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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の十七

「あなたが…何故!?何故出てこれるの!?」

「なぜーって言われてもなぁ・・・出来ちゃうもんは、出来ちゃうし」

 にこっとまた笑って、律佳はコピー律佳をじっと見つめた。

「キミは私を殺したいの?」

 コピー律佳は、驚きの顔をを怒りの表情に戻した。

「無論。私はその為に存在する…。あなたを殺すか…私が殺されるか…それでしかない…」

「ふーん…」

 聞いてみてはみたが、実は話しの半分以上、律佳には理解出来なかった。だが、言う通りなんだろうと思い、

「分かった。じゃあ…あなたを倒すよ」

 やはり笑ってそう答え、左手を失った状態で構えを取った。

「…あなたが、私に勝てるハズない!」

 ビュン!と一瞬で顔が眼前まで飛んできた。そのとき、突然耳鳴りが表律佳を襲った。それは声にとても近い耳鳴りだった。

 右だ!!

「え!?」

 瞬間的に右から来る捻りこみの拳を避けた。

 え!?え!?なに!?誰!!?

 俺だぁ!!バーロー!!ビクビクすんじゃねえ!

 どうやら裏律佳が、胸の中から、耳に訴えかけているらしい。なるほど、ごわごわとしたような声に聞こえるようだ。

 …っと!?次下!!足だ!

 下!?

 コピー律佳から放たれる素早い蹴りに合わせ、律佳は顎を引き、フワリとそのまま宙返りした。

「!?」

 うめぇじゃねぇか!!アイツ動揺してやがんぜ!!俺だったら今の、よけらんねーし。

 え?

 オメーは体がやわらけーんだよ。俺カテェの。

 ふーん…。

 っと!!?次左だぜ!!しゃがみこんで、相手の右側に回りこめ!!

 え!?あ、うん・・・。

 言われた通りしゃがんで、左からのパンチを避ける。さらに相手の右側に飛び込むようにして前転。

 今だ!!回し蹴りを後頭部にたたっこめ!!

 よ、よーし!!

 やはり言われた通り、律佳は素早く体勢を安定させ、勢いよくジャンプ。その間にコピー律佳は振り返った。

 ふ、振り返っちゃったよ!?

 わーってる!そのままぶち込め!

 えー!!

 言われた通り律佳は蹴りをかましたが、顔面ではなく、当初通り後頭部を蹴った。コピー律佳はそのまま前にのめり倒れる。

 な…!?なにやってんだよ!顔面ぶちかましゃ殺せたのに!!

 私は殺すなんて言ってないよ・・・。

 あまりに胸の中で裏律佳が騒ぎ立てるので、律佳はそれに気負され、威勢を無くして言った。

 はぁ!!?

 わ、私はぁ…倒すって言ったんだよ…?

 ウッセー!!

 ううぅ…。

 言い合ってるうちに、コピー律佳がムクリと体を起こした。

「お前のようなあまったれに…私が殺されるわけない…ゼッタイニユルサナイ…コロスンダ…」

「どうして…そこまで…」

 殺気を帯びた目を見据え、律佳はコピー律佳の心情を探っていた。


「時限爆弾なんて装備されてない!?」

 耕輔一行は、鏡や雄谷、智香によって、施設内の警備を次々と破り、律佳が装着しているプロテクターを開発した、技術班とやらに詰め掛けていた。今質問をぶつけている相手は、スピーカーから声を発したあの女性だった。

「ええ、私たちは、時限爆弾なんて装備していません・・・」

 耕輔はさらに語気を強めた。

「じゃあ何で爆発したんだ!!」

「そ、それは…」

 隣の雄谷も進み出て言う。

「僕は解析ライドです。僕の眼は、騙せませんよ」

「で、でも…本当に…」

 今にも泣きそうになりながら、その女性は曖昧な返答を繰り返した。いや、本当に装備していない、というなら、たしかにこれらの回答は頷けるが・・・事実爆発して、それが装備されていたと言うことを雄谷が証明した。

「お待ちなさい」

 いましがた耕輔たちが突破してきた扉から、あの初老、五郎が入ってきた。

「五郎さん!!」

 女性はそれにすがろうとするが、耕輔がそこに立ちふさがった。

「真実を…話して下さい…五郎さん」

「その方が言っておられることは事実です。技術班は、あの鎧に爆弾を装備などしていません」

「なら、何故爆発したんです!!」

 初老は眼を瞑り、深く物事を考えるような表情になりながら話した。

「…申し訳ない…あれは・・・コピー律佳がやったことなのです」

「え!!?」

 その場が凍りついた。

「今データを解算してみたのですが・・・あのプロテクターの初期テスト記録に、コピー律佳が関与しているデータが検出されたのです」

「そんな…」

 技術班の女性がそう呻いた。

「ともかく、あなたがたの意見は受諾しましょう」

 智香がその意味を確認した。

「それって・・・つまり」

「ええ、この試験は“中断”します」


 ヒュン!ブン!ブォン!ヒュヒュン!!

「はぁはぁはぁ…」

 おい!避けんじゃねえ!!また死ぬぞ!!

 青い試験場の中、律佳の靴音と、コピー律佳の狂気じみた攻撃音だけが響いていた。

 あれからずっと、彼女はまたコピー律佳の攻撃を“避け続けていたのだ”。

 出来ないよ!!私・・・殺すなんて…!!

 律佳!!そんなこと言ってる場合じゃあねえんだ!!俺たちこのままじゃ死ぬんだ!!壊れちまうんだ!!

 それでも私…だめだよ…。

 こうすけともう会えなくていいのかよ!?

 っ…こうすけ…。

 そうだ!こうすけ!!あいつとまた遊びてんだろ?会いてんだろ?

 ……。

 だったら!ここでくたばっちまったらいけねー!!

 それでも…。

 …は?

 それでも私は・・・出来ないよ!!

 …!?…お、おめー…オメー…!!

 信じられないものを見たような声で、裏律佳は何度もそれを口走った。そして、

 クソッ…狂ってるぜ…。

 ぶつん。

 裏律佳からの交信は途絶えた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「おまえが・・・死ぬんだ・・・私のかわりにあまえた・・・お前が!!」

 コピー律佳の凄まじい連撃は、着実に律佳の体力を奪っていった。

「はぁ…はぁ…あうっ!?」

 律佳は足をもつれさせ、バランスを失い、そこにコピー律佳の攻撃が容赦なく入った。

 ……ごめんね、こうすけ…死んじゃ…うね…。

 どさっ。

 ……。

「あ、あれ?」

 律佳は…生きていた。

「無傷…?」

 もとよりある傷が消えているわけではなかったが、コピー律佳からの最後の一撃を食らったあとは・・・

全く見当たらない。

 あたりを見回す。前に、目の前に倒れているコピー律佳を見つけた。彼女は呼びかけてみた。

「……キミ…死んだの…?」

 コピー律佳は、まるで全てが抜けきった抜け殻のようだったのだ。

「…ごめ…ん…い…」

「え?」

 彼女は、顔だけをあげて、そう言った。

「わた…し…ホン…は…あ…たのようになりたか…た…の。…から…」

 その眼には、僅かながら光っているものが見えた。

「…ごめ…ん…ね」

 どさり。

 コピー律佳の顔が、重力に落ち…動かなくなった。

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