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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十三

 それからいくつかの日を越えた後に、大惨事が起こる。まさか、律佳があんなことをするなんて思わなかった…。俺はその日のことを、“律佳の壊れた日”と、この日記に書き込んだ。…やっぱり、ライドって、“殺戮兵器”なのだろうか…?その事件は俺に、思わずもそう思わせた。

 その話しの前に、起こった出来事を話していこう。とても懐かしい…たわいもない、日常の話しを。


 その日は特にとても気持ちの良い秋の季節だった。

「あれ?あれって雄谷じゃないか?」

「ホントだー。なにやってるんだろ?」

 僕は律佳と共に守盥(かみたらい)公園へやってきていた。そこの砂場に一人、とても目立った白髪の少年、雄谷がいたのだ。無表情で突っ立ているその姿は、四年生と言う形容と、砂場と言うキーワードは似つかない。

「ぐすっ…ぐすっ…」

「?」

 どこからか泣き声が聞こえてきた。視線を泣き声の主に移すと、そこはブランコの板の上。よくよく見ると、雄谷はその少年をじっと見据えているようだ。

 そのうち雄谷は、ずけずけとその少年に歩み寄り(砂場にやっと完成した大きなお城を思わずも破壊しながら)、新たな泣き声にも目もくれず、彼はその少年の前に立った。

「ぐすっ…う…」

「いつまで泣いてるんです」

 あまりに無感動な声は、少年の鳴き声と表情を凍り付かせた。それはそうだろう、突然無感動に、いつまで泣いてるんだ、などと言われては、少年でなくとも凍りつくだろう。

「……だって、ゆいちゃんに嫌われちゃったんだもん・・・」

「新しい靴下を汚してしまったから・・・でしょう?」

 お前いつから見てたんだよ!と突っ込みたいが、ここはあえて見守ろう。どうやらその“ゆいちゃん”とやらの新しい靴下に、この少年は泥を被せてしまったようだ。

「うん…」

「そんな少女(ヒト)、たかが器が知れています。悲しみに暮れる事などありません」

 そんなの小学四年相手に通じるかっつーの!!と頭をポカリやりたいところだが、ここは敢えて聞き逃そう・・・。案の定、言われた少年は首を捻っていた。

「あなたは彼女が好きだった。そうでしょう」

「えっ…」

 図星のようで、少年の肌が一気に赤くなった。

「しかし、僕はこう言ってるんです。あの程度で“キライ”等と人を(さげす)むように言って泣き喚く少女など、相手にしない方がいい」

 だから!何言ってるか全ッ然わかんねぇし!さらに小4の女の子にとってはだなぁーーーっ!!?と殴ってやりたいが、ここは、何も言うまい。唇をぎゅうと噛み締めて、我慢だ。

「……」

「さ。もういいでしょう。無駄なことで悩んでないで、お家へ帰りなさい」

 その少年は下を向いて、なにやら唇だけが動いていた。雄谷にはその行動が不可解らしく…しかし表情は一向にして変わらない。

「 ? なにをしているんですか」

 そう言った途端、涙に濡れた少年の怒りの顔が雄谷を見上げた。

「お前になにがわかるってんだ!!」

「 ? 」

 次の瞬間、雄谷はその少年に投げ倒された。両手で肩を掴まれ、、横に投げられたという具合である。雄谷が倒れているその間に。少年は服の袖で頬を拭いながら走っていった。

 何を言われたか、何が起こったかすらよく分からないらしい雄谷は、ゆっくり立ち上がって、頬に出来た傷から出た血を拭こうともせず、ぼうっとその少年の背を眺めていた。

「なにやってんだあいつは…」

「ホントにね」

 僕と律佳は、その様子をどよんとした空気と顔で眺め終わった後、“山へどんぐりと松ぼっくり探しの散策”を再開することにした。

 これであいつにも人の気持ちが分かったかな?

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