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変な学校  作者: akaoni0026
25/61

其の九の十七

 肉が裂ける音と、液体が滴る音がした。

「イヤーッ!!!」

 智香は膝を曲げてガクと前に折れ、頭を押さえ込みガクガクと震えた。

 彼女の考えは、不幸ながら正当だったのだ。律佳は記憶を再生しているだけに過ぎなかった。つまり今、律佳の第三人格が目覚めてしまったことになり・・・それは、鏡を殺し、他ライドの“雄谷”を殺し、産みの親を殺し、施設を破壊した、律佳だった。

「ぐ・・・」

 律佳に素手で腹を貫かれた鏡。まさか警戒などしていなかった。

 その暴走した律佳は、腕を彼の腹から引き抜き、ニヤリ笑っていた。彼はそのまま重力に任せ、膝からくず折れ、横倒れになる。

「よお・・・久しいじゃねぇか・・・鏡に、智香・・・」

 ギラギラと光る目は、やはりどの律佳にもあてはまらず、凶悪な赤だった。性格もさながら凶悪である。

「お、お前は・・・」

 ことを眺めていた耕輔が呟く。律佳は振り返り、彼を睨みつけた。

「ハッ・・・。アンタが俺のご主人様かい・・・。また貧弱そうな人間だな・・・」

「な、なんだと・・・!!」

 聞いていた智香が頭を振る。

「ダメです耕輔クン!!挑発に乗ってはいけません!!」

「分かってるよ・・・」

 言うものの、耕輔は汗だくだった。考える脳はない。力もないのだ、どうしようもない。

「さぁ、どうしようか・・・この街ふっとばすか・・・?」

 ニヤニヤ笑いながら、血だらけの手をコキコキ言わせる律佳。

 これもまた智香の予想範囲内であったが、抑制する手立てはない。

「い、いけません・・・!!あ、あなたは・・・私が止めます・・・!!」

 智香の五ヶ月前の、最初で最後の大きな過ち。間違い。今それが目の前にいる。

 鏡が横倒れたまま言う。

「どうゆうことだ・・・これは・・・!!」

「すいません・・・鏡さん・・・実は・・・」

 さきほど言い換えてしまったことだが、今度こそ言わねばなるまい。真実を。

 ・・・よし・・・。

「実は・・・律佳ちゃんを壊したのは・・・」

 のは・・・!

「私・・・なんです・・・!」

「なん・・・だと・・・。ならお前は・・・お前が・・・!!」

「そうです・・・私が・・・黒幕です・・・!!」

 言えた。何もかもが手遅れだけれど。やっと真実を話せた。

 ずっと詰まっていた何かが、どどっと音を立てて流れていく気分だ。もう、後悔も未練もない。

「よぉ、お話しはすんだかよ・・・?・・・プッ、クッ・・・ククク・・・ハッハッハッハッハ・・・!!」

 どうしようもない、律佳はそう思っているのだろう。確かにどうしようもない。だが、どうにかする方法くらい、ある。

「ねぇ、耕輔クン・・・」

 いつになく真剣に話しかけるてくる智香。それもそうかもしれない、これから死ぬかもしれないのだから。

「何だ・・・?智香」

「・・・時間がありません、説明はナシです」

「え・・・あ、ああ・・・」

 智香のことだ、何か作戦があるのだろう。

「私の頭を、重いきり殴ってください」

 ・・・・・・。

「な、なに言ってんだ!?」

「いいから!!説明はナシって言いませんでしたか!?」

 眼前には血走った律佳。そして腹に穴を開けられ倒れている鏡。真剣に叫んでくる智香。

 俺は・・・――

 どうやら、選択肢は一つしかないらしい。

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