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変な学校  作者: akaoni0026
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其の九の一

 学校帰り。みんなは友達と歩きながら帰っているところ、その群れとは離れ、一人だけフラフラと、生気のない目で歩いている生徒がいた。何故か頭には包帯、左腕は布で首から吊り下げられている。

 律佳の被害者である。

 今日学校で起こったことは、あまり誰にも知られてないが、毎日似たような事件で、律佳は傷害事件を起こしているのだ。

 今日の律佳の事件理由、ズバリ、カード泥棒。

 律佳が友達とババ抜きして遊んでいる時、この少年は通りかかった。そう、その瞬間、その場所にいたのが、彼の運の尽きだった。

「最後のぉ!一枚だーー!」

 律佳が叫ぶと、相手の最後の一枚――ババ抜きでのあり得ない光景、つまり、本当の意味で最後の一枚を抜くと、最後まであがるハズのない、ババになるはずであろう律佳が、あがってしまった。律佳はカードを捨てたあと、得意げな顔で二、三秒いたが、突然頭を捻った。何か違う。何かが。いつもなら、私が最後持っている何かが足りない。

「・・・あれ?コレって、こーゆー遊びだっけ?」

 律佳が友達に聞くと、何か、違うんじゃない?とか、こういうこともあるんだよ、とか、何だか放っておくと、ババ抜きと言う遊びのルール自体がおかしくなりそうな展開になりかけたそのとき、律佳は少年をみつけた。その律佳が見た少年は、床に落ちていたジョーカーを拾い上げたあと、だった。

 律佳は素早く察した。誤った真実を。…その真実とは…

 少年は察して、ジョーカーを返そうと思っていたのだが、次の瞬間、律佳が襲いかかってきた。

「お前かーーっ!!ジョーカー盗ったヤツゥ!!」

 なにやらいつの間にか、律佳は、ジョーカーを盗られたと察知したらしく、犯人はこの少年だと勝手に確信していた。

 もう律佳を止められない。

 素早く蹴りが炸裂する。少年は当然避けること叶わず、腹にどかんと重い回し蹴りを直撃。どかどかどかと、机を三つなぎ倒し、少年はそこでストップし、だらんとなった。お構いなしに律佳が来て、健気にも、少年が持っていたジョーカーを乱暴に奪い取り、腕組みした。

「今度から私の勝利にジャマしないこと!!分かった?」

 言ってから、律佳はフンと鼻で言うと、何事もなかったように元気に戻っていき、友達と談笑し始めた。

 ハッキリ言うとあまりに理不尽であった。いや、言うまでもなく理不尽。

 大体、ジョーカーを誰かが落としていなかったら、律佳は確実に負けていたのだ。感謝こそすれ、蹴ることはなかった。ま、彼女には、そんな解釈法がないのは確かだ。仕方ないとは、さすがに言えないけれど。

 そんな不幸な少年に、二度目の不幸が訪れる。

 ガシャリガシャリと、音がしたのが始まりだった。

「 ? 」

 無機質な鉄の音がしたので、少年は不振に思って振り返った。しかしそこには、誰もいない。見渡す限り、隠れる場所もない。音からして、かなり近くだと思ったのだが。

 少年ははてなを浮かべたまま前を向く。と、眼前にでっかいやつがいた。身長180程度あるだろうか。とりあえずデカイ。何故かこちらを睨むように見ている。結構な美男だったが、とりあえず怖い。無表情。顔近過ぎ。って言うか、何で目の前にこんなのが。

 幻だと思い、まぶたを閉じて、もう一度開いてみた。

 さっきまでいたはずの大男が、眼前から消えていた。音も、風も、気配もなく。これは間違いない、幻だ。きっと律佳に蹴られて、おかしくなったんだ。

 で、やっぱ幻と。

 と思ったその瞬間に、横からの強い衝撃で、少年は壁に押さえつけられた。いや、違う。誰かに押さえつけられているのだ。頭には、何だか冷たいモノがあたっている。

「律佳を知っているか」

 って!これは銃だ!うわ、なんでなんでなんなんだよ・・・!!少年はパニックになりながらも、悲鳴が出せなかった。助けを求めるための悲鳴でさえ、恐怖で声が出ない。さらにその銃がグイと強く食い込んでくる。

「律佳を知っているか」

 今気がついた。この男、何か聞いてきている。何を・・・。

 ・・・りり、律佳だって!?

 えらく声に感情がない。まるで機械だ。

「しし、知ってるよ!知ってる!」

「どこだ」

「ば、場所は・・・!!」

 全て言われた通りに答えると、その男は、パッと一瞬で消えて、少年も、一気に力から開放され、壁にもたれかかり、ズルズルとくず折れた。

 良かった・・・助かった・・・。ああ、もう今日は何なんだよ・・・!

 律佳に蹴られたときのことやら、さっきの頭の冷たい感覚やらをざーっと思い出して、彼は興奮状態、あるいは混乱から正常に戻った。

 ・・・けど、律佳のこと全部話した気がする。・・・だいじょうぶかな・・・いや!だいじょぶなハズない!あいつ銃持ってた!さすがに律佳でも銃は・・・!

 と、ここで、何だかとてつもなく冷静になってきた。

 そもそも、なに話したか全然おぼえてないな・・・っつか、なに聞かれたっけ・・・?

 頭が恐ろしく冷えてきて、頭脳がフル回転し始めた。

 ああ、そういえば俺、律佳のこと聞かれたんだよな・・・?

 とすると聞かれた内容は・・・→個人情報だ。

 個人情報を聞いたヤツは一体何者か・・・→“?”

 “?”にあてはまる単語とは?いや、個人情報と来れば答えは一つしかない。

 知らない人には何にも言っちゃダメって言うよな・・・

 一筋の道理が見え始める。そう、あれは銃に良く似た改造銃だったんだ!ゴツゴツして、冷たくて、本物っぽかったけど。こんなご時勢だ!個人情報を聞くための、新手の――

 あー、そうかー営業マン!ったくなんてことを・・・

 勝手に納得して、少年は立つと、わざわざこんなボロボロな俺を、と思ったが、何だか妙に、それも理に叶っているので、深く考えないことにした。



 〜続く〜

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