第十話『学校案内』(裏)sideノア
前回の予告とタイトルが少し違いますが、気にしないでください。
帰宅中のノア。
じゃんけんに勝ち、先に帰っているのだ。
途端に、ポケットに入っていたケータイが振動し出す。
「あー、マナーモードにしてたんだっけ」
とりあえずケータイを取りだして開く。
画面には電話番号と、その上に『佐分ルミナ』という文字。
数秒出るか出まいか本気で迷ったが、結局出る事にした。
「……もしもし」
『ノア?今どこに居るの?』
「………帰宅中だ」
『丁度良かったわ。今日の晩御飯、何が良いかなって思って』
「それこのタイミングで丁度良いと言う意味が解らない」
『それで、肉じゃがにしようと思ってるからジャガイモ買ってきてくれない?』
「もう決まってんじゃねーか」
冷静にツッコむノア。
「了解」と言ってノアは電話を切る。
お遣いを頼まれてしまった。
「しゃーねぇな……ぁ?」
曲がり角を曲がった時だった。
ここで美少女とぶつかったりしたら、そこからラブストーリーに乗り換える事も可能かもしれないのだが、そこにいたのは白銀の毛の犬だった。
ただの犬なら可愛げがあるのだが、今ノアの目の前に居るのは超巨大な犬。
軽く3mはあるかもしれない。
全長で言えばその倍はあってもおかしくないかもしれない。
しかも、頭には三つの頭。
「な、何だこれ……?」
流石にノアでも、今までの人生でこんな犬を見た事が無かった為、驚きを隠せない。
「魔族……だな」
周りには誰もいない。
魔族の領域に入ったのだろう。
「ったく、久々に面倒そうな奴だな」
魔族は前足をノアに振り下ろす。
鋭い爪がノアに迫るが、それを難なく躱す。
「闇葬壊針!」
数本の闇の針がノアの手から伸びる。
普段はよく地面から出すが、別に手からそのまま出す事も出来るのだ。
「ガァァァッ!!」
「はぁっ!?」
驚くのも無理は無い。
魔族の咆哮だけで闇の針が掻き消えたのだから。
「ヴォォァァァ!!」
魔族が尻尾を振り回す。
闇の針が消えた事に気を取られ、躱せず吹き飛ばされ、電柱に背中を打ちつける。
「ぃっ……!くそっ、マジで面倒な奴だな」
魔族がノアに突進してくる。
「ちっ、闇嚼壁!」
ノアは手を上下に広げ、目の前に闇の壁を展開させる。
目前まで迫った魔族が前足を振り下ろす。
しかし、魔族の前足は闇の壁に呑み込まれる。
「咀嚼!」
上下に広げた手を合わせると、まるで口を閉じるかのように闇の壁が消える。
つまり、魔族の前足一本を呑み込んで、喰い千切ったのだ。
「からの闇葬壊針!」
今度は数本の闇の針を一本に凝縮し、魔族の腹を貫く。
その時、魔族の領域が解けた。
だが、魔族はまだ死んだわけではない。
「ギャァァァァ!!」
と、悲鳴のような咆哮の後、魔族は跳躍した。
もちろん、闇の針が刺さったままで魔族と繋がっているノアもそれに引っ張られる形となる。
魔族は数百メートルは跳躍しているだろう。
「へ……なななな、何ぃぃぃ!?」
ノアの耳に届いたのは未来の絶叫。
飛んでいた所にこんな巨大犬が目の前に現れたのだろう。
「落ちろ!要するに地面に這い蹲れーーーっ!!」
「待て未来!」
流石にこの状況ではネコと呼ぶ余裕が無かったらしい。
しかし、未来はノアの制止が耳に入らず、巨大なハンマーが魔族の頭上に現れる。
もちろんそれは魔族を打ち落とした。
そこで生じる問題が二つ。
一つは魔族と繋がっているノアも落ちると言う事。
もう一つは
「はへ?うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ハンマーを出した事で、未来の翼が消えたと言う事。
当然落ちて行くと言う事。
ここで落ちなかったらニュートンに謝らなければいけない。
「お、おち、落ちるぅぅぅぅぅ!!」
「あのバカ!!」
未来は混乱していて、翼を出す余裕が無い。
仕方なく、ノアは闇を紐のように伸ばして、未来を巻き付けた。
そして、未来を引き上げる。
因みに、巨大犬は引っくり返っている為、ノアは巨大犬の腹に立っている。
「おい!何やってんだバカ!」
「ノ、ノア!?」
「ったく、まぁ良い。それより一回しか言わねぇから良く聞けよ」
「へ!?うん!」
この状況が今だ良く呑み込めてないのか未来は適当に頷く。
「コイツが地面に落ちたら俺が足を固定する!そのうちにお前はコイツを倒せ!」
「へ!?うん!」
「本当に解ってんだろうな!?」
「要するにコイツを倒せば良いんでしょ!とりあえず飛びたい!要するに鳥になりたい!」
未来は背中から大きな翼を生やし、ノアを抱えて飛ぶ。
腕を翼にしないといけない事は無いらしい。
魔族が地面に堕ちると同時に、二人も地面に降り立つ。
「刀が欲しい。要するに、コイツを斬りたい」
ノアは闇葬壊針で魔族の足を縫い付け、動けなくする。
「行け!ネコ!」
「にゃん、って違う!要するに―――――」
未来が魔族に向かって跳ぶ。
ノアの闇葬壊針で、ケルベロスの足を固定している為、逃げられない。
「ネコじゃないッ!!」
未来は刀で魔族を一刀両断した。
「……で、今に至る訳だ」
説明を終えてノアは周りを見渡す。
生徒は誰一人としていない。
これは運が良かったとしか言えない。
「それは良いけどこれどうすんだ。噴水木端微塵どころか軽くクレーター出来てんぞ」
「………霊人にどうにかしてもらおう」
「まぁ、どうにかなるんならそれで良い。俺は知った事じゃない」
そこで、ノアは何かを思い出す。
記憶を遡ったばかりなので、思い出したのだろう。
「ヤッベ、俺帰るわ!」
「はぁ!?諏佐呼ばねぇのかよ!」
「電話で頼んどく!それより大変なんだよ!!」
ノアは全速力で走りだす。
「ルミナにジャガイモ頼まれてたんだったぁぁぁ!!」
「……要するにルミナさんにお遣い頼まれてたっぽいね」
「そうだな」
「ルミナさん?」
「ああ、アイツの家の居候みたいな人だ」
数十分後、ノアがルミナという人に怒られたのは言うまでもない。
(風見燈環)
「未来のキャラにハマってる風見燈環です」
(竜樹)
「自分が作ったキャラにハマってるって……空しいな」
(風見燈環)
「……やっぱそう思う?」
(竜樹)
「別に良いんだけどさ」
(風見燈環)
「けど?」
(竜樹)
「時雨が出番少ないって嘆いてたぞ」
(風見燈環)
「……ごめん。本当ごめん」
(竜樹)
「次回、第十一話『霞霰と霞霙』だ。次回もお楽しみに」