第十一話『霞霰と霞霙』
「さて、今回は皆来てくれたね~」
『D-JOKER』本部の最上階。
そこにメンバーが全員呼ばれていた。
前回は仁科しか来なかったそうだが、今回は全員来ている。
ただ単にサボっただけなのか、伝わってなかったのか……。
恐らく前者が多いだろう。
「今回君達を呼んだのは他でもない、地方支部調査の為なんだけどね」
「あー、もうそんな時期か」
半年に一度、本部の者達が地方支部の調査に行くのだ。
調査と言っても、少しだけ見た後、観光をするという者が多い。
適当過ぎる。
「もう割り振りは決まってンのか?」
「そりゃーもう、決まってるよ。ただ、行かない人達もいるけどね」
全員が行ってしまうと、本部がすっからかんになってしまう。
そうなると、魔族が出た時、対処できない可能性があるのだ。
「今回は霊人君、ノア君、未来ちゃん、竜樹君に行ってもらう事にしてるよ」
「オレ行くノカよ」
「うん、それとついでに連れ帰って欲しい子がいるんだ」
「へぇ、本部に昇格する奴か。名前は?」
「えっとねー、名前は……」
佳弥は数秒考えた後、思い出したらしく、その者の名前を言った。
「―――――霞霰ちゃんと霙ちゃん」
新幹線の中。
今回行くのは大阪。
「……何で僕まで行かないといけないのかな?」
ノア、霊人、未来は勿論いるが、何故か修也までいる。
学校は普通にあるのだが……。
「何でって………このメンバーだとツッコミがいなくて大変だろ」
「そんな理由!?」
「別に良いだろ。親にも俺達がちゃんと話し通したし」
「いつの間に!?」
「何て言うか……寛容な人達だな」
「要するに楽天的な人達だったよね」
(言われてるよ、父さん、母さん……)
未来が言うのだから相当な人達なのだろう。
因みに、竜樹はここにはいない。
乗り物酔いで潰れている。
どこに行ったか、と言うのは既に見当が付いているだろう。
「ツーカ、新幹線ってツマンネェよな。乗客にイタズラしたくナっちまう」
「やめとけよ、お前のイタズラはマジで危ないから」
霊人のイタズラは、恐らく力を行使するものとなってしまうだろう。
一般人への力の行使は掟に反する。
それを解っているので、霊人もイタズラしたくなるだけで、したことはない。
「そう言えば、修也は霊人の事知らねぇよな?」
「う、うん」
「コイツの名前は諏佐霊人。力の名前は『悲しき虚空の藁人形』。能力は―――――」
「ソノ先は企業秘密ダぜ」
「……あっそ」
「アタシの力は『解放されし神秘』。要するになりたいものになれたり、欲しいものを手に入れたりできる力だよ!」
「へ、へぇー……」
まさかこんな所で能力を明かされるとは……。
新幹線の中での会話。
どんな話でも適当に聞き逃していれば、大変な事になりかねない、という教訓なのかもしれない。
修也は特に興味は無かったらしいが。
「そ、そう言えばさ、何で大阪に行くの?」
「地方支部調査兼観光だ。更についでにある人物を連れて来るよう頼まれてる」
「ある人物?」
「名前は霞霰と霞霙。双子らしいが、一緒に居る所は誰も見た事が無いらしい」
「それって……仲が悪いってことかな」
「さぁな、それと闘ってる所も見られた事が無いらしい」
「えっ!?」
「何ダと!?」
未来と霊人が同時に驚く。
(闘ってる所を見られた事が無いって何かおかしいのかな……)
そう言う面では、言ってしまえばド素人の修也には解らない。
ノア達は数年間、魔族と闘ってきているのだ。
修也から見れば、彼等はプロフェッショナルなのだ。
「……何でお前等そんな驚くんだよ」
「気分的に」
「要するにノリだよね」
「えぇー……」
プロフェッショナルは気分とノリで行くらしい。
随分と軽いプロフェッショナルだ。
「つーかさぁ、新幹線で大阪行くってのに雑談続けんのもどうなんだよ」
「何か地味だよね、要するにトランプしようよ」
「定番だな」
と言う事でトランプゲームをする事となった。
「まぁ、まずは軽くナポレオンやるか」
「最初だカラな」
「要するに準備運動だね」
「ちょっと待って!ナポレオンって何?」
「え、修也知らないの?仕方ねぇなぁ、じゃあ、ツーテンジャック行く?」
「ゴメン、それも解らない……」
「はぁ!?これ以外に何があんだよ!」
「え、えーと………ババ抜きとか?」
「「「…………何それ?」」」
「……………」
プロフェッショナルは、素人とは、トランプゲームの知識すら合致しないらしい。
結局、修也が三人にババ抜きの仕方を教える形となったのだった。
「やっと着いたな」
「大阪やで!要するに観光や!」
「ちげぇよ、バカネコ」
「にゃん、ってちゃうわ!要するにネコやあらへん!」
大阪に来て浮かれているのか、何故か関西弁で喋る未来。
「アンタ達が本部からの人達?」
「ん、ああ、そうだ。アンタが霞霰さん?」
一行に話しかけてきたのは、薄い金髪の少女。
背は低く童顔で、中学生くらいに見えるが、年齢はノアや修也と同じだ。
「ちゃうちゃう、ウチは霙の方や。よろしゅうな」
霞霙が、一行を迎えに来ていた。
しかし実は、霰もここに居たという事は、今のノア達が知る由もなかった。
(未来)
「まさかこんなどーでも良いような話でアタシの力の能力が明かされちゃうなんてね。要するに驚きだよ」
(風見燈環)
「どーでも良くは無いけどね」
(未来)
「ただ……また新キャラ出たね。要するにアタシの出番が減っちゃう」
(風見燈環)
「未来までそれ言う!?」
(未来)
「まぁ、その分描写されてない所で修也君と……キャッ」
(風見燈環)
「帰って来なさーい」
(未来)
「次回第十二話『二度笑う道化師』。要するにお楽しみに~」