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初恋  作者:
2/14

出会い

「へへっ。ホントに独りぼっちになっちゃった。あたし・・・みんなに嫌われるようなことしたかな?」

私は、この生まれ育った町にでさえ嫌われた。もう真っ暗だった。全てが闇に思えた。夜、私は独り寒い中外に出た。まだ秋だというのに、真冬なみの寒さで、冷たい風が容赦なく吹き付けていた。そばにあった回転シーソーに乗り、楽譜を見ながらバチだけ叩いて練習をしていた。そんな時だった。

『ガタンッ!!』

回転シーソーが揺れた。

「ねぇ!きみここで何してんの?」

私の前に一人の男性が立っていた。

「えっ?たっ・・太鼓の練習。」

「そっかぁ。音符がいっぱいでお兄ちゃんにはわかんないなぁ。」

楽譜を見て、とても難しそうな顔をしていた。何だかそんな光景が私にはすごく嬉しかった。

「こんな所で練習してたら風邪ひくよ!?早く中入ろっ。そんで、お兄ちゃんに太鼓教えてくれる?」

そう言って、男性は私の手を引っ張ってテントの中につれってってくれた。

「(ありがとう)」

私は、心の中で何回叫んだだろう。もう泣きそうだった。いや、もう泣いていたんだと思う。

「きみ、名前は何て言うの?」

「奈央子。」

「そっか。奈央子ちゃんかぁ。可愛い名前だねっ!」

『ドクンッ』

私の心臓が、今まで感じた事のない変な音をだした。

「お兄さんの名前は?」

「あっ!俺?俺の名前はヒロっ。」

「ヒッ・・・ヒロさんっ??」

「あははっ!何で疑問形なの??つかヒロでいいよ!さん。なんかつけなくて」

「あっ。でも年上の方には、さん。をつけないと・・・。」

「分かった。じゃ〜ヒロさんでいいよっ。奈央子ちゃんは歳はいくつ?」

「16歳です」

「じゅぅ〜ろくぅ〜!!!まぢ??若いなぁ!!」

まるで不思議なものでも見るようにとても驚いた顔をしていた。

「お兄さんはいくつですか?」

「さて、いくつでしょう??」

「20歳?」

「嬉しいなっ♪でも残念24だよ」

「若いですね」

「いややや。逆だから。16の子に若いって言われてもね」

そんなたわいもない話をしていて色々な事がわかった。ヒロさんの家は、私の家の近くにあること。今は一人暮らしで、ホテルで働いていること。実家は酒屋さんだとか。

何でもないことだけど、話する内容なんてどこにでもある普通の内容だけど、私にとったらとても大事なことで、ただ・・・ただ。あったたかかった。ヒロさんの笑顔がまぶしくて温かくて。

私にとってヒロさんは【光】だった。

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