第1093話 やっぱり、権力を持つと大変なんだな。的なお話
大名の娘がいて、他国の貴族の娘がいて、そんでもっておまけで英雄候補がいる。
そんな連中が自領でトラブルに見舞われたらそりゃあ城に招くよね。
でもそれはそれ、これはこれという事で一旦事情聴取を受ける。
それにここで情報を集めて早めに上に伝えておく必要があるんだろう。
大名も事情を知らなければ謝る事も詫びる事も出来ないんだから。
……個人的にはそんなのいいから早く次の街に行かせて欲しいんだけど。
事情聴取は思っていたよりも早く終わった。
まあ、さっき簡単に話したからそこまで聞く事もなかったんだろう。
せいぜい、戦闘に至るまでの経緯とその内容を話した程度だ。
事情聴取をしていた門番さんは何故か顔を青くしてたけど、鵺に何かしらトラウマとかあったりするんだろうか?
大名のいる城まで移動する。
日本の城はどれも似たように見えて結構違ってたりするように、どうもこのヤマトの城も城ごとに特色とか違いがあるみたい。
昨日は特に近づく事もなかったから気づかなかったけど、ミウラ城と違って屋根瓦が赤い!
……いや、まあ、他にもあるかもだけど、見分けなんかつかないし……名古屋城みたいにシャチホコがあるわけでも、姫路城だったか? なんか真っ白なという目に見える特徴ならともかく、それ以外だと一般人には分からない。
そんなレベルでしか違いが分からないけど、まあ、色々違うんだろうということは分かった。
そんでそのまま城の中に。
大名様の準備が整うまでの間しばらく待ってから謁見。
謁見なのかな?
謁見って国王を相手にする時に使う言葉ってイメージがあるけど、大名というか貴族にも使う言葉なのかな?
まいいや。
面倒だし分からないし謁見って事で。
「この度は我が領民が大変迷惑をかけてしまい大変申し訳ない事をした! この通りだ!」
会ってそうそう大名様は頭を思いっきり下げた。
「そんな、頭をお上げください!」
「それは出来ん! キラサギ大名の娘に、ミウラ大名の娘、他国の貴族の娘に英雄候補殿に迷惑をかけたのだ! それなのにそう簡単に頭を上げる事など出来ようはずがない!」
えぇ〜。
こんなずっと頭を見せられても困るんですけど……。
そういえばヤマトはちょんまげじゃないんだな。
「こんな事で詫びになるかは分からぬが、当家に好きなだけ滞在していってくれ!」
「いや、あの、京に行かないといけないので好きなだけというのはちょっと……。」
「で、では! では当家自慢の宝剣を授けよう!」
「いえいえ、そんなの要りませんから!」
「ならば宝石ではどうだ!?」
「宝石も必要ないですから!」
いやまあ、欲しいか欲しくないかと言われればアクセ作りに使えるから欲しいけども。
でもこの人は別に何も悪い事をしていない。
領民が迷惑をかけて、その詫びを大名がするというのはまあ、理解出来る。
そうしないと他の大名から吊し上げを食らうかもしれないし。
迷惑をかけておきながら詫びの1つもせぬなど大名の風上にも置けん! とかなんとさ。
だけど、あの3人組に怒りはあっても結果的には誰1人として死ぬ事もなく、こうして全員無事なわけだし、それで宝剣だとか、宝石だとか渡されても、こっちとしては貰いすぎと感じでしまうわけで……。
「な、ならば、私の娘をやろう! 好きにしてくれてかまわんぞ!」
「こっちが構うわ!」
あ、ついタメ口で……怒ってないかな?
「それではどうしろと……。」
あ、大丈夫そうだ。
「なら、今晩の料理はすごく豪華なのをお願いします。後馬達の餌も上質なのをお願いします。それと今回の戦闘で使ったポーションの代金と少しばかりの迷惑料を下さい。」
「そ、そんな事でいいのか?」
「結果だけ見ればそこまで大きな被害にあったわけじゃないですし、悪いのはあの3人であって貴方じゃありませんので、そこまで高価なものは必要ありません。ただ、気持ちと詫びをしたという事実だけあればそれで十分です。」
「……かたじけない。せめて、滞在している間だけは出来る限りもてなさせてもらう。」
「分かりました。」
そんな感じで謁見は終わった。
しっかし、無駄に卑屈というか、怯えていたな。
なんでだ?
何か知ってそうなユキノに聞いてみた。
「それは、ここの大名が六等大名だからだ。たまたまこの地に城を構える事ができたが、六等なのでな。周りからの嫉妬も激しい。そんな中で五等大名と三等大名、更には他国の貴族の娘に英雄候補に迷惑をかけたとあっては周りの目も気になるというもの。」
「ああ、そういう事。それでなんとか許してもらおうと必死だったわけか。」
「そういう事だ。」
やっぱり、権力を持つと大変なんだな。




