表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変な学校  作者: akaoni0026
12/61

其の九の四

 二年四組の教室にフラフラと入ると、僕は疲れたように席についた。どっこいしょと言いたい。

 続いて律佳も隣に座る。表情は、いつも以上ににこにこしている。

 例の電車飛び越えが爽快だった、のだろう。僕にはよくわからないが・・・はあ、ノンキなヤツ・・・。

 そこへ雪也が、いつも通りにはにかんで、片手をあげながらやってきた。

「よぉ、おはよう耕輔」

 とここまで笑顔だったが、雪也の表情が変わった。どうした?って感じの顔だ。

「・・・どうした、元気ねぇぞ」

 アタリだった。

 とりあえず、一目見るだけで疲労が分かるところ、僕は相当ゲッソリしているようだ。僕は苦笑いを浮かべた。

「ああ、まあ、ちょっとあって」

 ちょっとあって。それに反応したのか、雪也はチラと律佳を見た。彼女はずっとにこにこしている。目の前の耕輔はとてつもなく疲労しているのに。雪也は察した。

 彼にはこのパターンに前例がいくつもあった。律佳が特別入学して、五ヶ月と言うまだ短い期間だが、それでも事件は数多く起こっている。と言うか起こりすぎている。無論律佳のせいで。雪也は納得した表情で、口元に手のひらを持っていき、小声で耕輔に言った。

「ああー・・・またか?律佳ちゃんのせいで?」

 最後は絶対律佳が聞こえないようにポソリと言う。

「そう、そうなんだよ・・・今日は智香さんも・・・」

 と。雪也はここで異常な反応を見せる。明らかに表情が驚きに満ちたのだ。いつものことだが。ちなみに理由は考えなくても分かる。雪也は智香と言う名前が出ると、すぐ顔に出るから。

「え!?・・・ち、智香さんがどうしたって・・・?」

 一瞬大声を出してしまったのを抑えて、つつと汗を流しながら彼は聞いてきた。

 気は進まないが、言わないわけにはいかないな。僕は朝のことを一部始終話した。


 話し終えた頃、雪也が唖然としていた。智香さんが、まさか。そう思っているのだろう。けど雪也も慣れないものだ、毎回智香の異様な行動は話しているのに。そのたび感嘆するとは。関係ないが、何故かそのときには律佳も会話に参加していた。一体いつの間に。本当に分からないのが恐ろしい。

 雪也は唖然としながらも、どこか言い訳を見つけようと、焦りながら、

「えぇ・・・智香さんが・・・」

 毎度同じく、雪也は、信じられない、と言う顔をした。

 関係のないハズの律佳は、

「シビレたよぉ〜今日のちぃちゃんは〜!!」

 手を意味もなくブン回しながら、シビレたぁ〜ッと言う顔と声でそう言っていた。

 僕はその律佳の動作と意味をそのまんま無視して、雪也に答える。

「ああ、そうなんだよ・・・」

 いまだ表情が変わらない雪也。いい加減、本当に、慣れるてもいいと思う・・・。

「でもまあ、それはそれで認めなきゃなんないんだよなぁ〜・・・」

 と全く認められていない様子の雪也。

「私も認めるよ〜ちぃちゃんの跳躍力と根性!!」

 言わずもこれは律佳。関係ない。

「まさか、律佳を認めて智香さんまで跳ぶとは思わなかったよ・・・」

 と上の空、と言うかあの時の、律佳と智香の喜んでいる姿を、僕は思い出していた。本当に智香さんは謎が多い・・・。

 そこで、ふぅとため息をつき、

「・・・後で智香さんに聞いてみるかぁ・・・」

 力なく雪也は僕と律佳に背を向け、席に戻って行った。律佳はその背をにこにこと見送り、また的外れなことを言う。

「ゆきやもシビれたんだねぇ〜、きっと!」

 違うだろ!!と言いたいが、確かにある種シビれたかもしれない。間違っても、刺激的なものではないと思うが。ただ、一目会った時から雪也は智香にシビれていた。が、ここまで毎日シビれさせられるとは思ってもいなかっただろう。

 それにしても今日の律佳、本当に楽しそうに笑ってるな。何か言っといてやろうか。いつもなら、言わないけど。

「僕の背中もシビれたよ、律佳・・・」

 律佳は表情を変えず、手を顔の手前に持っていって親指をたて、ウインクした。

「でしょでしょ、最高だよね!!」

 ・・・ダメだこりゃ。

 やっぱり律佳には、人を思いやることと、相手の話を聞くことはしない。悪い意味でもいい意味でもなく、それが律佳個人なんだろうな。

 そこで一人失笑してまう。

 律佳はすかさず、

「あ、やっぱこうすけも楽しかった!?一緒に跳んだからねぇ〜」

 ・・・楽しいとはお世辞にも言えない。痛かったし。けど、

「ああ、楽しいよ、お前って」

「そうでしょ〜」

 律佳は僕の言ったことを理解出来てないけど、そう認識されてもいいだろう。律佳もこれ以上の解釈は出来ないだろうし。

 それに・・・。

 本当に・・・楽しいかもしれない。

 笑えないこともあるけど。でも、楽しそうに笑っているこの律佳が、不思議の火付け役なんだ。今日も昨日も。

 少なくとも、僕の中では。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ