第1301話 いつもの私に戻れるはずだから…。的なお話
昨日はすみません。
あーでもない、こーでもないと悩んで書き直して、それでも上手くいかず遅れてしまいました。
〜斬葉視点〜
レントさんとユキノが帰り、それを見送る。
この後レントさんとユキノはどうするのかな……?
「斬葉、丁度いい機会です。あなたにも稽古をつけてあげましょう。」
「は、はい!」
レントさん達と模擬戦をしたからか、お母様に火が付いたようで私も稽古をする事になりました。
なので着替えをしてから地下の練武場へと向かうと、そこにはすでに準備を終えたお母様が居ましたが……この雰囲気、本気ですか?
「斬葉、構えなさい。」
「はい!」
龍牙峰は帝様の護衛という家柄からか、携帯しやすい武器や素手での戦闘に長けているが、戦場に出る事も昔はあったそうで、その時に使われたのが成竜の牙を加工して作られたとされる竜牙刀・斬風。
初代様が作ったという話もあるそれは当主のみが持つ事を許されている。
今お母様が持っている木剣はその竜牙刀を模した物。
それを持つという事はそれだけ本気という事なのでしょう。
「行きますよ。」
宣言するとともにお母様が凄まじい速さで接近して鋭い攻撃を放ってくる。
私はお母様の攻撃をなんとか凌ぎ、時折反撃として剣を振るっていくが軽々と躱されてしまう。
「斬葉、速度を上げていきますよ。」
「は、はい!」
その言葉通り、お母様の攻撃の速度が上がってくる。
どんどん上がっていく剣速に、徐々に押され反撃として振るう攻撃の数が減っていく。
そして遂に防御するだけで手一杯になってしまう。
このままじゃ負ける。
だから多少無茶だろうと無理矢理にでも攻撃を弾いて反撃に転ずるしか勝機はない!
「くっ……うっ、はぁ!」
「甘い!」
「くぁっ!?」
しかしやはり無理だったようで私の反撃は防がれ、そのまま倒されてしまった。
「全然駄目ですね。今の貴方は冷静ではないようですね。そんな状態だから私が作った隙にも簡単に引っかかるのですよ。普段の貴方ならば罠だと気付けたはずです。それに反撃の際も本気で攻撃していたらあるいは突破出来たかもしれませんが、剣に迷いが見受けられました。それでは突破する事も出来ないでしょう。」
「それは……そうかもしれません。」
「今のままでは稽古にならないでしょう。一度冷静になって考えた方が良いでしょう。」
「……はい。」
迷いがある?
誰のせいだと思ってるんですか。
お母様があんな事を言うから……。
分かってるんですよ、迷いがある事くらい。
毎日毎日顔を合わせて、演舞とはいえずっと守ってもらっていたら気になっても不思議じゃないでしょ。
でもレントさんには既に結婚してる人も好きな人も居て、ユキノだって気があるようだった。
それに私は斬葉なんですよ?
いずれは龍牙峰を継ぐ者としてそれに相応しい者と結婚するから諦めるしかないと、そう思っていたのに……それなのにあんな事を言われて、心に迷いが生まれないわけがないでしょう!
妹のツグミだっていきなり斬葉の名を継ぐ事になっても戸惑うだけ。
私がこれまで龍牙峰を継ぐ為にしてきた勉強も、訓練も、稽古も、その全てが無意味になってしまう。
それはとても辛い……。
だから私に選択肢なんてない。
迷う必要なんて無いはずなのに……それなのになんでこんなに、辛いんですか……。
お母様は既に練武場を後にしているようで今ここにいるのは私だけ。
だから、もう少しこのまま1人でいたい……。
あと少し、あと少しだけこのままでいたい。
そうすれば、きっと、迷いを断ち切れるから……いつもの私に戻れるはずだから……。
ちなみに竜牙刀と言ってますが実際は刀ではなく刀に似た形状の片刃の剣で、初代のチートスキルで竜の牙を変形させた物です。
 




