第九十五話 もう一つの異世界生活。的なお話
遅れてすみません。
なんか眠くてついうたた寝をしてしまいました。
「婚約者っておめーどう見たって15、6じゃねぇーか!それなのに婚約者って。それに、こんな美少女って。お前は一体何処のチーレム主人公だ!」
店長さんのセリフに大層驚いた。
まさか……ラーメン屋の店主がチーレムなんて単語を知ってるなんて。
こいつ……出来る。
……なんてふざけるのは程々にして。
「まあ、そんな些末事は置いといて、中に入れてくれません?立ち話もあれなんで。」
「些末事なのか?」
「些末事です。結婚する事は確定事項なので。」
「レント…。」
「ああ、はいはい。そういうのはいいからさっさと店ん中入れ。」
呆れたようにしながら中へと促す店長さん。
中に入るとさっき客として入った時と違ってガランとしていてなんだか少し寂しい感じがするな。
そして近くの席へと案内される。
「それで貴方は何時こちらに?後ついでに名前も。」
「俺は一年くらい前に。てか名前はついでかよ。俺は鳶山陽司。こっちの世界ではヨージで通ってる。そういうおまえは何時こっちへ?ついでに名前も。」
「俺は二ヶ月ちょいですかね。そんで名前は風見蓮斗です。」
「おまっ!二ヶ月で婚約者を!?」
「ええ。後二人います。」
「マジでチーレム野郎かよ!?何お前?ひょっとして勇者だったりするのか?」
「勇者じゃないですよ。それに魔王もいい人(?)みたいだし。」
「そうなのか。それで。なんでお前は俺を訪ねた?」
「そりゃ、同郷っぽい人を見つけたら気になるじゃないですか。」
「まあ、な。それは確かにそうかもな。」
「それでヨージさんは転移は何系ですか?それと出来ればでいいんで、転移してから今に至るまでを教えてくれませんか?」
「何系っていうと召喚とか巻き込まれとかか?」
「やっぱり無駄に詳しいですね。」
「無駄は余計だ。まあ、俺の場合は普通に迷い込んだって感じだな。仕事帰りに近道しようと裏道を通ってたらいつの間にかこの世界にいたんだよ。」
「あ〜。そういえばアリシアさんが迷い込むことがあるって言ってたな。」
「アリシアさんってのは誰だ。お前の他の婚約者か?」
「いえ。女神様ですよ。」
「女神って事はお前は手違い系か?本来は死ぬ筈じゃなかったんだが手違いで……みたいな。」
「えっと、俺は人助けをしたら結果的に事故って死にました。」
「はい?え?どういう事?」
「俺が人助けをした結果本来の流れからズレてそれが原因で事故死する事になったんです。」
アリシアさんがお茶菓子を買ったから……なんてのは蛇足だよな。
どうせ転移する事は決まってたし、そのお陰でセフィア達と婚約出来たんだからその事を恨んではいないしな。
「それは、なんというか、御愁傷様です。」
「ああ、いえ。そのお陰で嫁さんが貰えたんですからむしろ幸運と思っているんで、あんまり気にしないでください。」
「あ、ああ。そう考えたら同情する必要は無かったわ。それで何をしてたか?だよな。俺は元々ラーメン屋をやっててな。それでこっちに転移した時にそういう小説とか良く読んでたからなんとか街に入る事が出来てな。そんでそのままこっちの常識を勉強しつつラーメンの材料とか集めたり、研究してなんとか出来たから三ヶ月前から店を始めたんだよ。」
「はあ〜。凄いですね。でも、魔法とか使いたいと思わなかったんですか?」
「それは思ったんだが、ステータス見て諦めた。スキルとかも戦闘系じゃなかったしな。」
「そうなんですか?もし良かったらスキルだけでもいいんで教えてくれませんか?」
「構わないぞ。確か異世界言語適応にアイテムボックスに料理人に経理に交渉に後は解体だったかな。」
「確かにそれは店一択ですね。」
「だろぉ。そういうお前はどうなんだよ。」
「俺ですか?俺はまあ、木魔法があったんで。でも魔法の使い方が分からなくて剣で戦ってました。」
「あ〜。それはなんというか。でも剣とか持ってたのか。それって何処で手に入れたんだ。」
「ほら、俺は女神様と会ってますから、その時に必要な物をある程度貰ってたんですよ。」
「そうそう!お前は女神様と会ってんだよな!ならチートとか貰わなかったのか。超スゲーステータスとか、なんでも倒せる剣とか、超スゲースキルとか。」
「そんなの無いですよ。精々ランダムでスキルが手に入るスキルですけど、本当にランダムで、戦闘に使えるのなんて全然手に入らないんですから。」
「やっぱ、そう上手い話は無いんだなぁ。ってもうこんな時間か。そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
そう言われて時間を確認すると十二時を越えそうになっていた。
「そうですね。そろそろ宿に帰ります。それと、突然押し掛けてごめんなさい。」
「気にすんなよ。俺もなんだかんだで同郷の奴と話せて楽しかった。後ついでにこいつも持っていけ。」
そう言ってヨージさんは麺とタレと油とスープがそれぞれ入った容器を渡してきた。
スープのは寸胴鍋だ。
「こんなに。いいんですか?」
「いいんだよ。ガキが細かい事気にすんな。」
「ガキって……。はい。ありがとうございます。また客として来ます。」
「おう。それじゃあな。」
「お邪魔しました。」
「また来い。」
「はい。」
そうして初めての同郷の人の所から立ち去る。
そういえばなんでセフィアはついてきたんだろう。
そう思って聞いてみると色街に行くんじゃないかと思って不安になったそうだ。
俺がセフィア達を蔑ろにする筈は無いんだけどな。
それを証明するかのように宿に帰った後はセフィアの相手を丁寧に、沢山した。
一人だけというのも偶にはいいな。
そう思いながら眠りについた。