第1337話 気軽に聞くもんじゃないか。的なお話
遅れてすみません。
なかなか進まなくて、なんとかしたいんですけどね……
夜が明けて、空は……曇ってるね。
多分大丈夫だとは思うけど、道中で雨が降る可能性も考えておいた方がいいかな。
雲行きが怪しいしこの後が不安とフィクションならなるかもしれないけどここは現実。
そんな事はない。
とはいえ、領内で問題があったそうだからそのゴタゴタがまだ片付いていない可能性もある。
なので……
「コハルさん、これを。」
「なんですか?」
「問題があったって言ってたからね。その問題が片付いていなかった場合会っている余裕がないかもしれないから、その時はこの手紙をフミカゲさんに渡して欲しい。内容はコハルさんを預けてくれた事に対する感謝になっているから。」
「分かりました。……あの、このまま一緒にというのは駄目なんですか?」
「駄目だよ。厳しい言い方になるけど、コハルさんは足手纏いになるんだ。その事は牛鬼の時に分かったと思うんだけど、どうかな?」
「それは……はい、そうですね。」
「それに、コハルさんの雇い主はフミカゲさんだから、一緒に連れていくと誘拐になりかねないし、なにより、コハルさんにも家族がいるんだから家族を放って国を離れるのは出来ればしないで欲しいかな。」
「レントさん……そうですね。分かりました。レントさん達と過ごした日々を思い出にして、この地で頑張ります。でも、またこの国に来たら会いに来てくださいよ?」
「はい。」
「では、手紙を預からせてもらいます。」
「まあ、普通に会えたらその手紙は不要になるんだけどね。」
「その時は大切に保管させていただきますね。」
「いや、捨ててよ。」
苦笑しながら馬車に乗って、フミカゲさんの屋敷に向かった。
そこでは門番さんが屋敷に近付く者達に平等に警戒の視線を送っているが、コハルさんの姿を確認すると人好きのする笑みを浮かべた。
「ああ、コハルさんでしたか。お久しぶりです。」
「お久しぶりですね、ライドウさん。フミカゲ様は?」
「ああ、今なら執務室に居ると思いますけど、ヒノモトに行っていた間に溜まっていた仕事をこなしているでしょうから要件は手短にするのをお勧めします。」
「分かりました。ありがとうございます。……そういうわけなので……。」
「うん、分かったよ。でも一応伝えてみて。しばらく待っても何も無かったらその時は帰るから。」
「お手数おかけします。」
そう言ってコハルさんは屋敷の中へと入っていった。
俺達はコハルさんを見送った後しばらく待つつもりだったんだけど、なんかものの5分と掛からずにコハルさんが男性を連れてやって来た。
何度も後頭部を拝んだ人、フミカゲさんだ。
「これはこれはレント様並びにパーティメンバーの皆様、本日はようこそお越しくださいました。」
「いや、あの、そんな畏まらないでください。というか、大名自ら出て来ずとも良かったのに……。」
「いえ、そういうわけにはいきません。レント様は英雄役なのですから。それに、仕事が忙しく屋敷に招いてもてなす暇もない以上、せめてこれくらいはさせていただかないといけませんから。」
「はぁ……まあ、そういう事なら……。」
「それで、コハルはレント様のお役に立ちましたでしょうか?」
「はい。野営の際では大変美味しい料理を作っていただきましたし、それ以外でも何かと助けられました。コハルさんを付けてくださり、本当にありがとうございました。」
「いえ、お役に立てたのであれば幸いです。それで、このまま帰国なされるとか?」
「はい。向こうに残して来た人達もいるので、そろそろ恋しくなって来ましたからね。」
「左様ですか。きっと、良き人達なのでしょうな。」
「はい。優しい人達です。」
「ならば、あまり足止めをするわけにもいきませんね。本日はおもてなし出来ず本当に申し訳ありません。」
「いえ、仕事が忙しいのであれば仕方ないですし、そちらを優先してください。では、俺達はそろそろ行きますね。」
「はい。皆様の旅路が良きものでありますように。」
フミカゲさんへの挨拶も済ませ、再びミウラへと向けて進んでいく。
あ、そういえば領内での問題ってなんだったんだろう?
聞くの忘れてたけど、まあ、よその人間が気軽に聞くもんじゃないか。