第十話 刺さっちゃった的なお話
そして翌日、俺たちは冒険者ギルドにいる。
昨日のアレの気まずさもなんとか収まったのでパーティーで初の依頼を受けようと思いギルドに来たら、パーティーを組んで一人増えたからと3つまで依頼を受けれるようになった。
「うーん。僕はこの3つがいいと思うんだけど、どうかな?」
そう言ってセフィアが指差したのは薬草採取、チャージラビット納品、そして商店の店番だった。
「……一人で倒して来いと?」
「えっ、あっ!ごめんこれじゃなくて隣のホーンファングのやつ。」
良かった。
出稼ぎする旦那みたいなことさせられるかと思った。
「このホーンファングは初めてあった時に出てきたオオカミだよ。」
「あいつか。なら、問題ないしこの三つにするか。」
「うん。」
受付で依頼を受けた後、二人で昨日の所で薬草を集め、チャージラビットを30羽ほど狩ったのだが、ホーンファングが全然見つからない。
「全然見つからないな。」
「そうだね。この前は何もしなくても出て来たのに。」
「場所変えてみるか。」
「そうしよっか。あ、でも森の奥は無しだからね。」
「森の奥だとなんかあんの?」
「森の奥は魔物の住処だからだよ。でも、これくらいは普通知ってると思うんだけど。」
「あー。俺は森から離れた所に住んでたから。」
「そうだったんだ。それじゃ、しょうがないね。」
なんとか誤魔化せてよかった。
異世界出身ってのは別に話してもいいとは思うんだけどあまり言いふらされても困るから絶対他の人には言わないって思えるくらい信頼出来るようになってからかな。
じゃないとお互いに余計な面倒ごとに巻き込まれないとも限らないし。
森の浅い所を街道に沿って移動するもなかなか出会わない。
ゴブリンなら何度か倒したんだけどね。
と思ったら前方から5匹走って来たからセフィアに頼んで足止めしてもらい倒す。
これで依頼終了とはいかなかった。
何故なら奥から大きな足音が聞こえるからだ。
恐らくさっきのホーンファングは足音の主から逃げていたのだろう。
そうして姿を現したのは鋭い牙と角を持った大きな猪だった。
「あれは、トライデントボア!?森の中域にいるはずなのに。」
「中域に近づきすぎたのと獲物を追いかけて来たからだろ。それよりも、来るぞ!」
トライデントボアが俺に向かって突っ込んで来たので大きく避ける。その隙を突いてセフィアが土魔法で足止めをしようとするが少し速度を落とすことしかできなかった。
こいつのスピードだと逃げるのは無理そうなので倒すか、動けなくする必要があるが、どうしたものか。
ターゲットをセフィアに変えて突進する後ろからダガーを投げるがもともと牽制目的だったので大したダメージを与えることができず木をなぎ倒していた。なにかいいアイデアはないかと考えてみる。そして、とりあえず浮かんだアイデアを試す為にセフィアに協力を願う。
「今度こっちに突っ込んできたら俺が躱すタイミングでさっきの足止めをしてくれ!」
「えっ?でもさっき駄目だったよ!」
「試したいことがあるから、頼む。」
「分かった。やってみるよ。」
と言った所でダガーが鬱陶しかったのかこっちに向かってきた。
咄嗟に浮かんだことだから自信はないがこのままだとスタミナ切れでやられるだけだし、駄目でもともと、やるだけやってみる。
と思って俺は……
後ろに向かって逃げ出す。
「逃げた!?」
セフィアが叫んでたが作戦だと後で分かるはず。……多分。
俺は大きい木に向かって走り、あるポイントで反転しタイミングを見計らってトライデントボアに向かって作戦の鍵を投げつける。
そう。さっき倒したゴブリンを。
ゴブリンで目隠しをした隙に右に躱すと同時にセフィアに「今だ!」と合図をだす。
「わ、分かった!」
ゴブリンを弾いたトライデントボアの足下から土が絡みつこうとするが拘束を破られる。
だが、速度は落ち、さっきよりも大きな木だった為倒すことなくトライデントボアは足を止めることになった。
牙と角を木に突き刺した格好で。
無防備な頭目掛けて思い切り剣を突き立てて、なんとか勝利をもぎ取ることに成功した。