第九十四話 第一異世界人。的なお話
「ここが首都か〜。」
「急にどうしたの?」
「いや、俺この世界に来てからまだカインの街しか行ったことなかったからさ、それでちょっとワクワクしてて。」
「そっか。確かに新しく行く街ってなんかワクワクするよね。」
「おーい。そろそろ宿を探しに行くよ。」
「アレクシアさんが呼んでいるし、行こっ!」
「うん。」
手を差し出すとセフィアは手を握ってくれた。
そして手を繋いだままアレクシアさん達の元へと向かう。
完……って漫画だと出てそうだけど、別にそんな事は無いからな。
普通に宿を探してるから。
今回の宿のお金だけど、アベルさん達が払ってくれる。
これは試験ではあるけど、護衛依頼でもあるから宿代を雇い主が払うのは普通だそうだ。
野営中の食事はサバイバル能力を見る為に調理を分けていたけど、依頼主が用意する方が普通との事。
勿論事前に依頼に食事は各自で用意してくださいと書いてあったり、依頼の打ち合わせで各自で…ということになることもあるそうだが。
そんなことを考えている間に宿に着いたんだが、ちょっと豪華過ぎない?
前の世界の何処ぞの有名ホテルほどでは無いが、異世界という事を考えればかなりのものだろう。
俺の家……じゃなくて普段使っている宿の三倍近くあるぞ、これ。
値段も高いだろうし、本当に良いのだろうか?
アレクシアさんとエルナさんも圧倒されてるし、俺の感性は間違っていないはずだ。
だから聞いてみた。
「あの〜、リィナさん。本当にこの宿で良いんですか?とっても高そうなんですけど…。」
「うん?ああ、確かにこの宿は高いがギルドからの援助もあるから問題ない。それにわざわざ高い宿に泊まるのにも意味があってな、こうして試験で高い宿に泊まらせることでいつか自分もこんな宿に泊まれるようになりたいと思わせて、冒険者のやる気を出させているのだ。」
「なるほど。」
つまりは上を体験させて目標を作らせることが目的ということか。
そういう事なら存分に満喫させてもらおう。
それにこれなら防音もしっかりしてるだろうからこの前みたいな心配もいらないだろうし。
◇
そして俺達は今、とある行列に並んでいる。
今回の依頼の目的である最近首都で流行っているという麺料理を食べに来ている。
今回の試験の日程は行きに二日、街に二日、帰りに二日というものだったが、予定より早く着いたので本来は宿の食事だが外に食べに来ているのだ。
しかし、気になるのはさっきから漂ってくるこの匂いだ。
なんか凄く懐かしいんだが……。
中に入ってみて案の定。
「こ、これは、ラーメン!」
そう。
何故か異世界でラーメンだ。
とはいえ、ここは繁盛店。
驚くのもそこそこにラーメンを食べる。
一生食べれないと思っていただけに、久しぶりのラーメンは凄く美味しかった。
一旦宿に戻ったが、店長と話がしたかったので閉店間際に再び店を訪ねる。
「悪いな。今日はもう店じまいだ。」
「店長さんですか?」
「店長って、まあ、そんなようなもんだ。」
「一つ聞きたいんですが、ラーメンを何処で知ったんですか?」
「何処でって、これは俺が自分で思いついて……「嘘だ!」」
「嘘だ!…ってなんでそんな事を言えんだよ。」
「俺はこの料理の事を既に知っているからです。」
「既に知っているって……ひょっとして、お前は…お前も異世界人なのか!?」
「お前もって事はやっぱりあなたも異世界人なんですね。」
「まあな。しかしこんな所で同類と出会えるとはな。……ところであの子はお前の知り合いか?」
「え?」
店長さんの質問に思わず振り返ると、セフィアがこっちを見ていた。
なので店長さんに向き直って宣言する。
「ええ。俺の婚約者です。」
「はいー!?」
店長さんはかなり驚いていた。




