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変な学校  作者: akaoni0026
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其の九の七

 2組、3組と、順調に駆け抜けるも、体は重くなっていくし、まぶたも重くなってくる。やはり人間にも十分な効果を出せるブレンドをしたらしい。

 だが何故こんなことをするのだろう?智香はいつも、毎日微笑んでいたし、不満もなさそうな様子だった。前に、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ寂しそうに微笑んでいたことがあったが、きっとは関係ないだろう。

 とすると、やはり分からない。どうして、律佳を殺す必要性があるのか。特に智香は律佳を慕っている。まさかストレスなど感じているはずもない。

「どうしたの?こうすけ」

 律佳は不安顔になって黙考しているこうすけが気にかかった。やはり重いのではないだろうか、とか。

「ん、ああ・・・なんでもないよ」

 こちらに声を振るう時だけ、わざとらしく笑って、明るくしようとしている。明らかにこうすけは無理をしているのだ。

「なに?どうしたの?無理しないでいいよ」

 こうすけはこうすけで、いつもの律佳とは程遠い律佳の対応が心配でならなかった。早く元気な律佳が見たかったのだ。

「無理なんかしてない。ただ・・・」

「ただ・・・?」

「いや、別に。ごめん」

 律佳は気になったが、ここはあえて聞き逃した。そういえば智香はどうしたのだろうか。今頃怪物を発見しているのではないだろうか。

「ねぇ、こうすけ。ちぃちゃん、どうしてるかな。あ、実はもう怪物なんか倒しちゃってたり・・・」

「え?・・・ち、智香が、なに?」

「え・・・?いや、だからさ、ちぃちゃんが・・・」

「・・・あ、いや、いい。なぁ、今は智香さん・・・智香のことは言わないでくれよ」

 こうすけにしては意外な対応だった。しかも何だか、とても嫌な顔だ。

「どうして?」

「・・・色々とだよ」

 少し言いよどんで、こうすけが答えたのがとてもひっかかった。色々とは、どうゆうことだろう。

 彼は走り続け、やっとこさ1年3組の裏前までやって来た。あともう少しいけば・・・。

 ・・・珍しいことは、本当に続くものである。

「なっ・・・!?」

 奥の階段から、怪物がぞろりとやってきたのだ。幸か不幸か、それは一匹。しかし。

「ちっ・・・どうする・・・」

 律佳は行動不能。使える武器も物もない。怪物は赤い目をまわりに振りまき、敵を探している様子だった。ということはまだこちらに気付いていない。良かった。すぐに死ぬことはない。

「律佳・・・。逃げるぞ?」

「どうして?」

「どうしてって・・・ほら、あそこだ」

 耕輔は腰をかがめて、律佳が怪物を視認出来る角度にした。

「・・・ちぃちゃん・・・?」

「・・・はぁ!?何言ってんだお前!!冗談言ってんじゃねぇぞ!」

 しかし、眼を細め、怪物を見る律佳の目は、明らかにそれを智香だと認識しており、まして冗談を言っている様子もない。

 ・・・・・・まさか!?

 ここで最悪の事態が耕輔の脳裏に浮かぶ。

 ダミーウィンドか・・・!?

 智香のサポート・アビリティ、“ダミーウィンド”は、どこに、どうゆうふうに、何を見せるのかまで、細かく設定出来る、“視覚的幻覚”であり、誰に見せるかまでことこまかに設定することが出来るのである。

 つまり、智香はこの展開をあらかじめ読み、怪物には人間のダミーウィンド見せつけ、ここまで誘導し、律佳には怪物が智香に見えるよう設定されている・・・ということだ。

「ちぃちゃーん!!」

 謀らずも、律佳が手を振り、笑顔で叫ぶ。

 ギロリと赤い眼がこちらに向けられた。

「・・・・・・!!」

 絶体絶命。もはや、ここまでの運命だろうか。

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