第1168話 目一杯楽しまないとな。的なお話
「これにて三次試験の全日程を終了する。昼にも言ったが、結果に関しては3日後に使者から聞いてもらう。なので3日後は予定は入れず宿に滞在しててもらう事になる。それと、結果の如何に関わらず祭り当日は諸君らとその仲間達には演舞の際には特等席を用意させてもらうので楽しんでもらいたい。では、解散!」
終わったのか。
最後は随分とあっさりとしてるな。
いや、最初からこんな感じだったか。
なんだかんだ大変だったから余計にそう感じるんだろうな。
大きな荷物はないし、木刀も既に返した。
後は帰るだけか。
道場を出るとそこには何故かセフィアがいた。
なんでこの場所知ってるんだ?
ユキノに聞いたのか?
「お疲れ、レント。」
「ああ。セフィアはどうしてここに?」
「うん。今日で三次試験も終わりだからね。レントのお疲れ様会をやろうと思って待ってたんだ。」
「なら宿に帰ってからでも良かったんじゃ……?」
「宿じゃなくて別の場所だったからね。それに準備に少し時間がかかるから僕はその引き止め役ってわけ。」
「それ言っちゃっていいのか……?」
「別にいいでしょ。そんなこだわるほどの事でもないし無理に引き止めても不自然に思われるだけだしさ。なら最初から言った方が楽だし期待感も高まるでしょ?」
「まあ、そうだな。」
「というわけで、行こ!」
「行こって、どこに!?」
「まあまあ、当てがなくてもいいじゃない。」
セフィアに引っ張られていったのは……どこだここ?
公園?
道場の近くからそんなに離れていないからまだ町の中心部付近だとは思うけど、こんな所もあったんだな。
ヒノモトに来てから試験やら牛鬼やら毒やらでそんなに街を見れてないからなぁ。
案内してもらってはいるけど、1日で街中全部見れるわけもないし。
時間が出来たらもう少しのんびり見て回れたらいいな。
公園をセフィアとのんびりと散策する。
こうして落ち着いた時間は久し振りなのですごく落ち着く。
「気持ちいいね〜。」
「そうだなぁ。風も心地いいし。」
風が木々の合間からそよそよと吹いていて、それが心地いい。
特にこれといった話題があるわけでもないし、会話が弾んでいるわけじゃないが、自然体でいられるこの感じに心が安らぐ。
こういう時間が最近無かったからそれがすごくいい。
「あ、一周したね。」
「本当だ。いつの間にかそれだけの時間が経ってたんだな。」
「じゃあ、そろそろいい時間だし会場に向かおうか。」
「ああ、案内してくれ。」
「うん。きっとレントも驚くよ?」
「期待してる。」
セフィアに案内された場所はなかなかに高そうなお店だった。
どうやらこの店にはドレスコードとかは無いようで気軽に入店できるらしい。
今の俺の格好は三次試験の事もあって動きやすい格好で、どう見てもこういう店に入るには向いてないからな。
ドレスコードが無くて良かったよ。
「久し振り!」
「うわっ!? え、アデル!? なんでここに!?」
「リリンが連れて来てくれたんだよ。それに私だけじゃないよ。」
「お久しぶりっす、レントさん。」
「お久しぶりです。」
「アイリスさんもリナさんも久し振り。」
「全く、本当に久し振りだよね。ヤマトに着いてからも一度も会いに来てくれなかったしさ。」
「う……いや、それは……」
「なーんてね。これまでの事は全部セフィア達に聞いたから別に怒ってないよ。いろいろと忙しかったんだししょうがないよ。」
「ええ、まあ……。」
「でも、今度からはちゃんと会いに来てよね。」
「分かりました。時間があれば寄らせてもらいます。」
「待ってるからね。まあ、積もる話はまた後で。今日はレントのお疲れ様会なんでしょ? さ、座って座って。」
アデルに促されるままに席に着く。
その際にセフィアにコソッと耳打ちされた。
「ね、驚いたでしょ?」
「ああ、心臓が飛び出るかと思うくらい驚いたよ。」
「ふふ、大成功!」
サプライズ成功で本当にいい顔をしてるよ。
多分今世界で1番かわいい顔だよ。
「さて、それじゃあレント、1週間お疲れ様って事で、かんぱ〜い!」
「「「かんぱーい!」」」
折角のサプライズパーティー。
目一杯楽しまないとな。




