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D-JOKER  作者: カラクリ/あわぞー
魔族への切り札編
14/16

第十二話『二度笑う道化師』

「部長、連れて来たでー」


『D-JOKER』大阪支部。

 霙が部長と呼ぶ人は、ダンディな白髪オールバックの男性だった。


「よく来てくれたね。私が大阪支部の支部長をやらせてもらってる細川ほそかわだ」

「えーっと、俺は『ノア』、こっちが『ヤぺテ』こと諏佐霊人で、こいつが『イゼベル』ことバカネコだ」

「にゃんって違う!要するにネコじゃない!アタシは凛堂未来!」

「ふむ……君は本名を教えてくれないのかい?」

「いや、だから『ノア』だって」


 わざわざ『』を付けるから解り辛いが、彼の名前は冥星ノア。

 決して嘘は吐いていない。


「そうか、まぁ良いんだ。それで、君は?」


 細川は良く解っていないらしい。

 理解する事を諦めて修也の方を向いて尋ねた。


「僕は加西修也です」


 細川はじっと修也を見る。

 そして笑う。


「彼によく似ているね……」

「え……?」

「いや、何でもないよ」

「………ん?そう言えば赤間谷はどこ行った?」

「やっと気付いタかよ。アイツなら新幹線に置イテ来たぜ」

「えぇっ!?」

「なら良いや」

「良くないよ!?」


 とはいうものの、竜樹なら大丈夫だと心の片隅で思ってしまっている。

 彼ならどうにかしてここまで来られるだろう。

 それが出来なくても、最悪本部に戻るだろう。


「なーなー、ウチ遊びに行きたいんやけど」

「もうちょっと待ってなさい」


 霙はしゃーない、と言うと部屋から出て行った。

 待てと言われたのに外に行ってしまった。


「すまないね、彼女達は少し子供っぽい所があってね」

「大丈夫だ。うちの部長も似たような感じだ」


 その頃、佳弥はくしゃみをしていただろう。


「とりあえず色々見せてもらうが……具体的に俺達は何を見て、何をすればいいんだ?」

「それを私に訊かれても困るんだが……」

「オレから訊きテェ事があンだけど良いか?」

「何だい?」

「アイツ……霞霙と霰の事だ……」


 霊人は真剣な表情だ。

 その表情を見て、細川は唾を呑み込む。


「……ドッチが姉でドッチが妹ナンだ?」

「それ別にどっちでも良くない!?」


 どっちでも良くは無いが、今この状況では別に訊かなくても良い事だろう。

 その時、勢いよくドアが放たれ、息を切らした男が入って来た。


「大変です!霞が人を襲いました!」

「何ぃっ!?すぐ行く!」


 細川が走って外に飛び出す。

 ノア達もそれに続いて外に出た。









 大阪支部から出て、少し走った所にある公園。

 そこに霙はいた。


「霙っ!」

「ほぇ?隊長やん。どないしたん?」

「どないしたんじゃないだろ!お前何で人を襲ったり……」

「せやかてしゃーないやん。コイツが襲ってきてんから」

「お、襲ってねー……」


 ノア達に取って聞き覚えのある声。

 それが霙の足元辺りからした。


「……お前何してんの?」

「その言い方は無いだろ……」


 霙の足元に倒れているのは赤い髪の少年。

 というか赤間谷竜樹だった。

 しかもズタポロだった。


「隊長、コイツがウチの事襲ってん」

「だから襲ってねぇ!ちょっと話しかけただけだろ!」

「イケメンが話しかけるっちゅうことはセクハラかナンパや」

「どんな偏見だ!ふざけんなよクソガキ!!」

「あぁ?アンタ何歳や……?」

「16だ、ボケ」

「同い年やないかアホォ!!」


 正確に言うとまだ15歳だ。

 自分も今年で16歳になるから同い年だと言ったのだろう。


「何でお前大阪にまで来ていたいけな女子にナンパ、あるいはセクハラしてんだ」

「浮かれ過ギだろ」

「要するに最低。女の敵だよ」

「だから違ぇっての!!」


 その後、竜樹から聞いた話を纏めてみる。

 新幹線はノア達と同じくちゃんと大阪駅で降りていたらしい。

 だが、やはり気分が悪いのは変わらなかったらしく、少し休憩していたら置いて行かれてしまったらしい。

 地図を渡されておらず、途方に暮れていた所、前もって見せられていた写真と同じ顔の人物、つまり霙がいたので話しかけたらボコボコにされたらしい。


「って、そう言えばお前、もう一人居なかったか?」


 竜樹が霙を見ながら言う。

 周りの人には何を言っているのか解らないだろう。

 いや、勘が良い霊人やノア辺りはそれが双子の片割れである、霰の事だと解っているかも知れない。


「えっと、君達知り合いの様だけど……まさかこの子……」

「『D-JOKER』本部所属、赤間谷竜樹こと『エノク』だ」

「逆だ」


『エノク』こと赤間谷竜樹、これが正解だ。


「そ、そうだったのか。それは尚更悪い事を……霙!お前人を襲ったりして―――――」

「細川サン、何言ってンだ?」

「え……?」

「オレ達は人間ナンテ高尚なモンじゃねーダローが」

「それはどういう……?」

「力を持つ者は人間じゃネー。その辺の虫ケラ以下のゴミなんダよ」


 それを聞いて、細川は驚愕した。

 自分より年下の、しかも細川から見たらまだまだ子供の霊人が、こんな事を言ったのだ。

 いや、例え自分よりも年上だったとしても、驚愕した事に変わりは無いだろう。


「そ、そんな事……」

『今日は美味そうなガキが六匹ぃ……クフフ……』


 どこからか響く女の声。

 周りに人がいない。

 つまり、この声は魔族の物で、ここは領域の中なのだろう。


『こんにちわぁ、素敵な食料(ガキ共)


 ノア達の後方、滑り台の上にそれはいた。

 長い黒髪の女で、目隠しの様な物をしている。

 それだけ見れば風変わりな女の人だが、その女性の足、ひいては下半身。

 大きな黒い球体から、数十本もの細長い脚が生えている。


「ま、魔族!?」

「お前、運が無かったな」

『何を言っているのかしらぁ?』

「俺達の正体を知らずに領域に閉じ込めるとはな」

『アンタ達の正体ぃ?そんなの知って何になるってのよぉ』

「何やねん、その喋り方。ごっつウザいんやけど」


 霙が一歩前に出る。


「隊長、ウチが闘うから手出さんとってな」

「え!?お前が闘うのか!?」

「アカンの?アカンのやったら無理にとは言わへんけど……」

「いや、良いんだが……お前、人前では闘わなかったじゃないか」

「ウチが闘わんでも皆が倒してまうからやろ」


 どうやら理由はそれだけだったらしい。

 霙は両手を広げて、言った。


「『二度笑う道化師ツー・ライズ・ワン・ジャッジ』」


 次の瞬間、霙が二人になった。

 否、霞霰が霙の体から現れた。

(霙)

「ウチ登場やな!」

(風見燈環)

「え、前回から登場はしてたじゃん」

(霙)

「しゃーないやん。前回の後書きはネコちゃんに盗られてん」

(未来)

「にゃんって違う。要するにネコじゃない」

(風見燈環)

「あ、また出てきた」

(霙)

「この子出てきたら収集つかんくなってまうやん」

(未来)

「それどういう事!?」

(風見燈環)

「確かにそうだね。ならそうなる前に終わっとこうか」

(霙)

「せやね」

(未来)

「待ってよっ!要するに終わらないでっ!!」


(霙)

「次回第十三話『分身ちゃう』や。次回もよろしゅうな~」

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