A.M. 6:45 ~
魔法使いや魔女…さらには妖怪…とにかく、魔法が扱えるものが集まるこの超進学校では、今日も誰かが悲鳴を上げる。
「うわあぁあん!ここどこぉ…?」
「落ち着きなさい、萌香。僕にもわかりません。」
「お兄ちゃんのバカぁぁあ…!由愛姉さまはどこおぉ…」
萌香は泣きじゃくりながら地面に膝をつく。
それに対する詠月はただ、困りましたね…とため息をつくだけだ。
「…あれ、ねぇ…あそこにいるのって…」
「…大方、また迷子なんだろ…」
「…もうバカなんだよ、きっと!」
二人がいる位置からちょうど反対側、その部屋の入口から新たに三人の声が響く。
そのうちの一人の声を聞いて、顔を輝かせる萌香。
「由愛姉さまぁああ!!!!」
思い切り中央に立っていた由愛にタックルを食わせる萌香。
「ぐふっ…ちょ、萌香、苦しい苦しい…」
「助かりました、要…悠里、次僕をバカ呼ばわりしたらあなたの口に腐ったケーキを詰め込みますよ?」
「俺は何もしてない。」
「うげっ、ご、ごめんなさいごめんなさい!!」
にっこりと笑いながら殺気を出す詠月に、要は冷静に、悠里は慌てて言葉を返す。
「…ったく、萌香も詠月兄さんも、どうやったら礼拝堂まで迷うのよ…。ここは校舎から結構離れたところなのに。」
すると今度はもう一つの声が、由愛ではなく悠里を襲う。
「悠里ぃぃい!!!」
「うわわわッ…と、寅央っ!?」
後ろから抱きつかれ、悠里は驚きながらも相手の名前を呼ぶ。
「今日も一段と可愛いねっ♪」
「さんきゅー♪…って、違う、抱きつくな恥ずかしい!」
むしろ誰か違う人が言ったら変態としか思えないセリフに、悠里は慣れたように返す。
…まぁ、頬が朱に染まっている点で、言っていることは嘘ではないらしい。
「…いつも思ってるんだけど、あなたたち本当に付き合ってないの?」
「はいはーい、由愛サン、僕が男の子だっていうことを忘れないでね。」
「甘いわ寅央。世間では同性愛だっているのよ?」
「黙れ由愛」
ここで断っておくが、由愛は決して同性愛が好きというわけでない…はず。
「僕はそんなんじゃないから!ね、悠里!?」
「え、あ、あぁ、そうだな…」
「ふふっ、冗談よ冗談。さっ、礼拝堂で騒ぐのも失礼だし、大堂にでも移動しましょう♪朝ご飯の時間よ。」
由愛は自らの魔道式ミニパソコンを取り出していう。
そのパソコンに表示されている時計は、もう午前7時を指していた。
「おー、飯ー♪」
「もうそんな時間か…」
「いくいくー♪」
「ご♪は♪ん♪」
「こら、はしたないですよ萌香」
そして、一同は大堂へ足を運んだ。