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変な学校  作者: akaoni0026
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其の十一の三

「なに笑ってんのさ?」

 不意に隣から声をかけられ、耕輔は顔をかたくした。話しかけてきたのは、言わずも律佳。

「べ、別に」

「ふーん」

 耕輔の顔から黒板に視線をかえ、彼女は数字が書かれた黒板の内容をノートに書き写す作業を再開する。

「・・・・・・」

 黙ってその様子を眺める耕輔。

 ・・・意外だ。

 というのも、律佳は元来から授業を聞きもせずいつも寝ているか、ノートにラクガキしているからだ。

 しかし、それをどうしてだ、とか変だ、とか言うのは、今日は何だか酷だと思った。

 律佳も頑張ってるんだよな・・・。

 時は進み、昼の時間。律佳にしては珍しく、彼女は耕輔と机を合わせた。

「今日はまたなんで一緒に食べるんだ?」

「うーん・・・まぁ、色々あるよ」

 彼女は笑顔でそう答えた。

「その色々が聞きたいんだが・・・」

「そうだねー・・・なんにしよう」

「なんにしようって、お前な・・・」

「私はさ・・・こうすけが大事なんだよ」

 そこでにっこり笑って彼女が言った言葉に、彼は突っ込めなかった。崩すことも追求することも、なんとなしに避けたくなったからだ。

 と言うのは嘘で。

 本当は、何とも言えない感情が喉まで昇り詰めてきたからだった。

 だが、俺も律佳が大事だ、なんてすっぱり言えるわけもなく・・・。

 ・・・これは、近い感情かもしれない。彼女が好きだってことに。けど、それは違う。

 一緒にいたい。それだけだ。

 帰り間際のホームルームも終了し、暗い雲がのしかかる空の下を歩いている途中だった。

「分かってるよね?」

「え・・・?」

 どこかで聞いたフレーズを、隣で歩く律佳が、唇を噛みしめながら、笑ってきた。意地らしい姿である。

「私がいなくなるってことだよ。引退なんだ。聞いてるでしょ?」

「・・・・・・」

 答えていいものか戸惑う内容だった。律佳はその様子を窺い、思いついたように鞄を探ると一枚の紙を取り出した。

 一瞬その紙を見た耕輔の目にもわかるくらい、良質の紙に“辞令”と大きく紙に振ってあった。

「ちゃんとあるんだよ。ほら、辞令も・・・あ」

 耕輔は無言でそれを律佳からひったくり、真剣な目つきで黙読した。そこには確かに、律佳異動の文字。

「ね。だから・・・うーん・・・」

 日付は明日午前10時。

「今日と明日は私の言うこと聞いてよ」

「そうだな・・・」

「え!?ホント!?」

 律佳は顔をほころばせたが、彼が思ったことは、律佳への応答ではなかった。

「・・・律佳は聞いたか?試験の話し」

「・・・え・・・しけん・・・?」

 彼女は立ち止まり、ほころんだ顔を一瞬で青ざめさせた。彼も立ち止まり、その尋常でない表情をすぐに読み取る。

 悪いこと、言っただろうか。

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