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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の五

「思い上がるなよ」

「え」

 心を読まれたかと思うほど適切な言葉に、耕輔は思わず背筋を伸ばした。

「お前の責任ではないが、お前が解決すべき問題だ」

 とそれだけ言い終えると、鏡は何事もなかったように食事に戻った。

 それはそうだろうが・・・一体、どうしろって言うんだ。


 温度は適温。これでいい。

「はぁあ・・・」

 が、それには関係なく、律佳は深く湯船につかり、何度か目のため息をついた。

 どうして素直になれないんだろ・・・。

 彼女は思い悩んでいた。そのことに関して。今まではそんなこと、考えもしなかったから。自分がやりたいように、自分が思っているように、自由にやってきた。それが今どうだろう。何かに縛り付けられ、必死にもがいているようではないか。何がそうさせている?何が私を縛り付けてる?分からない・・・。

 けれど、そこにこうすけが見えるのは確かだった。彼のことを考えると、とてもふわふわして暖かい気分になるが、逆に終わりのない穴に落ちていくような錯覚も覚える。

 だからどうだということはない、ただそれだけ、それだけなのに。どうして八つ当たり気味になるんだろう。自棄(ヤケ)になるんだろう。それも分からない・・・。

「はあ・・・」

 またため息をつく。それよりそうだ、試験のこと考えておかなきゃ。自分にはまだやるべきことがある。忘れよう。今の気持ちは。合格するまでは・・・。

 その日律佳と耕輔は、一度も顔を合わせず、就寝時刻となった。

 寝床に入ると、律佳は鈴におやすみと言って、電気を消した。

 ・・・あれ?

 鈴は眠れないことと同時に、律佳のいびきではない、何かの音に気付いた。これは・・・。

 ぐすっ・・・ぐすっ・・・何で・・・。

 泣き声だった。


 翌日の朝。耕輔はいつもと変わらぬ調子で歯を磨いていた。彼はいつも人より早く起き、自分の朝食を平らげ、こうやって準備万端にしておく癖があるのだ。言わずも律佳との五ヶ月が影響している。

 そこへ、トントントンと軽い音でフローリングの廊下を歩いてくる足音が聞こえた。

 それは丁度洗面所の前に止まり、こちらに向いた。ので。ああ、これは鈴だな、と思い歯磨きを中断し、

「おはよう、鈴」

 挨拶した。が挨拶が返ってこない。代わりに怒りのこもった瞳がこちらを睨んでいる。

「・・・どうしたんだ?鈴。昨日も律佳のせいで眠れなかったのか?」

「そうだよ」

 返してきた声も、その大きな瞳と同じくらいの怒気が宿っているように感じた。理由はきっとまた眠れなかったせいだろう。

 ははーん、やっぱり。全く律佳は・・・大人気ないな。

「はー・・・律佳もしょうがないやつだな・・・」

 彼は頭を掻いて、明後日の方を向いた。

「バカ!!!何も分かってないじゃない!!!」

 突然予想もしなかった怒声が洗面所に響いた。

「は、はぁ?わ、分かってないって・・・」

 急な出来事に動揺しまくりの耕輔だが、構わず鈴は、フンとでも言いたそうに視線を外すと、ダイニングの方へ行ってしまった。

「な、なんだぁ・・・?」

 それの意味は分からなかった。別に変なことは言っていない。それに何が「分かってない」のだろうか。

 その時呼び鈴が鳴った。まだ早いが、この時間なら智香が来たと推測していい。

 耕輔は玄関に向かいながら、試験出場させる意を伝える言葉を練る。

 ガチャリと玄関の扉を開くと、やはりそこには、青い髪を揺らした智香が立っていた。

「おはようございます。耕輔クン。決まりましたか?」

 応答待たず、聞いてくる。智香にとってもこれはかなり重要なことだからだろう。律佳は智香にとって大事な大事な人だから。

「ああ、勿論」

 勿論、試験は出場させる。

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