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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の十一

「でも・・・そうだとしたら・・・」

 想像し得ない調教をされたに違いない。一瞬イメージしてしまい、耕輔は頭を二度三度大きく振った。鏡がそれに気付いたのか、こちらに視線を向けずにに話しかけてきた。

「お前が気にすることでもなかろう。ヤツは“偽者なのだから”」

 確かに関係ないし、これから関わることもないだろう、しかし、

「そうゆう問題じゃないんだ・・・」

 そんな悲しい過去を抱えてここに登場した“あの律佳”を、誰が望んで討つというのか。

「 ? 何を言いたいのかわからん」

「推測の域は出ないけど、もし本当に“あの律佳”厳しい調教を受けていたとして・・・彼女をうちの律佳が討てると思うか?」

「・・・。さぁな」

 「さぁ」とは随分他人行儀であるが、鏡にとっては何でもないことなのだろう。その無表情な顔のまま彼は考え言った。

「・・・お前が言えば何とかなるんじゃないのか。闘えと」

「・・・そりゃまあ・・・そうだろうけど・・・」

 確かにそうすれば彼女は闘ってくれるだろうが、まさかそんな事、律佳に命令出来ない。彼女も一応拒否するだろうし。

「ともかくここで律佳を失うわけにはいかんだろう。さっきプロポーズを終えたばかりじゃないか」

 ボンッと耕輔の顔から煙が吹き上がった。ついでに赤くもなる。

 タコみたい。

「ち、違う!!!」

「なんだ、違うのか。残念だったな、耕輔」

 何が残念なんだか・・・。

 彼は耕輔の肩を握ってくれ、哀れみの眼をくれた。

 いらん、そんな眼。

 流れ出てきた熱い汗を拭いて、もう一度視線を“うちの律佳”に合わせた。

 なんかへらへらしながら手をひらひらさせている。お前はどこぞの“お隣お母さん”か。

「そんな怖い顔してても〜、いいことないよ?スマイルスマイル〜」

 しかし全く彼女は動じず、眉一つ動かさない。ずっと律佳を見つめている。透き通った、悲しい眼で。

「・・・あなたとは闘いたくなかった」

 ポツリと漏らしたのを、“誰もが聞き逃してしまった”。

「え・・・?な、なに!?何て言ったの!?」

 べらべらと、「ほら笑ってよー」と大声を出していた律佳だけが耳にひっかけたらしい。

「いえ。何でもありません。・・・そろそろなのでしょう?五郎様」

 間を置き、突然天井を見上げ、誰かの名前を呼んだ。

 二秒、三秒後に、あの初老の声がスピーカーから響いてきた。

「そうでございますね。そろそろ戦闘準備を始めましょうか」

 あの初老、ただもんじゃないと思ってたけど・・・。かなりの重役らしいな。

「では技術班、お願いします」

「了解しました。ロックします」

 今度は女性の声が答えると、突然赤い光が試験場全体の床から這い出した、と思うと、何かを探すように、光の線はあちこち散らばり、やがて一人の人物を真っ赤に照らした。

 ・・・射出って、なに撃つんだろ。まさか銃弾!?ってなわけないよな・・・試験なんだし。

「え!え!?なになに!?なにこれ!?」

 ジタバタと体を振っているうちの律佳に、光線が集中し、どんなに動いてもその線は一点のズレなく同じ場所を照らし続けていた。それは人工的な神秘的な映像にも見える。

「あまり動かんで下さい」

 ちょっと苦笑しているかと言う声で、五郎と呼ばれた初老はスピーカー越しに言ってきた。ともあればこちらからの声は聞こえないだろうな。 技術班の“声”も笑いながら答える。

「ロックは出来てますので、心配御無用ですよ」

「ああ、そうですか。ではよろしくお願いします」

「はい。では行きますよ、律佳さん」

「え!あ、うん!きやがれ!!」

 何か全くの見当違い+何も分かってないうちの律佳が答える。

「プロテクト!!!」

 技術班の声が叫ぶと、一部の天井がスライドして開き、高速で律佳に五発打ち出した。

「わぁっ!!」

 ガシャガシャガシャと鉄の当たりっぱなしの音がして、律佳に何かが張り付いて行く。それから音がしているようだ。

「うわわわ!!?・・・ってあれ?痛くない・・・なにコレ・・・」

 変な踊りを踊り終えた頃には、律佳はキョトンとして自分の体を見つめていた。

「防護スーツでございます」

 五郎が答えた。

「防護・・・スーツ・・・」

 律佳の姿を見ると、確かにそれは防護スーツで、肩や胸、腹、下半身が赤い鉄で囲われ、関節部分は黒いゴムのようなもので守られていた。ただ本当の材質は一見では見当がつかない。

 しかしどうしてこんなものを着ける必要があるんだ。これじゃ卑怯じゃないか。

「ふうむ」

 と鏡も考えたような声を出した。やはり鏡もそう思っている、と思ったのだが、違うようだ。

「かなりヤツは出来るらしい」

 彼はあっちの律佳に視線を留めている。

「この防護スーツがないと、律佳様のお体は粉々に吹っ飛んでしまいますからね」

「なにせ五倍の力量です」

 五郎と技術班が言う。

「ご、五倍・・・!?」

 あ、あの馬鹿力が、五倍だって・・・っ!?

 耕輔の頭の中で、この試験場を軽く破壊している“律佳”が見えた。

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