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変な学校  作者: akaoni0026
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其の九の十二

「律佳!律佳!!」

 重力に身を任せている律佳には、耕輔の声は届かない。

 それくらい本人も分かっていた。それでも、どうしても、諦められない。死ぬなんて・・・あり得ない。あってはならない。

「律佳!!起きろよ!!起きろってば!!」

 揺らすたび、伴って、ぐらりぐらりと首が動く。やはり起きない。本当に死んでしまったのだろうか。温度からしても、冷たくなっていっているのが分かる。

「・・・そんな・・・」

 初めて耕輔は、それを“遺体”だと思った。今さっきまで生を持っていた、必死に生きていた遺体を、自分は抱いている。

「くそっ・・・なんで・・・!!」

 これが智香のせいでないとしても、何故か智香がとても憎らしくなった。

 律佳は死んだんだぞ!!今!!どうしてそのときに!!

 智香、何故キミがいない・・・!

 心の中で言葉が転がる。何度もそれを呼応する。


 ぴ、ぴー。自動再生起動。緊急措置、取ります。

 力なく律佳を抱いたままの耕輔の耳に、機械的な声が響いた。だが、どうでもいい。律佳は――。

 律佳、復帰します。

「あぁ・・・?うーん・・・」

「・・・え?」

 律佳が上半身を起こし、目を擦り始めた。どうでもいいようで全然良くない。耕輔は目を疑うと同時に、じーっと律佳を凝視した。

「 ? こうすけ、なにやってんの?」

「ええぇぇ・・・」

 今しがたまで遺体だと思っていたのに、生きていた律佳を見て、耕輔はうなだれ、喜ぶどころか後悔した。

「 ? 」

 意味が分からないと言った具合で耕輔を眺める律佳は、やはりいつもの律佳だった。

 耕輔も意味が分からなかった。色々問い詰めたい。一番聞きたいのは、何故生きているかだ。

 しかしややこしいことは聞いても分からない律佳だ。なにを聞いても無駄だろう。と悟っている耕輔は、

「あぁ、もういい・・・とりあえずー・・・」

「うん?」

「この壁壊せ」

「はーい」

 にこっと笑って、律佳は立つと、拳で思い切り壁をぶち壊した。さらに呆れた耕輔は、頭を抱えて言う。

「俺をおぶって第二校舎まで行ってくれ・・・」

「うんっ」

 ここは第一校舎の二階、このまま降りたらグシャと潰れ死ぬ。だから律佳に頼むしかなかった。と言うか、本当に脱力させられてしまったので、跳ぶ事はおろか、歩くことも出来ない。体の力は全部抜けてしまったようだ。

 耕輔は律佳の背に乗り、そのまま第二校舎へ向かうよう言った。律佳の上は上下が激しく、ちょっと気持ち悪かったが、仕方がないだろう――。

 チュンッ!!

「わあッ!?」

「うわっ・・・!!」

 何かの軽い音がすると、突然律佳が後ろに跳び下がり、耕輔は第二校舎へ向かう途中の中庭に放り出された。

 耕輔はそのまま背中から地面に直撃した。

 イテテと呟きながら、背中をさすって律佳を見上げる。

「いきなり、どうしたんだよ・・・律佳・・・」

「さあ、私もよくわかんないけど・・・」

「いやいやいや、それ困る・・・」

「あはっ。えっとね、多分、銃だね」

 銃・・・?いきなりなにをいっとるんだコイツは。

 擬似死亡のせいか、頭がおかしくなっているらしい。銃など絶対にあり得ない。智香が犯人だとしても、銃なんて扱えるわけ――。

 チュン!!

 一瞬素早く動いた律佳の近くで、またも軽い音がした。

 ってこれはマジで銃・・・?

「ホラホラ!!銃だよ!」

「銃、だな・・・」

 それよかぼけーっとここに倒れこんでいるわけにはいかない!!弾に当たったら死んでしまう!!

 だが、何気に律佳は楽しそうだった。

「お、おい律佳!!逃げるぞ!!」

「は〜い」

 微笑みながら耕輔の後をついてくる律佳の後ろで、軽い音が幾度も鳴り、そのたび律佳はそれを一瞬前に避ける行動をとり続けたのだった。

 目指すは第一校舎と第二校舎を繋ぐ渡り廊下。確か第二校舎側の渡り廊下の扉は、壊れていて開きっぱなしな上、閉じれないハズなのだ。そこから第二校舎へ侵入する、予定。

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