第1057話 次のテーブルへレッツゴー。的なお話
ふらふらと花の香りに誘われる蜂のように匂いの元に向かう。
人を避けてたどり着いた匂いの元は魚介類を網で焼き、醤油を垂らした網焼きの数々がそこにはあった。
白身魚はもちろんの事、エビやイカ、貝といったものまである。
変わり種だとなんかの魚の兜焼きなんかもある。
俺は食べないけど。
何せ、兜焼きなんて普段食べることなんかないからな。
どうやって食べるかどころかどこが食べられるかも知らないのだ。
そんなのどうしようもないだろ。
「な、なんて暴力的なまでの香りなの……? こ、こんなの食べるしかないじゃない!」
「くっ……こんなの食べたら絶対白いご飯が欲しくなっちゃうじゃない!」
「じゃあやめるか?」
「そんなわけない! 食べるに決まってる!」
「だよな?」
では早速……
「「「いただきます!」」」
美味い! としか言いようがない。
醤油のしょっぱさと香ばしさ、そして旨味がエビの甘味と旨味を引き出してて本当に美味い。
それに何よりこのデカさ!
半身焼きなのに頬張ると口いっぱいになって、噛めば噛むほど旨味が溢れてくる。
こんなの、ヤバすぎる……。
「レント! 私も!」
「お、リリンも食うか?」
「もちろん! あ〜ん。」
「ほい、あ〜ん。」
凄く美味そうに食べるリリン。
そういえば、リリンってエビが好きだって話を聞いたことあった気がする。
グラキアリスでは基本的にエビはゲテモノ扱いなんだけど、リリンの出身場所では平気だったりするのかな?
基本的には国単位だけど、場所によってはその限りではないってのもそれなりにあるだろうし。
「そういえばリリンってエビが好きだよな?」
「ん。大好物。」
「グラキアリスじゃゲテモノ扱いらしいんだけど、リリンの生まれた所だと普通に食べてたりするのか?」
「分からない。でも昔は普通に食べてた。」
「まあ、隣◯晩ごはんなんて番組あるわけもないし、よその家の食事内容なんてそうそう分からないか。」
「そういえば、両親は駆け落ちしたって言ってた。」
「つまり、もしかしたらグラキアリスじゃなくてアクリアの出身の可能性もあるってことか。」
「ん。」
アクリアだったら普通に食べるだろうし、両親が普通だと思い食卓に上げれば自然とリリンも食べるようになる。
その結果リリンはエビが好物になった、と。
まあ、これは可能性の話だし、だからどうしたって話なんだけど。
いつかはリリンの両親にも挨拶に行く予定だけど、出身地の風習がどうであれ受け入れるだけだからどうでもいい事。
あまりにもあんまりな風習があったら見て見ぬふりをするけどね。
「レント、食べないとなくなるわよ?」
「え、あ! お前ら取り過ぎだろ!」
リリンとちょっと話してる隙にアカネと蒼井のやつが結構な量の網焼きを確保していた。
日本にいた頃は夕食に焼き魚が出る度にまた魚〜なんて思っていたのに、こうも食べられなくなると欲しくなるから不思議だよな。
とりあえず白身魚とエビ、イカを確保。
貝は乗らなかったので置いておこう。
「後は白米があればね……。」
「味噌汁も欲しいわね。」
「そこに漬物とほうれん草のお浸しを追加すると?」
「見事な焼き魚定食になるな。」
ちょっと食べたくなってしまった。
だけど、まだここは1つ目のテーブル。
あんまり長居するのもどうかと思うし、別のテーブルに白米があるかもしれない。
なので次のテーブルへレッツゴー。




