第百十二話 散財してます。的なお話
「それで代金ですが合計で56200リムになります。」
「は? 安くないですか?」
「いえ、実はですね。以前買い取らせて頂いた盗賊の代金ですが、ギルドの方からなかなか受け取りに来ないと言われて戻ってきたのですよ。そのお金で相殺したのでこの値段なんですよ。」
「あ、そうですか。その、リィナさんに稽古つけてもらったり、その時の筋肉痛とかですっかり忘れてしまってて、さっき思い出したんですよ。」
「そうだったんですか。」
そんなやり取りがあったが、元々忘れてたし、そのお金で安くなったのだから何も問題ないから普通に支払った。
◇
モルト商会を出た俺達は再び買い物に戻る。
調理用具も揃ったし、後はベッドと……レイダさんの服だな。
彼女は今貫頭衣? みたいのを着ていてそれの裾が短くて中が見えそうだわ、横から胸が少し見えてるわで凄く目のやり場に困る。
だから先ずは彼女の服を買わないと。
俺はファッションとかよく分からないのでセフィア達に任せるけどね。
そして今はユニー・クロイツにてレイダさんが着せ替え人形になっている。
このユニー・クロイツって略すと某有名店の店名になるけど偶然だよね。
…っと、思考が逸れている間にどうやら買う物が決まったみたいだ。
そしてその内のワンセットを着ている。
彼女…レイダさんはロングの緑髪に切れ長で如何にもな爬虫類の瞳をしており、腕や足首などの一部に鱗とトカゲ尻尾がある。
……やっぱり寒いのは苦手なのかな?
トカゲだし。
もしそうなら服もそれに合わせないとだから聞いてみると特に問題は無いみたいだ。
「あの。それよりもこんなに服を買ってもらわなくても……その、私は奴隷ですから。」
「レイダさんが良くても俺が良くないの。自分達だけ普通の服着て一人だけ寒そうな格好とか良心の苛責がひどくなりそうだし。それに、奴隷だからってあんまり遠慮しないで。後で仕事について話すけど、ちゃんと仕事してくれたらそれ以外は自由にしてていいから。命を預かる以上はちゃんと責任持てってよく言われてたからね。」
「ご主人様…。分かりました。この身にかけても誠心誠意励ませていただきます。」
命を預かる以上は……ってペットじゃないんだからと思わなくもないが本人がいいみたいだし別にいっか。
服も買った事だし次はお待ちかねのベッドだ。
やっぱり四人寝れるやつがいいよね。
夜のアレも広い方が良いし。
しかしそうするとどうしても値が張る。
結局二人用のを二つくっつけることにして、布団はちょっと奮発して四人が寝れる大きいのにした。
アカネとレイダさんのは普通の一人用だ。
なんか私みたいな奴隷には床で充分とか言ってるが無視した。
女の子を床に寝かせたらいろんな人に怒られそうだしね。
母さんとか父さんとか、アリシアさんとか。
帰りに偶々通り掛かった革製品の店でレイダさん用の剣帯を購入した。
色々な武器を持たせてみたいけど手持ちのは剣しか無いからね。
だから取り敢えず買ったまま一度も使っていない鉄の剣を渡した。
レイダさんにはルリエを守ってもらうつもりだから必要最低限の武器を持っててもらわないと困るし威嚇にもならないからね。
そうして全ての買い物を終えて宿に戻る。
すると宿に泊まってるのになんでベッドを買ったのか? とレイダに聞かれたので家を借りて今日からの筈がもう一日待って欲しいと言われた事を伝える。
それに合わせて仕事についても説明しよう。
「それでレイダさんの仕事なんだけど、基本的にはルリエを手伝ってもらって、出かける際には彼女の護衛をして欲しいんだ。」
「ルリエ様というと…」
「うん。赤髪の子だね。それともう一人赤髪の子がいるけど、彼女は三日家事手伝いをして、残りで冒険者をする事になっているからその内会ってもらうけど仲良くしてね。」
「分かりました。」
「あ、後、もう一人が家にいる時にはレイダさんのレベル上げもしたいと思っているから。」
「……よろしいのですか?」
「もちろん。護衛をしてくれる人が強い方が安心できるし。」
「ありがとうございます。」
う〜ん。
なんか上から言ってしまうな。
奴隷と主人という関係的には合っているんだけど、年上相手にこういうのはちょっと肌に合わないな。
やっぱり普通に接するか、慣れるしかないかなと思っていたらグ〜! というお腹が鳴る音が聞こえた。
音の方を見るとレイダさんが赤くなっていた。
「くすっ。お昼ご飯にしようか。」
「うん。僕ももうお腹ぺこぺこだよ。」
「ん。」
「そうですね。」
「/////」
今日はそのまま食堂で客として昼を食べて読書したりゴロゴロしたりして過ごした。
しかし、マジで稼がないとな。
じゃないと来月の家賃が払えなくなりそう。