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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の十

「さて、お出ましのようだな?」

 落ち着いた声で、鏡は耕輔に語りかけた。

「一体どんな試験なんだろう・・・」

 上の空で答え、律佳の対角線上をまっすぐに見つめると、右側にも同じような自動扉があることに気付く。あそこから入ってくるのか・・・。

 ほぼ同時、自動扉がガシャリと音を立て開き、暗闇から人影が現れた。

「・・・馬鹿な」

 小さな驚きを鏡が示し、それ以上に耕輔は驚きで声が出なかった。

「そんな・・・嘘だろ・・・!?」

 どうしても自分の目にしているものが信じられない。眼をこすってもそこにいるのは確かに・・・・

 自動扉から出てきた者、それは、

「律佳・・・!!?」

 顔も体も服も髪型も何から何まで全くの同じ、律佳があらわれたのだ。ただ唯一、その律佳には表情が抜けている。

「え!?え・・・!?」

 試験場にいる律佳本人も、もう一人の自分に驚いている。

「わ、私・・・!?」

 表情のない律佳は答えた。

「あなたです。私は、あなた。でもあなたは私ではない」

「 ? 」

 律佳は首を捻る。瞬間もう一人の律佳は初めて表情を浮かべたが、それはとても苦痛な表情で、まるで体中に電気が流れたような。

「ッ!っ!!・・・。・・・。すいません。どうでもいいことでした」

 とても律佳とは思えない口調でその律佳が言うと、もう一方の律佳は両のてのひらをふるふると振って、

「うぅうん!全然いいよ!!それよりキミは――?」

「私のことなどどうでもいい。ただのコピー。あなたの模造品」

「モゾウヒンてなに・・・?」

 それをガラス越しに見下ろす形で耕輔と鏡は見守っていた。

「模造品・・・つまり・・・」

 耕輔が口にすると、鏡が答えた。

「データコピー、だな。動物で言うクローンかもしれん」

「そんな・・・じゃあ、彼女の笑顔はどこへいってしまったんだ!?律佳の模造品なら・・・」

 なら、というとり、だからこそ、の方が正しいかもしれない。律佳、つまりもう一人の“彼女”が本当にこの律佳を模造したなら、同じようにへらへらしているはずだ。そ


れが一番の特徴と言ってもいい。

「そんなもの決まってるだろう」

「え?」

 あまりに簡単に言う鏡。

「調教されたんだ」

 言われてもう一人の律佳の表情を見る。あの冷たい、律佳とは思えない表情・・・。

「調教って・・・!!あんなに表情がなくなるまで!?」

「そうとしか考えようがないだろう。・・・耕輔、冷静になればお前にも分かるはず。興奮しているぞ。少し冷めろ」

 確かに彼の言う通りだった。冷静に、かつ普通に考えると、そう考えるしかなくなるのだ。

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