第1326話 酸っぱいの苦手だから。的なお話
露店ネタが……引き出しが……といった感じに迷走気味で遅れました。
居るはずのないポーション売りのお姉さんを出しちゃおうかなと考えてしまうくらいには悩みました。
ちなみになんとか踏ん張ったので、ポーション売りのお姉さんは出て来ません。
はぐはぐ。
鮎の塩焼きうまー。
じゃなくて、お土産になるのを探すんだよ。
えーと、あれはお茶の計り売りだ。
お茶か……グラキアリスには無いタイプのお茶だしお土産としてはありかもしれないけど、あまり安過ぎるのもどうかと思うし……。
まあ、安くても美味しければいいんだけど。
「すいません。これって試飲って出来ませんかね?」
「試飲ですか? ちょっと待ってくださいね。」
お、あるみたいだ。
というわけで飲んでみるが……うん。
よく分からん。
いや、美味しいんだよ。
美味しいんだけど、どこがどうってのはわからないっていう……。
まあ、美味しいし値段もそこそこだしこれを買っていくか。
とりあえず200g×10人分ってところで、欲しい人に持っていってもらう感じにしよう。
他にも色々買うつもりだし。
「焼きもろこしいかがですかー?」
「「「いただきます」」」
「あ、はい。」
うまい。
あ、いや、これは違う。
これもお土産じゃない。
露店と言っても法則性がある事もあればそうで無い事もあって、食べ物系の店が並ぶ中にポツンと野菜売りの少年が居たりする。
かと思えばフリーマーケットみたいに自作の何かを売る所もある。
俺の目についたのもその1つ。
ヤマト服を売っているんだけど、雰囲気が本来のヤマト服とは少し違う。
分かりやすくいうなら和洋折衷という感じか。
南国感のあるものもあるけど。
「これって、ひょっとして他大陸の特色とかを取り入れてたりするのかな?」
「あ、はい。そうです。こっちのは東方大陸でこっちのは西方大陸の特色を取り入れてます。」
「へー、面白いね。」
「ですよね? どうでしょうか? そちらの女性達へのプレゼントに買ってみてはどうでしょう? きっと似合うと思いますよ?」
北方のはちょっとゴスロリ感があるな。
和ロリって言うんだっけか?
アデルとかは存外似合うんじゃ無いだろうか?
理由は言わないけど。
「それじゃあ……って言いたいところだけど、多分高いよね?」
「そんな事ないですよ。基本的に古着に手を加えて作ってますからそこまで高価じゃないです。というか、生地からとかは流石にお金が……いつかは自分の店を持ちたいんですけど、先立つものが無いことにはどうにもならないんですよね。」
「あ、本当だ。そこまで高くない……なら、幾つか買わせてもらうよ。」
「ありがとうございます!」
元が古着という事もあって比較的安く、でも丁寧に手直しされていて不安に感じさせるようなところはないし、この人、そのうち有名になったりしてな。
新進気鋭のヤマト服デザイナーって感じでさ。
ちょっと寄り道をしてしまったが、土産探しだ……
「枕はいらんかね〜。古今東西あらゆる枕を取り揃えているよ〜」
何故に枕?
まあ、買わないけど。
基本宿住まいだから枕は買う必要ないし、野営の時に枕を使っても、そのせいで深い眠りについてそのまま魔物に……なんて事になったらやだしな。
というわけで枕屋はスルー。
他に何か土産に……という所でふと気になる匂いがどこからか漂ってくる。
その匂いを辿ると一軒の店で、売っているのは何やらツボに入れた何か。
「ここって何の店ですか?」
「ああ、儂が漬けたお手製漬け物を売っているんだよ。」
「この匂いは漬物だったか。」
えーと、梅干し、沢庵、浅漬け、糠漬けにと色々あるな。
浅漬け糠漬けは漬ける野菜のバリエーションも豊富だし、結構な品数だ。
ん?
あれは福神漬けか?
7種入ってるかは分からないけど、それっぽい感じのやつがある。
そういえばまだこの世界ではカレー+福神漬けの超黄金ペアを食べた事ないな。
そもそもカレー自体ないわ。
俺、カレーが特別好きってわけじゃないけど、なんかちょっと食べたくなって来た。
いかんいかん。
このままここに居ると口の中がカレーに侵食されてしまう。
というわけで、浅漬け、糠漬け、福神漬けを買って次へ行く。
梅干しは買わない。
酸っぱいの苦手だから。