第百五話 プロポーズ準備的なお話
宿に戻る俺達。
今日はアカネも同じ宿に泊まる事になった。
もちろん、部屋は別だけどね。夜も出来ないし。
部屋に戻って一息ついたが、プロポーズはどうしよう。
やっぱり練習とかしたほうが良いのかな?
それともサプライズでなんかこうビックリするような催しとかした方が良いのかなぁ?
よし。女将さんに聞いてみよう。
三人を部屋に置いて女将さんの元に向かう。
三人とはセフィア、リリン、アカネだ。
ルリエは絶賛お仕事中だ。
……ルリエに見られないようにしないと。
俺は忍だ。
影から影へと渡る闇夜の覇者だ。
そんな気分でルリエに見つからないように注意しながら女将さんの元に向かう。
むっ!ルリエは新規宿泊客の応待か。
今の内に。
女将さんの所にやって来た俺はプロポーズについての意見を求めた。
「女将さん、ちょっと良いですか?」
「なんだい?あの子が何かしたのかい?」
「いえ、そういうわけじゃなくて。えっと、明後日の試験結果を聞いてもしもDランクに上がってたらセフィア達にプロポーズしようと思ってるんですけど、それで何かアドバイスとか欲しいなと思って……」
「プロポーズって…。ちょいと早くないかねぇ。」
「あはは…。まあ、それはそうなんですけどね。でもルリエも含めセフィア達に出会ってから三ヶ月くらいになりますし、今とそう変わらないしで。Dランクは冒険者として一人前ということなんで丁度いいかなって。」
「そうだねぇ。やっぱりストレートに行った方がいいんじゃないかい?」
「そう…ですか。あっ!指輪の箱とかない。どうしよう。」
「落ち着きなって。まだ時間はあるんだろう?相談したいことがあるならまた聞くから、今はとにかく動いてみな。」
「分かりました。あの、ところで本当に結婚していいんでしょうか?」
「なんだい今更。あんたは礼儀正しいし受け答えもハッキリしてるし、将来有望な冒険者だって話だからね。いけ好かない貴族連中や商人よりもよっぽどマシだよ。それにあたしがあの子を後押ししたんだ。これも想定内だし、寧ろこっちからお願いしたいよ。」
「ありがとうございます。絶対ルリエを幸せにしますから。それじゃ、ちょっと行ってきます。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
女将さんの許可を貰った俺はプロポーズの準備をする為に奔走する。
先ずはアクセサリー商とか宝石商あたりに行ってみようか。
でも、家の話はどうしよう。
流石に未成年で家を出るのは心配だろうし、どうしよう。
あの様子ならきっと大丈夫だけど、でも反対されたら……最悪、ルリエだけ別居かな?
一応借りた家は宿の近くだし、まあ、なるようになるしかないか。
〜紅の帽子亭にて〜
「そろそろ出てきな。」
「バレてた?」
「あんたの母親だからね。」
「あはは…流石は元Sランク冒険者。」
「まあね。それで、あの子はあんたにプロポーズするつもりのようだけど、あんたはどうするつもりだい?」
「もちろん結婚するよ。だってお兄さんの事大好きだもん。それでね、お母さん。あの、お兄さんは家を借りることになったんだけど、私もそっちに住んでいいかな?あっ!もちろんお仕事はちゃんとやるし、場所もすぐ近くだし、心配かけないつもりだけど……。」
「いいよ。それに夫婦が一緒に生活しなくてどうすんだい?私達があんたに……ルリエに望むのは笑顔で幸せにいてくれることだよ。あの子はきっと大物になる。だからあなたは彼を幸せにして、自身も幸せになるんだよ。」
「ゔん。今までありがどうね。おがあざん。」
「べつに良いんだよ。それに家は近いんでしょ。仕事は自由にして良いし、いつでも帰ってきて良いんだからね。ここはあなたの家なんだから。」
「うん。うん。」
「ほら、涙を拭いて。落ち着いたら仕事に戻りなさい。」
「うん。ありがとう。お母さん。」
ルリエと話してるときに女将の顔から母親の顔になりました。
そしてその母親の顔をしている優しい女将さんを見たお客さんがファンになったという話があったりしたそうです。