第979話 米を仕入れよう、そうしよう。的なお話
まともな地図が無いのはちょい残念だけど、無理に調べようとしてスパイ扱いされるのもどうかと思うのでここは素直にユキノを頼ろう。
とりあえずまずは宿を探そうかな。
門番さんに聞けばよかったかなぁ……でも後ろに入国審査待ちしてる人もいたしあんまり足止めするのもなぁ……。
うーむ。
まあ、適当に進んでみようか。
そんで露店なりなんなりで良さそうなところがないか聞こう。
「お兄さん達旅人?」
そう思っていたんだけど、なんか、子供に話しかけられました。
「まあ、旅人かな。」
ここには冒険者として依頼を受けにきたわけじゃないしね。
でも普通に旅人っているものなのかな?
「どうしてそう思ったのかな?」
「だってあんまり強そうに見えないし、でも商人っぽくもないから旅人なのかなって。本とか書いてそうだし。」
「強くなさそう……。」
やっぱりそう見られるのね……。
所謂細マッチョボディになってるんだけどなぁ……目に見える形では鍛えられてないというか、あんまり筋肉が大きくならないんだよ俺。
昔ちょっと漫画とかの影響で筋トレとかしてたりしたけど全然筋肉つかなかったし。
「もし良かったらさ、銀貨一枚でこの街案内してあげようか?」
「そう? それじゃあお願いしようかな。」
「本当か!? 本当にいいんだな!?」
「いいよ。それよりもまずはどこかいい宿が無いか知ってるかな? このままだと街を回るどころじゃないからさ。」
「もちろんだよ! それで、どういうところがいい?」
「見ての通り俺達は馬車だからね。馬車を置くことができる所で、それでお風呂がある所がいいかな。」
「うっ……風呂か……中に入ったことないから分からないけど、風呂がありそうな所でいいかな?」
「それでいいよ。」
「じゃあこっちだ。ついて来てくれ。」
魔物についてはギルドに近づいた時にでも軽く調べればいいか。
それにいざとなったら明日の午前中を使って調べるのもありだし。
声をかけて来た少年に案内された宿はなるほど確かに外から見ても高そうでお風呂があると思っても仕方ないだろう。
少年は薄汚れた服をしている辺りスラムに住んでいると思うし、外からしか判断できないんだろうな。
でもこれはちょっと高そうだなぁ……。
また散財か。
ヤマトでお金稼ぎとか出来るといいな。
チェックインをして宿に馬車等を置いてから少年の元に向かおうとすると宿の人に忠告を受けた。
「あの少年はスラムに住んでいるのであまり心を許すのはお勧めできません。警戒しておくことをお勧めします。」
「分かりました。」
それなりに知られているんだな。
あの子がスラムに住んでいるということが。
まあ、だからどうしたという話だ。
少なくともまだあの子から何かされたわけじゃないのに警戒するというのは良くない。
彼だって望んでスラムに住んでいるわけではないだろうし。
まだ子供である彼がスラムに住んでいるという事は親に何かあったとか、行政の方の問題とかそういう理由があるはずだ。
だから彼を警戒し過ぎるのは良くない。
何かありそうなのに警戒しないというのも問題あるから、そういう事になりそうな時に即座に動けるように心構えだけはしておくけど。
「待たせたね。それじゃお願いするね。」
「おう! まずはこっちだ。この街に来たならここに行かなきゃ始まらない!」
「それは楽しみだな。」
最初に案内されたのは露店だけど、暴力的な匂いを漂わせている店だ。
その匂いはウナギの蒲焼きに似ている。
「結構高いんだけど、すごく美味いって評判なんだ。」
「確かにいい匂いだね。おじさん、11本下さい。」
「はいよ! 1本200リムだから全部で2200リムだね。」
1本200というのは少し高いのかもしれないな。
「はい。」
「え?」
「食べたかったんだろ?」
「でも……これ食べたら銀貨無しとか言わないよな?」
「言わない言わない。」
「じゃあ、食うぞ? 後で払えって言っても遅いからな!」
「いいから、早く食べなって。」
「ふわぁ……美味ぁ……。」
幸せそうに食ってるなぁ。
さて、俺も食うか。
「これは、確かに美味いな。」
似ているというかまんまウナギの蒲焼きだこれ。
ご飯が欲しくなる……。
ヤマトで絶対に米を仕入れよう、そうしよう。




