第1313話 まだ十分挽回できるはずだ。的なお話
えーと、確かキサラギ家はこっちだったはず……。
馬車で移動してたからちょっと記憶が不安だけど、多分こっち。
俺のカンがそういってる。
あ、あれ?
こんな所通ったっけ?
えーと、宿があっちだから方角的には大体合ってるはずだけど……場所に見覚えがないんだけど。
あれー?
曲がる場所間違えたかな?
ならこっちに……。
うん。
ここも違う。
あそこは右ではなく左に曲がった方が良かったか?
なら、今度はこっちを左に曲がってさらに左に曲がれば……あれ?
というか、ここどこだ?
やばいやばい。
道が分からないし現在地も分からなくなってきた。
太陽があそこだけど、宿の場所と現在地の位置関係が分からないから太陽が出ていても意味がない!
そもそも俺は今宿から見てどの方角にいるんだ?
まじでやばいかも。
つか、この辺家の形が似過ぎてるのがいけないんだ!
なんだってどの家も白くて長い壁に黒い屋根瓦なんだよ。
おまけに一軒一軒がデカイ!
本当に迷惑!
道ゆく人の事も考えろよな!
「ん? あれ? ここって確か……ミコの家? なんで、こんなところに?」
よく分からないままヒノモトを彷徨っていたらどうやらミコの所についてしまったようだ。
ようだが……なんか怖いな。
あいつ、人避けの結界とか張れるし。
そう考えると特定の人物を呼び寄せる結界か何かを使えたとしても不思議じゃないのがなぁ……。
いやまあ、ただの迷子なんだけどね!
流石に自分の迷子を人のせいにするつもりはないよ。
ないけど、ちょっと疑ってしまうってだけ。
そういうのは良くないんだけどねぇ。
ま、いいや。
予定が狂ったが、ここで挨拶してついでに場所も教えてもらおう。
流石に門には厳重な警備が敷かれてるだろうし、どこから忍び込もうかな……?
ちゃんと手続きとかをした方がいいんだろうけど、腐ってもこの国のトップだし国民にとっては神格化されてると言っても過言ではない存在だ。
実際に半神半人だしな。
そんな奴の所に一外国人が挨拶したいんです〜なんて言ったところで取り合ってもらえないのは目に見えてるし、これはやむを得ない事なんだ。
別に何か悪さしようなんてこれっぽっちも思ってない。
だから最悪捕まってもきっと大丈夫。
ミコが助けてくれるさ。
……多分。
どこか忍び込むのに良さげなところはないかなと屋敷の周りを見て回ってみるが、そこは帝の屋敷。
至るところに見張りがいて忍び込む隙がない。
困った。
「君、ちょっと良いかな?」
本当に困った。
怪しい行動をしていた自覚があるのでこれは当然といえば当然だろうけど、見張りをしてる人に声をかけられてしまった。
こうなってしまっては仕方ない。
プランDだ!
プランCは却下。
だって屠るやつだから。
「えっと、どうもすみません。」
謝りつつ変装を解除。
すると俺が誰なのかを理解してくれた模様。
こうなれば後は簡単。
少なくともちゃんと説明とかすれば英雄役というネームバリューもあるし無事に解放されるはずだ。
「そろそろ帰ろうかなと考えていて、それでその前に帝様に一言挨拶をしたいなと思ったのですが、どうやって入れば良いのか分からず……特に方策も浮かばずとりあえず周囲の様子を伺っていた次第です。」
「そういう事ですか……なるほど分かりました。少し上の方と相談してみます。ただ、紛らわしいので次からはきちんと話しかけてください。」
「分かりました。」
よし。
なんとか切り抜けたぞ。
ついでに連絡とかもしてくれるみたいだ。
予定が狂ってしまったが、概ね問題はない。
まだ十分挽回できるはずだ。




