出会い
「へへっ。ホントに独りぼっちになっちゃった。あたし・・・みんなに嫌われるようなことしたかな?」
私は、この生まれ育った町にでさえ嫌われた。もう真っ暗だった。全てが闇に思えた。夜、私は独り寒い中外に出た。まだ秋だというのに、真冬なみの寒さで、冷たい風が容赦なく吹き付けていた。そばにあった回転シーソーに乗り、楽譜を見ながらバチだけ叩いて練習をしていた。そんな時だった。
『ガタンッ!!』
回転シーソーが揺れた。
「ねぇ!きみここで何してんの?」
私の前に一人の男性が立っていた。
「えっ?たっ・・太鼓の練習。」
「そっかぁ。音符がいっぱいでお兄ちゃんにはわかんないなぁ。」
楽譜を見て、とても難しそうな顔をしていた。何だかそんな光景が私にはすごく嬉しかった。
「こんな所で練習してたら風邪ひくよ!?早く中入ろっ。そんで、お兄ちゃんに太鼓教えてくれる?」
そう言って、男性は私の手を引っ張ってテントの中につれってってくれた。
「(ありがとう)」
私は、心の中で何回叫んだだろう。もう泣きそうだった。いや、もう泣いていたんだと思う。
「きみ、名前は何て言うの?」
「奈央子。」
「そっか。奈央子ちゃんかぁ。可愛い名前だねっ!」
『ドクンッ』
私の心臓が、今まで感じた事のない変な音をだした。
「お兄さんの名前は?」
「あっ!俺?俺の名前はヒロっ。」
「ヒッ・・・ヒロさんっ??」
「あははっ!何で疑問形なの??つかヒロでいいよ!さん。なんかつけなくて」
「あっ。でも年上の方には、さん。をつけないと・・・。」
「分かった。じゃ〜ヒロさんでいいよっ。奈央子ちゃんは歳はいくつ?」
「16歳です」
「じゅぅ〜ろくぅ〜!!!まぢ??若いなぁ!!」
まるで不思議なものでも見るようにとても驚いた顔をしていた。
「お兄さんはいくつですか?」
「さて、いくつでしょう??」
「20歳?」
「嬉しいなっ♪でも残念24だよ」
「若いですね」
「いややや。逆だから。16の子に若いって言われてもね」
そんなたわいもない話をしていて色々な事がわかった。ヒロさんの家は、私の家の近くにあること。今は一人暮らしで、ホテルで働いていること。実家は酒屋さんだとか。
何でもないことだけど、話する内容なんてどこにでもある普通の内容だけど、私にとったらとても大事なことで、ただ・・・ただ。あったたかかった。ヒロさんの笑顔がまぶしくて温かくて。
私にとってヒロさんは【光】だった。




