第零話『原点』
これはプロローグです。
次回からはちゃんと物語に入ります。
少女は尋ねた。
―――――泣いてるの?
少年は泣いてないと言った。
―――――じゃあ笑ってるの?
少年は笑ってないと言った。
―――――それなら怒ってるの?
少年は怒ってないと言った。
―――――なら今何を感じているの?
少年は言った。
何も感じていない、感じる意味が無いと。
―――――それは、私達がすぐにいなくなってしまうから?
―――――君が選ばれた人間だから?
―――――君に力があるから?
少年は無視した。
けれど少女は鬱陶しいほどに付きまとって来る。
どうせ、俺を置いて死ぬくせに。
だが、少女は死ななかった。
否、一度は死んだ。だが今ここにいる。
―――――私、君を置いて行かなかったよ。
―――――ずっと一緒にいてあげるから。
―――――一緒に行こう?
少女は手を差し伸べた。
それは、自由になれるという希望と、外の世界への不安だった。
少年は行かないと言った。
だが少女はずっと手を差し伸べている。
―――――私達は生きてるよ?
―――――怖いの?
少年は少し頷いた。
それを見て少女は微笑んだ。
―――――何が怖いの?
―――――私達は何も知らないんだよ?
―――――楽しいかも知れないよ?
―――――行こう?
その時の少女の笑顔は希望と夢に満ち溢れていた。
それらは光となって少年を照らした。
もう、怖くないんだ。
何も信用できない。
けど、この子と一緒なら……
少年は少女の手に手を重ねた。
少年は少女に憧れた。
しかし、そんなのもすぐ終わってしまう。
"少女の中"から"少女"が消えてしまった。
それから少年は人間に興味を持たなくなった、否、持つ事をやめた。
えー、次回から本編です。
今回はいわゆるプロローグって奴ですね。
(雪龍)
「次回、第一話『地獄への冥府の闇』です。お楽しみに~」