A.M. 7:30~
「ただいまぁ!」
寅央が勢いよく演劇部の部室の扉を開けると、悠里はもうそこで台本を漁っていた。
「お帰り。とりあえずまだ部員がそろってないんだけど、どうするよ部長?」
何を隠そう、寅央は演劇部部長、そして悠里は副部長なのである。
「先に練習しておこうよ♪」
「おっけー。どの台本にする?」
「う~ん…ウォーミングアップみたいな感じで、軽く演じれる台本があればそれで。」
「んー…じゃあ、ロミジュリ。」
真顔でロミジュリの台本を差し出す悠里。冗談なのか本気なのか、計り知れない。
「えぇ…男二人だし、やめておこうよ…」
「えぇ、お前が女でいいじゃん。」
「いやいや、おかしいじゃん…ほかのにしよう?」
「全然?だってお前、可愛いじゃん♪」
平気な顔でそんな言葉を吐く悠里は、おそらく天然の部類としてカウントされるのであろう。
「可愛くありませんっ!!」
一気に真っ赤になってしまう寅央に、悠里は含み笑いをする。
「ゆ、悠里のほうが可愛い!僕は全然可愛くないよ?」
「は?俺全然可愛くねぇし、男だし。可愛いって言葉は女装してるとき専用!」
「はいはい、僕も男だからね。」
「あれ、そうだっけ。」
あっけらかんとさっき自ら言った言葉否定する悠里。
「はっ!?そうですよ!!女と思っていたの!?」
「ん。普通に女だと思ってたわ…」
「バカ、女じゃないよ!!]
「マジか、びっくりだ。ずっと女だと思ってた…道理で姉さんがあんなこと言ってたわけだ…」
「ま、マジだよ!ど、どうして女だと思ったの!?」
相変わらずの真顔で、悠里は今度は問題発言をする。
「前、寅央の部屋に窓から入ろうと試みたら着替えてたから。」
「死ねェエ!!!じゃあ全部見ちゃったってこと!?」
「てへ☆ごめん☆」
全部見たのなら、ついさっきまでの会話はいったいなんだったのか。
まったく、寅央には悠里が理解できない。
ちなみに、今しがた言った通り、寅央は女である。
ただ、演劇のために男に扮して学校生活を過ごしているのであった。
「ごめん☆じゃないよ!もう悠里には嘘つけないじゃん…」
終始顔を真っ赤にしながら、寅央はしゃがみ込んだ。
その時…
「悠里ぃ!!あんた、私の茶杓折ったわね!?」
寅央の時よりも勢いよく扉が開かれ、着物姿の由愛が飛び込んでくる。
「…って、あら?寅央、どうしたの?」
「あ、な、なんでもない!」
「どうでもいいけどよ、そろそろ授業の時間だぜ?」
「嘘、もうそんな時間!?」
寅央と由愛がほぼ同時に部室にある時計を確認すると、針はもう8時を刺そうとしていた。
「っきゃー、遅刻する!!!」
…さぁ、あわただしくも、授業の時間です…




