幸福
私が、1番安らげる場所はヒロさん以外に考えられなっかた。でも、秋祭りが終わればそれもおしまい。メール交換や電話はできるけど、逢えない・・・。
学校でのイジメはまだ続いていた。最近は前よりひどくなってるような気がした。前はムシだけだったのに、最近私の教科書やノートが無くなっている。
「(どうしよう。新しい教科書買わないといけなくなっちゃう。ヒロさんに逢いたい。逢いたいよっ!)」
そんな時だった。
「ハイっ。これ」
いきなり、クラスメイトの女子が私に手紙を渡してきた。
「あっ。あたしに?」
「そうだよ!?開けてみて?」
そう言われ、私はもしかしたら仲直りにの手紙かも。と思って急いで開けた。中にはこう書かれていた。
「死ね」
たった2文字で、人は人を殺せる・・・。心が死んでいくのがわっかた。
気づいた時には私は、教室を飛び出していた。もう死のう、死のう、心の中で何度もつぶやいた。
「ヒ・・ロ・・さ・ん。」
そして最後に思ったのは、ヒロさんのことで、自分が死ぬ前にもう一度声が聞きたっかった。
『トゥルルルトゥルルルトゥルル』
電話音が耳に響いた。
「もしもし?」
「奈央子?どうした?」
「ヒロさんの声が聞きたくなったんです・・・。」
「俺の声でいいなら、なんべんも聞かしてやるけど♪それにしても何かあったのか?声暗いぞ??」
「あのね?聞いてもいい?」
「うん。何でも話してみ。」
「よく、人は意味を持って生まれてくるって言うけど、私・・・間違って生まれてきたみたい!私生まれてきた意味なんてないっ!!もう・・・生きるのに・・疲れた。」
本音をぶつけた。ヒロさんには全然関係ないことなのに、つい、声を荒げてしまった。涙が止まらなかった。
「じゃー聞くけど、奈央子はこの町で、あの公園で、あの日あの時、俺に出会ったことにも意味がナイのか?笑って、怒って、そんな楽しい思いでも、俺との思い出も奈央子は全部否定するんだな!!?」
「ちっ違う。そう言うんじゃなくて・・・」
「違わないよ。奈央子が言ってるのはそう言うことだよ。」
「・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙が続いた。先に口が開いたのはヒロさんだった。
「公園に来てみな?」
「公園?」
「そう。奈央子と初めて逢った時の公園。」
「わかった。」
気がついたら学校の授業は終わっていて、掃除の時間になっていた。
私は、掃除の時間をサボり、校門から走り去るようにして出ていった。私のいる学校から公園までは、歩いて20分ぐらいの所にある。公園に何で行かなきゃいけないんだろう?!いったって何にもないのに!!
そう思いながら、ゆっくりゆっくり歩いて行った。20分の所にあるのにゆっくり行ったせいで倍の40分かかってしまった。歩いている間に、手紙の事を思い出して悔しくて悔しくて、私の顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていた。
入り口を通りぬけたら回転シーソーが見えてきた。そこに人が立っていた。
「どう・・し・・て・・・。」
ヒロさんだった。
「コラッ!!遅いぞっ。何十分待たせるつもりだ!?」
「えっ!?どうして・・仕事なのに・・・。」
「おいでっ。」
ヒロさんは、優しくそう言うと、両手を広げてにっこり笑った。私は、おもいっきり抱きついた。
そしておもいっきり泣いた。
「よしよし。奈央子は今まで一人で良く頑張りましたっ!!偉かったよ♪でもこれからは我慢しないで俺の所においで?」
その瞬間、これ以上にないかっていうぐらいの涙がでた。そしてヒロさんは優しく抱きしめてくれた。
きっと、この人には言わなくても全部おみとうしなんだっ。私が今、学校でどんな目にあっているのかも。全部、全部わかってるんだ。イジメられて独りぼっちな私なのに、そうわかっていながらもヒロさんだけは、私に手を差し伸べてくれた。
温かくて、優しくて、ホントに太陽みたいな人だった。
私はそのまま眠ってしまったらしく、起きた時にはもう夜になっていた。ベンチでヒロさんに膝枕されながら眠っていた。そんな時でもヒロさんは文句もいわず。ずっとそばにいてくれた。
「ごっ!!ごめんなさい!!あたし、つい、眠ってしまったみたいで。」
「全然平気だよ♪」
『チャリラッチャリラッ』
ヒロさんのポケットから携帯の着信音がなりだした。ヒロさんは携帯を取り出し、サブ画面をみてバツが悪そうな顔をしていた。
「あっ!!やっべ!仕事先からだ。ちょっとでてくるね。」
そう言うとちょっと離れた所にいき電話にでていた。私は心配になって近づいてみると。
『どうもすいませんでしたっ』とひたすらペコペコ謝っている姿が見えて、心が痛くなった。
そして、電話を切るとまた笑顔で私のもとに帰ってきた。
「あの・・私なんかのために、仕事サボらせちゃってごめんなさい」
「いいのっ!!奈央子は悪くないよ!俺が勝手にしたことだからっ。じゃっそろそろ帰りますか。」
「はいっ!!」
帰りは二人で手を繋いで帰った。途中で自動販売機で温かいレモネードを買って二人でまわし飲みしながら行った。家の近くまで来た所で立ち止まった。
「あの、ここまでで大丈夫ですから♪送ってもらっちゃって今日はホントにありがとうございました!!」
「ここまででいいの?」
「はいっ。もう十分です。私、明日から頑張りますっ!!おやすみなさい」
そういって私は後ろをむいて行こうとした時に、呼びとめられた。
「ちょっと待って。奈央子目つぶって」
「えっ?何でですか??」
「いいからっ!早く」
「こっ。こうですか?」
「はいっ♪おやすみのキスッ☆」
『チュッ』
温かくて柔らかいものが、私の唇に触れた。
それがキスだと、頭が理解したのは、数分たってからだった。
それは、私にとって初めてのちゃんとしたキスだった。
「えっ!あっ!あの」
みるみるうちに顔が真っ赤になって、私は挙動不審になっていた。
「じゃ〜なぁ〜♪おやすみ〜」
そういいながらヒロさんは帰っていってしまった。
「どっ。どうしよう!!!!!」
戸惑って、歩いて、ボーっとして、電柱にぶつかったけど無事に家に帰ることができた。
そして、何だか元気が出てきた。
「もう負けない!!強くなってみせる!二度と泣いたりしない!!」
私はそう心に誓い、明日から本気で頑張ろうと思った。
ベットに入って今日1日を振り返ってみた。今日私が1番に思ったこと・・・それは・・・
「初めてのキスはレモンの味って、あれホントだったんだ♪」




