目覚めた瞬間膝枕じゃない事に違和感を覚えそうでちょっと怖い。
「そろそろ次の特訓に移っても良さそうですね」
「本当ですか?」
「ええ。魔力の流れを大分操作出来るようになってますからね。」
そう言ってもらえると嬉しいものだな。
少しは自信を持っていいかもしれない。
いや、まだまだだ。
大分って言われてるし、完璧に出来ているわけじゃないのだ。
慢心するにはまだ早い。
「休息が終わったら次の特訓をしましょう。」
「はい!」
と、意気込んではみたものの、俺まだ膝枕されてるんだよね。
側から見たら多分締まらない光景だろう。
休息を終えて遂に次の特訓へ。
何をやるのかなと思っているとアリシアさんは何やら謎の板をボロボロと落としていく。
え、何そのぞんざいな扱い。
割れたりしないのそれ?
「これ、なんですか? かなり適当に放ってましたけど。」
「これは魔力を均等に扱うのを確認する為の道具です。」
「その道具をぞんざいに扱ってますけど……。」
「これくらいじゃ壊れないので問題ないですよ。」
「そういう問題じゃないと思うんですけど……。それで、これってどう使うものなんですか?」
「これは触れて魔力を流し込むことによってどれだけ魔力が浸透したかを可視化するための道具です。」
「可視化……それってつまり魔力にムラがあればまだらになったりするって事ですか?」
「その通りです。最初は素手で、その後は道具を通して魔力を流す特訓となります。」
「道具を通して?」
「そりゃ鍛治をするのに素手で触るわけがないでしょう。」
「あ、そっか。」
そういえばこれって鍛治をする為の特訓でしたね。
なんかもう、気絶と膝枕ばっかりで色々と忘れていたよ。
ま、まあ、何はともあれ早速特訓開始と行きますか。
えーと、魔力を流し込むんだよね。
ふんっ!
ぐぬぬぬぬ……って、何これ!?
緑と青と紫の3色が毒々しい感じに混ざり切ってない状態で放射線状に広がっているんですけど!?
「うわー、これは酷いですね。」
「そんなにですか……?」
「ええ。これは浸透具合によって色が変化するのですが、完全に浸透していた場合だと……このようにオレンジ色になるんですよ。それで、浸透具合が落ちる毎に暗い色になっていくんですよ。」
まだ使われていない板を拾ったアリシアさんが魔力を込めればあっという間に綺麗な黄色がかったオレンジ色に。
その色はまるで太陽のような暖かさを持った色。
「つまり、俺のこの紫の部分は……。」
「はい、全然ですね。この色ですと、低いところは15%、高いところだと70%ってところですね。」
「そうですか……。」
俺のは放射線状に広がっていて、手を触れた部分は緑色で、そこから遠くにいくほど色が暗くなっていく。
それはつまり、離れる程に浸透具合が落ちている証拠である。
それに対してアリシアさんがやった方は全部が同じ色になっていて余すところなく魔力を均等に流し込んだという事。
はぁ〜……。
これは、まだまだ先は長そうだ。