Gifted
自分の文章が下手すぎる!!!
それでもどうか読んで下さい!
今回はかなり重要な説明がたくさんあるので!!
4.
Gifted。
その名の通り、「授かりし者」。
しかし、それは完全な皮肉である。
その言葉の定義は、「先天的に通常より高い能力を示す者」という従来のものとは遥かに異なる。
ここで言う"Gifted"とは、特定の物質、特に化学元素の持つ性質を宿した人間-言い換えると、物理法則を無視してその身体から無限に元素を生みだすことができるという人智を超えた存在である。
それらが何が原因で、どのようにして生まれたかは一切不明。理論上は、現存する173個の元素一つずつに対応し、全世界で173人のみがその能力を持っているということになっている。しかし、まだ発見されているのはごく一部。それもそのはず、そんな"便利な"能力を持っているにも関わらず、誰もそれを使おうとしないため、手がかりが全くつかめないのである。
なぜ彼らは出し惜しみしているのか。それは使うことによる反動が大きすぎるからである。
1番最初にGiftedが突然発生したのは、30年前、B級国家・ベラルーシのミンスク市。最初のGiftedは、銀を操る能力者で、わずか17歳。身体から銀を生成し、延性を利用して2km以上の人間を攻撃したり、電気伝導を利用しての電線からの放電攻撃、太陽光の反射により目を焼いたり、他金属との合金を生成し硬化したもので突き刺したりと、さんざん暴れまわった挙句、ついに軍と衝突。そのときには彼の半身は銀と見分けがつかなくなり、暴走状態にあった。
この状態は「臨界」と呼ばれ、周囲にはもちろん、自身にも大変危険な状態にある。元々、Giftedが活動すると、周りに正体不明の毒素・NMを撒き散らす。それを直接受けると、人間は肉塊になり、皮膚が原型をとどめていられなくなる。致死量ではなくても、長期間受ければ身体の一部が変形していく。それは他の生物にとっても同じことで、植物は変形し、動物は奇怪な姿に変異していく。Gifted本人はその影響を受けないが、代わりに操っている元素自体が身体に蓄積していき、何らかの障害をもたらす。最初のGiftedの場合、銀中毒にかかり、弱り果てた挙句、隙をつかれ後ろから銃殺された。
彼の遺体は政府に回収され、様々な証拠隠滅が図られたが、その後も何らかの事情で継続的にGiftedは生まれ続け、だんだんと手に負えないような能力者も現れた。
当初、Giftedへの対処法は持久戦のうえ殲滅するのみだった。それである程度は持ちこたえられると踏んでいた政府だったが、銀の能力者と違い、敵も防御方法を得て戦い方を覚えた結果、金属など固体能力者は身体自体を元素と同化させて銃弾を防ぐ、身体を損傷しても再生するなど、ほぼ臨界状態のまま戦闘を継続し、自身の限界とも戦う形で多大な損害を与えた。
多くの国は、戦えば損害が出るので、Giftedを放置。するとGiftedも自分たちの寿命を縮めたくないので、素直に姿を消した。よって、もう10年ほどの間、誰もがその存在を忘れようとし、平和になっていた。
「…はずだったんだよなぁ、これが…」
アイザックがため息をつく。
「また湧いてきてくれたおかげで、Rebellionの目的達成に拍車がかかったと思ったんだよ、こっちも。それが、まさか、うちの組織の人間ばかり狙って次々に虐殺するとはね…」
「…!!??」
組織の人間を狙う?Rebellionは秘密結社なので、局員の情報も流出しないように配慮してあるはずだ。よって、誰が参加しているかを特定するのは不可能…
「…だから僕たちも、元局員の裏切りかと思って、まず君を真っ先に疑った。しかし、死因からして、あれは君の仕業ではない。別の、誰か能力者の仕業だ」
「その、死因というのは?」
「直接的な死因は銃殺らしいが、実はよく分かってないんだ…」
その後のアイザックの話から、今事態は最悪な方向に動いていることが聞かされた。
突如として現れたGiftedは金属系の元素の使い手で、組織の諜報部に属する局員3人が犠牲となった。死因は銃殺だが、拷問の形跡あり。敵は何かの情報を得ようとしていたのだろうが、中々口を割らないことにイライラしたらしく、かなりの毒物を流し込み、半死半生の状態に追い込んだらしい。
しかし恐ろしいのは二次災害の方だ。そのGiftedが力を行使したため、NMが拡散され、動植物が壊死・変形、また人間が変異した姿、公式名・"生ける屍"が大量発生した。事実、犠牲になった局員も影響下にいたため、身体が二つの毒素の餌食になり、見るもあてられないことになっていたらしい。
被害を受けた地域は立ち入り禁止、箝口令も敷かれたため、混乱防止のための揉み消しを図ったようだが、やはりそんなもの程度では噂は消せるはずもなく、近隣住民はみな疎開を始めたり、政府に詳細を求めるためのデモを起こしたり、大混乱に陥った。政府はまず民間清掃業者にNMの収束を任せ、何らかの手段で市民は黙らせたらしい。
とにかく、Rebellionの諜報部が手を尽くしてもここまでしか情報を引き出せなかった。地方政府にスパイとして送り込んだ部員が言うには、Giftedの能力や、打開策、その他事件に関わることは全て最重要機密に指定されており、市長にすべて権限が委ねられているらしい。
「…で、そのGiftedが色々やらかしてたところっていうのが、MN州のクラスバイ市ってところだ」
もちろん、聞いたことない地名だ。しかし、MN州ということは、アイザックの管轄内だろう。だからこの男がこうやって私を説得しに駆り出されたわけだ。
「ここからが重要なんだ…さっき君は組織への復帰を断ったが、実はもうそれも想定内だった。よって、前もって強硬手段を取らせてもらった。…我々が定めた君の留学派遣先は、クラスバイ市に近い町、ブラナド市だ」
私は耳を疑った。私の派遣先はCO州(Rebellionでは第8地区に属する)のはずだ。それを組織は変更したとでもいうのか。
「バカな…私の留学先はもう決まっていたはず…どうやってそれを変えた?」
アイザックは口元に軽く笑みを浮かべた。やはり目は笑っていない。
「そんなの簡単さ…少し圧力をかければ、君の利用した留学エージェントごとき、掌の上さ。このご時世、留学エージェントなんて仕事全然儲かってないからね。君みたいな物好き以外、留学なんて安全な勉強法でないとみんな考えてるのさ。そこで、我々が架空の企業を名乗りちょいと"資金援助"とやらを申し出れば、ホイホイと指示に従ってくれたよ。あんな杜撰な対応じゃあそりゃあ留学生も集まらないなと確信したけどね」
「それで…買収し、私を復帰させるための強硬手段をとった、と?」
「そのとーり。ちなみに、断ったときは射殺してもよいという許可が第5地区本部より直々に出ているのでで、結論はよく考えて出すように、な」
アイザックは高らかに笑い出した。その笑い声は深夜の食堂にこだまする。さっきまでの態度が嘘のように、掌を返しやがった。
こいつ、最初から胡散臭いと思っていたが、まさかここまでだったとは…。ふつふつと怒りがこみ上げてきた。またこの組織は、以前のように私を利用する気なのか。
…どのみち、この場で断れば即射殺だ。それよりかは、この組織の内情を探り、裏切る機会を見つけ出す。昔のような無力さを見せると、すぐ付け込まれてまた例の"アレ"に使われてしまう。
それに、Rebellionの本懐"ブランク"の究明も興味はある。まだ誰も解き明かしたことのない、この世界の真理。おそらくこの組織は今、答えに最も近い位置にいる。このチャンスを利用して、全ての秘密を暴いてやる。"私たち"の存在意義も、何もかも…。
しばらくの逡巡の後、私は結論を出した。
「いいだろう……Rebellionに再加入してやる」
「Haha…随分上から目線なのが気に食わないが、そう言ってもらえるのはありがたい。君の噂は聞いてるよ…現役のときはたった7歳だったのに、優秀な局員だったんだろう?我々のためにまた働いてくれるなんて、百人力だね。あえて日本語で言うなら、"オニニカナボウ"だっけ?」
アイザックの言葉には、言っていることとは裏腹に感謝の気持ちが全く感じられない。私はこの言葉に無性に腹が立った。座っている彼の胸倉を掴み、テーブルに押し付け、膝で胸を固定する。体格差のせいか、ハタから見ると滑稽な図である。
「調子に乗るな。誰がお前らクズの集まりの言いなりになると言った?こっちもお前らを利用するだけだ。だから勘違いするな。別にお前らに2度も使われてやるつもりはない。私は道具じゃないんだ。何なら、今ここでお前を殺して晒し者にしてもいい。どうせ管轄外で支部長が殺されても自己責任で済まされるんだろ?」
ここまで激しく言いよっても、まだアイザックは笑っていた。
「本当に笑わせてくれるよ、君は。"勘違いしないでよね。別にあんたのために働いてやるんじゃないんだからねっ!"とか、いわゆる"ツンデレ"ってやつだろう?…フフ、COOL JAPANのジョークも程々にしてくれよ。まあ、我々としては、君が"デレ"るのを待っているんだがね。そして、僕がしているこのサングラス。これはうちが開発した便利な代物でね。君がここで僕を殺した場合、このサングラスを通して僕の生体反応が消えたことが本部にばれて、すぐさま射殺命令さ。言っただろう?君を引き込むことは、Rebellion全体の総意だって」
先ほどから気配は感じていたが、やはりこの男は食堂の外に控えの部隊を連れてきている…。下手なことをすればすぐに消される。腸が煮えくり返るが、ここはおとなしく引き下がるしかない。
私は舌打ちをしつつ、ぶっきらぼうに男を解放した。
「ふう、ちょっとはお手柔らかに頼むよ…。それに、タダ働きではないんだ。キチンと報酬も出るから、さ」
「で、いつまで協力すればいいんですか?」
私はかなり投げやりな感じで尋ねる。
「我々の今回の目標は、新たなGiftedの鹵獲及び介入してくる政府の特殊部隊の殲滅だ。犠牲になった諜報員の遺体が政府に回収されたため、そいつらの身元とRebellionの支部の位置がバレている可能性が高い。Giftedと僕たちに対して政府の超常現象対策課の野郎どもが動き出し、正直危険な状態だ。とりあえず君にはRebellionの下にいてもらう」
「また、厄介なことに巻き込まれてるみたいですね」
やれやれ。超常現象対策課ということは…あいつもいるのか。本当に面倒なことに巻き込まれたものだ。
…その後、書類やパスコード、機密事項など細々とした取り決めを確認したあと、彼と別れたのは夜中の2時過ぎのことだった。
まだあの組織の連中の態度には怒りを隠せないが、今は従うしかあるまい。
しかし、さらに面倒なことに。
私を監視する目的もあるのだろうが、任務中は2人1組での行動を余儀無くされた。その相手というのが…Rebellionの抱える最強クラスのGiftedだという。
実はRebellionには対Gifted用のGiftedが2名存在する。政府の定めたGiftedの危険度でいう最高レベルの"Ω"に指定されていた彼らを匿ったのがアメリカのRebellionだったのだが、私が行動を共にする方は今はロシアの方に派遣されていて、帰ってくるのはまだ先らしい。どうやら上は私を扱いきれるのは彼だけだと判断したようだが、それは買い被りすぎというものである。四六時中そんな危険な奴と一緒にいては、こっちの身が持たない。
「ここの夜みたいに、私の未来もお先真っ暗だ…」
そして、私の手には、ある一冊の本が握られている。
アイザックはこう言った。
「その本は我々からのささやかなプレゼントだ。勝手に派遣先を変えたことのお詫びも含めてね。きっと、君のホームステイ先で役に立つはずだよ」
表紙にはこう書かれていた。
"Sign Language"
やっと、バックグラウンドについて大体説明し終わりました…!!
え?まだ説明されてない単語がある?焦らずに待っていてください。わざとまだ説明していません!
さて、次回はようやくヒロインの登場!
"Connection"、乞うご期待!!