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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の九

 暗いコンクリート造りの一室。そこで律佳は長椅子に座らせられ、試験開始を待っていたのだった。智香もいるが、どうやら彼女は座る気がないらしく、ソワソワしながら律佳の前を右へ左へと歩き回っていた。だが突然思いついたように立ち止まり、律佳の生気のない顔を静かに眺めた。

「ごめんなさい・・・律佳ちゃん・・・」

 言いながら彼女は律佳の小さな両肩に冷たい両手を乗せる。

「本当はこんなことするつもりじゃなかったんです・・・。ただ・・・あまりにも耕輔クンが・・・」

 自身に違うと思い聞かせるかのように智香は頭を振り、

「うぅうん、いいんです、気にしないで。・・・彼はどうやら、“やっと気付いたみたい”ですから・・・土壇場にならないと分からない人みたいですね・・・」

 智香が細く微笑んだ頃、ブザー音が鳴り響いた。同時に機械的な女性の声で、「入場して下さい」と警告じみた声が入ったのだった。



「いよいよだな」

 壁に張り付いて見ている耕輔の隣で、ガラスに背を向けて立っている鏡が言った。

「ああ・・・」

「辛いか?」

 鏡が探るように聞いてきた。

「いや・・・」

 今はもう、智香と鈴が言っていた、“何が分かっていないのか”、がやっと分かったんだ・・・だから辛いって気持ちはない・・・。ハズだけど。つまり“分かってなかった”ことは・・・。

「あ・・・いや。やっぱり、辛いよ」

 それを聞いて雄谷が少し顔を上げた。

 分かってなかったこと。それは、正直になれ、と言う意味だったんだ。

 耕輔は、律佳を見下していたのかもしれない。だから背伸びをして、正直に、素直になれなかった。

 そのせいで、律佳は酷く悩んで・・・そう、きっと悩んで・・・。

「僕は決めたんだ。正直な気持ちを持とうって。特に律佳には」

 そうか、とだけ返し、そのままの状態で鏡も試験場を横顔で見つめた。

 丁度そのとき、左の自動扉から律佳が生気のないまま入ってきた。状態は変わってない・・・マズイ。あれじゃ壊される・・・。

「律佳!!」

 今はあの初老もいないんだ。励ましくらい出来る。例えそれが許されてなくても、律佳が・・・潰されるのは見たくない。

 彼女はゆっくりこちらを見上げた。虚ろな眼・・・。

「律佳!!聞いてくれ!!」

 すうと息を吸い込む。プンスカと怒っている鈴も、このときばかりはソファの上から耕輔の方を見守った。

「俺は・・・!勝手かもしれないけど・・・」

 勝手かも・・・いや・・・勝手だろ・・・。それでもいい。

「お前と・・・」

 一緒に・・・。

「お前と一緒にいたいんだ!!これからも一緒に学校行ったり、暴れたりしたいんだっ!!!」

 ・・・・・・。

 急に律佳の口元が緩んだ。にこっと笑って。

「・・・待ってたよ!!こうすけ!!」

 そこで雄谷が独り言のように呟いた。

「彼女は何かから解放された・・・泥水が一気に流されていった、そんな様子ですね」

 耕輔が答える。

「・・・そう・・・律佳は・・・苦しんでいたんだ・・・“自分だけの闘い”にして・・・。でも違う。それは俺が律佳のこと、何にも思ってやれなかったから・・・そうなっちまったんだ」

 ポカンとした様子で雄谷はどこを見ているか分からない顔になる。

「僕よりあなたのほうが解析は上らしい」

「それは違う」

 どうゆうことだろう、と雄谷の顔は求めている。

「 ? 」

「アイツとは長いんだよ」

 長い、とはよく分からなかったが、

「・・・そうですか」

 雄谷は聞いてから鈴を見つめる。

「 ? ・・・なに?雄谷くん」

「いえ。僕達も早く長くなりたいなって」

「 ? 」

 そこで先ほどの女性の声でまた音声が入った。

「アンノーン、出現させます」

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