其の十一の二
試験・・・聞こえも悪ければ嫌な思い出もぶり返してくる単語だ。まあそれは私情であるが、確かに他の悪寒も感じる。
ライドの試験、か・・・。
智香はその様子を窺いながら、
「お察しの通り、あまり聞こえの良いものではありませんし、まして筆記ではありません。私たちはライドです。それに律佳ちゃんは根からの戦闘型・・・その試験と言ったら・・・」
ここら辺は、昼になっても静かだが、朝は少々の喧騒すらない。静か過ぎる。大気の音が聞こえるほどだ。それ故か、耕輔は落ち着かなかった。
「ライドの試験・・・。つまり、データ収集か?」
「ええ・・・」
冷たい風が智香の髪を揺らした。彼女の顔は曇っているように見える。自分も同じ様な顔をしているのだろうか。
「でも、耕輔クン・・・これは律佳ちゃんとっても、あなたにとっても、いいことかもしれませんが・・・別れより、こちらのほうがツライかもしれませんよ?お気に留めて置いて下さい」
「それはどうゆう意味だ?」
「・・・お話しする勇気がありません・・・」
直後、何もなかったように、“さっ、律佳ちゃんを呼びに行きましょう”、
「もう時間です」
と、彼女はにこやかに自宅へと入って行った。
場所は替わって学校に。
「ツライ・・・ね・・・」
そう言えば、楽しい辛さしか味わってなかったな。
耕輔は最後部の一番左の席で、外の青ざめた雲の塊を見ていた。鼻の下には、シャーペンを上唇で支えている。
経済的には辛かった。だってアイツ・・・横にいるけどさ、食いすぎなんだもんな。ああ、そうそう、そういえば模造品のレモン食おうとしてカテェとか言ってたな。
本人も気付かない微笑を耕輔は浮かべた。