第964話 また寄るとするか。的なお話
詐欺師を捕まえた後、衛兵が来たのだが……来るまでに40分近くかかってる。
いや、長すぎでしょ……。
そんなんで大丈夫なの、辺境伯領……。
「な、何だこの騒ぎは! ……はぁ、はぁ。」
しかもめっちゃ息切れしてるし……あの、本当に大丈夫?
「詐欺師を捕まえただけですよ。」
「詐欺師……って、そいつがか?」
「はい。」
「この状況からは想像出来んが……?」
「景品を餌にお金を騙し取るんですから、立派な詐欺でしょう?」
「内容はなんだ?」
「えーと、運試しで球の入った箱を当てるって奴なんですけど、その球を入れる振りをしていたんですよ。当然振りなんで入ってないわけですから当たりようがありません。」
「なるほど……それは確かに詐欺だな……。(マジかよ……俺結構注ぎ込んじまったぞ?)」
ん?
今なんか言ってませんでした?
注ぎ込んだとかなんとか……。
「こほん……。そいつが詐欺師だという事は分かったが、調書を書かねばならぬから済まないが詰所まで来てもらうぞ。」
「まあ、仕方ないですよね。」
「あ、後景品を手に入れた人は恐らくグルなんで、観客の人から人相とかを聞いたほうがいいと思います。」
「そうか……聞いていたな。後は任せたぞ。」
「りょーかい。」
他の衛兵の人に任せて俺達を連れて行く最初に声をかけてきた衛兵さん。
そうして詰所まで向かうのだが……遠っ!?
え、何?
もう20分は歩いているんですけど、まだ着かないの?
「遠くてすまんな。1番近い所でも先ほどの広場から歩いて30分程かかるのだ。」
それで来るのが遅かったのか……。
歩きで30分なら走れば20分くらいか?
で、騒ぎを知らせに行った人が行くのに20分でさっきの広場まで20分で計40分。
知らせに行く人の身体能力次第ではもう少し遅くなる可能性もあるがそれでも40分ほど出来たわけだから、一応急いで来たという事だろう。
怠慢かと思ってしまい、すみません。
普通に一生懸命だったんですね。
「詰所の場所、変えたらどうです?」
「そうしたいのは山々なんだが、あの辺の土地は高いんだよ……。商売をするにはもってこいの場所だから必然的にそこの値段も高くなってしまうんだ。」
普通、そういうことも考えて街づくりしません?
いやまあ、発展していくうちそうなってしまい、後から土地を手に入れるのが難しくなったのかもしれないけどさ。
「それにあの場所は商業ギルドの管轄で、無理に取り上げようものなら要らぬ軋轢を生みかねない。」
つまりあの辺が今の形に発展したのは予想外で、対応しようとする頃には既に商業ギルドが手に入れてしまっていたと。
でもそれくらい融通すればいいのにと思ってしまうのは甘いのかな?
まあ、今回の事で少しは交渉しやすくなるかもしれないけど、その辺は領主様にお任せだな。
そもそも俺達はこの街に住んでないから別に対して困らないし。
そして30分程かけてようやく着いた詰所にて調書の作成を行い、解放されて元の場所に戻るまでに合計で1時間半かかってしまった。
後1時間くらいしか観光出来そうにないな。
くそっ!
もう少し楽しみたかったのに、あの詐欺師のせいで……。
そうして残りの時間を楽しんだわけなのだが、やはり1時間というのは短すぎる。
本屋を軽く見て露店でちょっと買い食いしただけで1時間経ってしまった。
暗くなる前に宿に戻るためには今から帰るしかない。
あ〜あ。
こうなったらヤマトから戻る時にまた寄るとするか。