第1014話 鑑定できる人は居ないものだろうか? 的なお話
「あ"あ"あ"〜疲れたぁ〜。」
9匹。
依頼は1匹だけでいいはずなのに、何故か次々と現れて来て結局9匹も倒す羽目になってしまった。
それも休み休みならまだしもひっきりなしというか、休む暇がなかった。
戦闘自体は合計で1時間と少しといったところだけど、そんなに長時間戦った事ないぞ?
冒険者の戦闘は短時間で決めるのを前提としている。
戦闘時間が短ければそれだけ魔物の損傷は少なく、こっちが怪我をする確率や疲労が溜まりにくいので、短いほどいい。
それなのに1時間越えだぞ。
そりゃ疲れるよ。
「リリン、湖の様子は?」
「ん、今のところ落ち着いてる……湖は。」
「湖は?」
「ん。お客さん。」
リリンが指差した先には、疲れた俺達を虎視眈々と狙っていたご様子のくまさん。
お前かよ……。
まあ、いいや。
さっさと処して帰ろう。
幸いくまさんは何度も倒しているし、すぐに終わるだろう。
なんか無駄に毛が多い気がするけど、大した問題じゃないだろう。
というわけで、サクッと倒した。
攻撃をして来たタイミングで懐に潜り込んで首を一突きして終わったよ。
くまさんの遺体を回収してそそくさと湖を離れる。
またさっきみたいにウナギがズルリと湖から出てくるかもしれないし、くまさんみたいにやって来るかもしれない。
戦闘音や血の匂いに引き寄せられる魔物がいるかもしれない。
だから一休みするためにもまずは湖から離れる。
「はぁ〜。流石にここまで離れれば襲っては来ないだろう。」
「多分ね。それにしても、疲れた〜。」
「だな。一休みしたらさっさと街に帰ろう。」
「風見、ポ◯リちょうだい〜。」
「あー、はいはい。分かったよ。」
俺も疲れているというのに……まあそこまで手間じゃないし、これまでにも何度も作って来たから慣れもあってすぐに出来上がる。
ついでにみんなの分も作った。
俺の分ももちろんある。
あ、それと蒼井、ポ◯リはやめろ。
そして休憩を終えて街へと帰還。
帰った頃には日が暮れかけていて、危うく締め出されるところだった。
この辺は本当に不便だよな。
防犯のためだとは分かってるけど、不便なのは不便。
宿に帰ってもいいのだけど、今日はギルドに依頼の報告をしに行く。
無駄に多く戦ったからついでに売れたりしないかとか気になるし、何よりも、うなぎの解体をして貰って早く食いたい。
だってうなぎだぜ?
なんか電気吐いてくるし粘液出したりするけど、うなぎはうなぎ。
きっと美味いはずだ。
「お疲れ様です。もう倒したんですか?」
「はい。」
「それは凄いですね。」
「それとは別に追加で売却したいんですけど、買取できますか?」
「はい。勿論です。何を狩りましたか?」
「えーと、カノンボルトイールが8匹とゴブリンにコボルト、オーク……後はくまも出て来ましたね。」
「8って事は全部で9匹ですか!? よく倒せましたね……。」
「続けて出て来たから疲れました。」
「疲れるだけですか……流石はエリュシオン様のお弟子さんですね。」
「あれ、知ってるんですか?」
「ギルド員でも噂になってましたから……弟子を取らない事で有名なエリュシオン様が弟子を取ったって。」
「そうなんですか。それでいくらぐらいになりそうですかね?」
「査定をしない事にはなんとも……他の方の査定もありますからまた明日でよろしいでしょうか?」
「それならしょうがないですね。ならカノンボルトイール1匹だけでいいので解体してくれませんか? 4匹ほど貰いますけど、まずは1匹だけでも。」
「えっと、それは構いませんが……何に使うのですか?」
「え、食べるつもりですけど……ひょっとして、食べられないんですか?」
「ええ……血液に毒がありますから、肉も必然的に。」
「あの、加熱しても駄目なんですか?」
「加熱、ですか? 聞いたこと無いです。」
「それは加熱しても駄目という事ですか? それとも、加熱してみたという話を聞いた事ないって事ですか?」
「後者です。」
「そうですか……。」
どうしようか?
自分で試すのは流石に怖い。
祝福の効果で多分大丈夫だろうけど、毒と分かってて食べるのはどうかと思うし。
せめて俺のアイテム鑑定がもう少しマシだったらなぁ。
ギルドに鑑定できる人は居ないものだろうか?
転移者、転生者は無毒化の仕方を知りませんでしたが、ヤマトにはウナギの無毒化の方法は一部には知られています。
もっとも、秘伝としてウナギを扱っている店しか知りませんけど。




