第1067話 着せ替え人形、回避出来ませんでした。的なお話
「こちらの浴衣というのは一体なんでしょうか? ヤマト服とは違うのですか?」
「それも作務衣や甚平と同じようにヤマト服の一種だよ。一般的にヤマト服といえば着物だけど、この浴衣もヤマト服として世界的に有名かな。まあ、俺のところでは、だけど。」
「着物? とどう違うのでしょうか?」
「元々浴衣は湯帷子っていう湯浴み着が原型とされてて、時代と共に変化して湯上り後に着るものになっていったんだ。バスローブとかガウンみたいなものかな。その時は入浴後に着る部屋着だったから出歩く服じゃなかったんだけど、これも時代の流れでいつしかお洒落の1つとして流通して、現代では祭りの時や宿に泊まった時に宿側が用意している部屋着として使われるかな。温泉地だとその浴衣を着て歩くのも定番だね。」
「なるほど……詳しいんですね。」
「前に温泉旅館っていう、宿を舞台にしたアニメがあってね。その時に少し調べたりして知ったんだ。あ、もちろん、さっきの話は俺のいた所の話だからこっちではどうかは分からないよ。だからとりあえず浴衣は買ったとしても外では着ないように。着るにしても誰かにこっちの事情を聞いてからだよ。」
「分かりました。」
そういえば、あれって今もやってるのかね?
いつか行きたいとは思ってたんだけどお金も無いし1人旅というのも親を心配させるかなって思って行けなかったんだよね。
アニメの神事が実際に行われるとか凄いよね。
「あの、お兄さん、ちょっと聞きたいんですけど、今いいですか?」
「あ、うん。なんでも聞いて。」
2度ある事は3度ある。
もうね、慣れてきましたよ。
「さっきのアニメの話、もう少し詳しく教えてくれませんか? 宿が舞台という事はつまり私のような宿屋の娘とかも当然出てきたんですよね?」
「あ、そっち?」
「そっちって、どっちですか?」
「あー、いや、なんだかんだ、服に関しての話だったからてっきり今回もそうかと思っただけで……。えっと、アニメの話だよね。あんまりネタバレもよくないし簡単な説明だけでいい?」
「はい。」
というわけで簡単なあらすじを説明する。
とはいえ、流石は宿屋の娘。
やっぱり自分に似た境遇の話には敏感なんだな。
それに、ルリエのこれまでの傾向からして自分の家の宿に活かせることがないか貪欲に求めてる感じだろうな。
世界が違うからどこまで活きるかはさておくとして。
あ、後主人公は宿屋の娘ではあるけど孫娘なんだよね。
宿屋の娘は友人と母親の方。
そういえば、こっちでは見てなかったし、近い内に実際に見せるのもありかな。
今度こそ自分の……と思った所で後ろを振り返る。
2度ある事は3度あると言うが、3回あれば後は起きないという話ではない。
だから警戒して振り返ってみたのだが、今回は何もないな。
……と、思わせて!
ない。
……………ここで!
ない。
3度目の正直!
フォースアタック!
5D's!
ま、流石にこれだけやってないんだからないんだろう。
定番ネタではこの後やって来たりするけど残念なことにそんな事はなかったよ。
本当に、あくまでもフィクションという事なんだろうさ。
手触りはこっちの方がいいんだよな。
でも通気性はどうだろう?
それに、柄はこっちの方が好みだが……あ、これは色がいいな。
この色でさっきの柄とかは無いかな?
うーん。
ま、いいや。
3つとも買おう。
この世界の季節に関しては季節を司る精霊がいい加減な性格なために乱れやすいってこの世界に来る前にアリシアさんが教えてくれたけど、そろそろ季節が変わってもいい頃だし、甚平も買っておいて損はないよな?
というか、もう3年くらい経ってるぞ?
本当に、そろそろ変わるはずだよな?
自分の作務衣と甚平を選び終えたし、後はみんなが終わるのを待つだけか。
と、思っていたが、そうではなかった。
「さ、レント。次はレントの服を選ぶよ。」
この後2時間近く着せ替え人形でした。
着せ替え人形、回避出来ませんでした。
アニメは「花咲くいろは」で、神事は湯涌ぼんぼり祭りですけど、今年はコロナの影響でやらないみたいですね……
元がアニメだけど実際に行われるのは凄い事なので、こういうのは未来永劫続いて欲しい。
来年は出来るといいんですけど、どうなる事やら。




