第四話『嫌いなものは』
「……竜樹…?何で竜樹が…?」
「それはこっちの台詞だ。何でお前がここにいるんだ」
「え!?いや、それは……」
修也はチラッとノアを見る。
『D-JOKER』の事は一般人に言って良いのか分からなかったからだ。
しかし、ノアはフッと笑う。
「コイツは俺達の事を知ってる。そして力も持ってる」
「どんな力なんだ?」
「本人すら知らねぇのに俺が知るかよ」
修也は二人が親しげに話している事が気になった。
確かに学校でも話したりはするが、ここまで親しげではない。
それにもう一つ気になっている事がある。
「ノア君?さっき『俺達の事を知ってる』って言ったけど……良いの?」
「良いって、何が?」
「いや、だから『D-JOKER』の事……」
修也は声のボリュームを最小にしてノアに言う。
しかしノアはそれを聞いて笑った。
「言うも何も……」
「コイツも『D-JOKER』の一人だぜ?」
「……え?」
「ええぇぇぇえええ!!!」
「やかましい!!」
「痛っ!」
修也はノアに頭をはたかれる。
結構本気で痛かったとか。
「竜樹が『D-JOKER』の一員!?いつから!?」
「確か五年位前からだな」
五年前と言えば、竜樹はまだ小学生だ。
そんな時からあんな化物と戦っていたのだ。
「コイツは『D-JOKER』のコードネーム『エノク』。本名は赤間谷竜樹……って知ってるか」
「コードネーム?……もしかしてノア君にもあるの?」
「ああ、俺のコードネームは『ノア』だ」
修也の頭の中に幾つもの疑問符が浮かぶ。
「えっと、名前は?」
「あ?冥星ノアだよ」
「コードネームは?」
「だから『ノア』だって」
「……コードネームって名前とは別に付けられる名前の事じゃなかったっけ?」
「……そうだな。俺の場合は逆だ」
「ノアの場合コードネームから自分の名前が付いたんだ」
竜樹が会話に入る。
二人は竜樹が居る事を忘れていた為、少し驚いてしまう。
「じゃあ本当の名前は……」
「無い」
忘れた、ではなく無い。
つまり元から名付けられていなかった、という事だ。
「……もうこんな話は良いだろ。仕事も終わったし俺は帰る」
そう言うとノアは踵を返し歩き出した。
それを二人は見送る。
「えっと……竜樹も力があったんだね」
「ああ、『空を裂く断末魔』。それが俺の力の名前。風を操れるんだ」
「そうなんだ……僕の力って一体……」
「今は気にすんな。どうせ使えねぇんだし」
「それってどういう―――――」
修也が聞こうとしたが、いつの間にか竜樹の前に男が立っていた。
灰色の髪で、長身で細身、黒ぶちの眼鏡を掛けており、眼鏡を掛けていても顔が整っている事がわかる。
「竜樹君、お喋りもその辺りにしてはどうですか?仕事も終わったようですし」
「アンタはいつもそうやってどこからともなく現れんのな」
「それでも君は風を操っていつも気付くじゃないですか」
「そうだ、だから止めろよ」
男性は竜樹の言葉を冷静に返していく。
男性が修也を見て微笑む。
「君が加西修也君ですね。初めまして、私は仁科緋寿と言います」
「こ、こちらこそ」
「お互い自己紹介が終わった所で俺は帰る」
「お疲れさまでした。次も頼みますよ?」
仁科が少し微笑んで言うが、竜樹は無視して家に向けて歩き出す。
修也も仁科に一礼し、竜樹の下に走っていく。
「……ノア君はまだあの事は思い出したくないですか」
因みにこの後、修也はちゃんと荷物を届けに行った。
翌日、月曜日。
担任の教師が勢いよくドアを開け入ってくる。
「えーっと、今日からこのクラスにまた一人仲間が増える事になった」
クラスがざわめく。
ノアの場合、どこかの誰かさん(仮名)が脅して無理矢理転入したようだが、まず一般人にはそうそう出来ない。
先生が入って来なさい、と言うと青い髪の少年が入ってきた。
「彼の名前は―――――」
「先生、自分で言わせて下さい」
少年が先生が喋るのを止め、生徒の方に向き直った。
「じゃ、じゃあ自己紹介を」
「はい、オレの名前は百目鬼閃牙。趣味は特になし、好きなものも特になし、だが嫌いなものは―――――」
そこまでは普通だった。(しかし特になしなら言わなくても良いのでは?)
しかし、その後言った言葉でノア、修也、竜樹の三人は驚いた。
「『闇』だ」
挿絵はキャラ紹介の方だけにします。
(雪龍)
「と言う事で今回は時雨!よろしく!」
(時雨)
「次回は第五話『宣戦布告』です。てか私の出番が全然無いんだけど」
(雪龍)
「大丈夫。いずれ来る」