表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変な学校  作者: akaoni0026
10/61

其の九の二

 まさか謎の大男が律佳(りっか)を探しているとも思わず、本人、律佳は家で逆立ちをしていた。逆立ちするために、今は私服である。

「ねぇ〜、どしたらそれくれる〜?」

 さっきから“こうすけが”口の中にホイホイ無頓着に入れてくクッキーが気になっていた。残り十枚程度か。

「どうやったってやらねーよ。お前食いすぎだから」

 律佳の方には向かず、相変わらずクッキーを頬張る耕輔。

「全然食べてないよ〜?」

「いーや、食いすぎだ」

 とは言うものの、何故か太らない律佳。毎日大食い選手並み食うと言うのに。やはり、ライドだからだろうか。

 律佳は、食い過ぎ食い過ぎ言われたので、ムッとなった。

「じゃあ、言ってみなよ!」

「ああ。いいぜ。チョコクッキー二箱だろ、ポテチを三袋、ヨーグルトを二個、カレー三杯に、ラーメン二杯」

 と言い終えてから、耕輔は律佳を見た。彼女は器用に片手で逆立ちすると、空いた手で、ぴしっと人差し指を立て、

「ホラー!!」

「なにが“ホラー!!”なんだよ!」

 ダンッと机を叩き、立った瞬間、入れ物に移し変えたクッキーが、入れ物ごと落ちた。

「あ!!」

 二人同時に言い、クッキー落下を防ごうと耕輔がまず動いた。が、律佳がそれを上回る速さで、器用にクッキーをこぼさないように入れ物を蹴り、然る後に、耕輔の顎を蹴り飛ばした。耕輔は強く上に吹っ飛ぶと、律佳が立って、入れ物を手にキャッチするのと同時に、フローリングの床に自由落下した。

「あ、ごめーん・・・つい・・・」

「つい何だーーー!!」

 早くも復活した耕輔が、首を押さえながら、椅子に座った。いつも何かと家で攻撃されている耕輔は、いつの間にかタフになってしまったのだ。

「まーとりあえず、クッキーゲットォ〜」

 リズミカルに言って、にこにこしながらクッキーを食う律佳を耕輔は悔しそうに眺めていたが、何だか本当に悔しいので、テレビをつけて見ることにした。どうやら戦争ものの番組のようだ。

 二人は平凡に、今日という日常を過ごしていた。・・・そんな日常に、魔手が伸びていようとも知らずに。


 耕輔の家の近く、さっき少年を襲った大男が、無線を人知れず開いた。

「こちら、ダーハン1からダーハン2へ。確認出来た」

 大男がそう言うと、無線機の奥から、まだ年端いかいない少年の声が答えた。

「こちら、ダーハン2、了解。そのまま監視を続けてください」

 およそ少年とは思えない冷たい声で応答がきたが、大男は驚きもせずそれを返す。

「ダーハン1、了解」

 とは言ったものの、大男は気になることがあった。一応聞いてみることにする。

「・・・ダーハン2、他に動きはないか」

「いいえ、他に目立った動きはありませんが、何か」

 やはりない。とするなら、先の“施設”内の騒ぎと言い、今起きた家の中の騒ぎと言い、納得出来ない箇所がある。

「俺の意見が正しければ、ヤツらは何らかの兵器を所有している」

 さして驚く様子もなく、少年は答えた。

「兵器、ですか。どうしてそう思うんです」

「ターゲットが妙な動きをする。必要のない攻撃を加えてまで、何かを取り上げようとする動きがある」

「・・・どういうことですか」

「例えば、少年に対する腹部への攻撃。キーワードは“ジョーカー”だ。ターゲットはそれを盗まれ、自然に取り返したように見せたが、“ジョーカー”を取り戻すために必要のない攻撃を加えたのは明らかだ」

「“ジョーカー”ですか。確かに、“戦争”に用いられますが、それはジョーカー以外」

 話し最後まで聞かず、大男は、やはり、と頷いた。

「ターゲットはこちらの動きに関して、何らかの情報を得て、兵器を用意したのだ」

「いいえ、それは何かのまちが」

「では、キーワード“クッキー”は何だ」

 やはり話しを聞こうとしない。少年はこれ以上は無駄だと思い、脳内知識の、“クッキー”を検索した。

「“クッキー”は、戦争時、携帯保存食として使われたことがあります」

「やはり・・・いつでも持ち出せるように、携帯食を充実させていたか」

「その可能性は低いかと――」

「さすがは女性型ライドの傑作機、と言った所か」

「・・・・・・」

 少年はこれまた無駄だと思い、再度指示を下した。

「監視を続けてください」

「了解」

 その時大男の耳には、「まだいけるって〜〜!!」と言うターゲットの声と、ガラスの割れる音、何故か銃撃の音ともに、兵士の声、「ここでくたばるなーっ!まだいける!俺たちはまだいける!」が聞こえると、次に「もういくな!どんだけ食う気だ!」と言う第二ターゲットの声が聞こえた。それと同時に、“ヒュゥゥ〜〜ッ”という爆撃弾独特の、落ちていく音がしていたのだった。



  〜続く〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ