涙
車は私を乗せて2時間、ずっと走ったままだ。
「ねぇ〜ヒロさんまだ着かないんですか??さっきから走ってますけどまわりは山ばっかりだし、何処向かってるんですか!?」
「ヒ・ミ・ツ♪」
あたりはもう暗かった。それに人気もない、でもヒロさんは笑顔でタバコを吸いながら運転している。
それから30分ぐらいたったころだろうか。急に車が止まった。
「お待たせっ♪到着っ!!」
車をおりてまわりを見たが何もない。コンクリートの駐車場に林があるだけの場所。
「あの・・・。何にもないんですけど・・・。」
私がつまらなさそうにいった。すると
「どこみてんだよ。こっちこっち!」
ヒロさんに手を掴まれ引っ張られた。そして林の横にあった細い道を通ってゆく。
木を避けながら走っていくとヒロさんがいきなり止まって私はヒロさんの背中に顔をぶつけてしまった。
「いったぁ〜いっ。いきなり止まらないで下さいよ!あぶないじゃないで」
「ほらっ!!みてごらん」
言葉をさえぎられ、見てみると
「わあぁぁぁぁぁぁ!!!キレイッ!!」
そこには大きな湖があって、月明かりに照らされながら水面が光っていた。町がすごく小さくて灯りがついているから、まるでろうそくみたいになって赤や緑や黄色やオレンジ色に光っていてそれが湖をおおってとても言葉では言い表せないほどにキレイだった。
「ここ俺のヒミツの場所なんだっ♪」
ヒロさんは笑顔で私にそっと囁いた。
「奈央子さっ!!何かあっただろ?俺の電話にもでないし学校も休んでるみたいだし。何かあるんだったら言えよ!また前みたいに一人で抱えこもうとするなよ!!」
急に真剣な顔つきになって、私の目を見つめてきた。私は怖くなって話をそらそうとした。
「なっ何急に!今日は話なんてなかったんじゃないんですか!?別に悩み事なんてありませんよ♪あっ!!そうだこの間」
「言ってごらん??」
また話をさえぎられた。今度は優しい顔で言ってきた。
「だからナイってば!!!」
「ウソつくなよ。奈央子はウソつくと俺の顔見ないんだよ??知ってた?」
だって・・・言えるわけないじゃん!!来年結婚するの??とか私のこと妹として見てたの?とか妹なら何でキスしたの!?とか・・・そんな馬鹿らしいこと自分の恥じをわざわざさらすような事いえるわけがなっかった。それにヒロさんの口から妹みたいな存在だって言われる事が恐ろしかったから。聞きたくなった。
「俺は奈央子のそんな無理した笑顔見たくないな・・・。」
切ない悲しそうな顔でつぶやいた。その時心の中でやっぱりヒロさんにはかなわないなぁ〜と思った。
「あのね・・・ヒロさん来年結婚するんでしょ?」
「えっ!!」
ヒロさんは一瞬ビックリした顔をしたけどすぐに真剣な表情に戻って
「うん」
とだけ答えた・・・。
私の目から熱いものが顔をつたった。それが涙だと気づいたのは数分たってからだった。




