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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第陸縁:深まらない愛は愛じゃない・・・・・・?
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第Ⅸ十Ⅴ話:夏のイベントと言うけれど・・・?

 時はほんの少し遡って・・・。


「はぁ・・・。」


 廊下で一人溜め息をついているのは静流だ。

夕食を終え、あとは寝るまでの自由時間・・・なのだが、一人テンションが下がりまくっていた。

夏はイベント盛り沢山とよく言うが、これはちょっと特盛り過ぎだ。

ただでさえ、10以上も歳の離れた少年と同居する事でも大変だというのに・・・。


「違うわね・・・。」


 それは本質的な問題のすり替えだと考えるのも、静流という人間の真面目さだ。

杏奈と親しくなった征樹。

奏に告白された征樹。

同居という時間的有利(?)があるのにも関わらず、大きく溝を空けられた。

いや、それよりも琴音の"おばちゃん"発言にも大きな精神的ダメージを受けた。


(あと・・・5年早く生まれていれば・・・。)


 そもそも征樹と出会う事もないだろう。

5年早く出会ったとしても、現状と同じだ。

より犯罪の匂いがする。

そう考えると、結局時間ではないのではないか?とも静流は思う。

最初は嫌々で・・・次は見守りたいという母性にも近い保護者的感覚。

でも、今は・・・。


「はぁ・・・。」


 再び溜め息。


「征樹くんにとって、私は・・・・・・やっぱり、保護者、よね。」


 それ以外のナニモノでもないだろう。

しかし、それでは"期限付き"になってしまう。

それは静流の望むところではない。

確実にそう思うのだが・・・。


「嫌ね、こういうの。」


 様々な不安、リスクばかりが次々と思い浮かぶ。


「あら?」


 溜め息をついたまま、とぼとぼ部屋のノブに手をかけると、鍵がかかっている。


(征樹くん、いないのかしら?)


 先に戻ったはずの征樹が部屋にいない。

一緒に入浴をしなかったから、もしかしたら浴場にでも行っているのだろうか?


(じゃあ・・・今なら・・・。)


 ふと、自分も琴音のように・・・と頭に過ったが、すぐさま思考から追い出す。

しかし、持っていた鍵で扉を開け、自分のバックから着替えをいそいそと取り出して、頭を振る。


「・・・・・・馬鹿みたい。」


 人の顔を伺い、悩み、自嘲し、また悩む。

今までの人生の中で、ほとんど有り得なかった事だけに、どうしたらいいのかが解らない。

あまりの勝手の違いに脱力して、その場に座り込んでしまう。


「本当、馬鹿みたいね・・・。」


 着替えを握り締めたまま、再び呟く。

そのまま視線を落とし、動こうとしない静流。

もう征樹を探して、貸切風呂に行く気力も抜けてしまっていた。

しかし、気分転換をしたい気もある。


(この際、内風呂でもいいか・・・。)


 何よりも近い。

部屋から出なくて済む。

今まで大浴場や貸切風呂ばかり使っていて、内風呂を使う機会が無かったが、これはこれでいいだろうと一人納得する。


(確か高級そうな檜風呂なのよね。)


 こういう所のチェックに抜かりが無いのも、静流が生真面目だというのが表れている。

ともかく着替えも用意した事でもあるし、征樹が外に出ている間に入浴を済ませてしまおうと考えた静流は、ようやく再動を始める。

征樹が戻ってきたら、まがりなりにも"二人の時間"を過ごせるという期待だけを胸に。

それは静流にとっては大切な時間には違いない。


 そして長々と一人の少年と、一人の女性が悩んだ時間を経て、時は今という現状に至る。


「あ。」 「え?」


 固まる二人、沈黙が降り、凍る空気。

ハプニングというのは、得てしてそれに遭遇する者達にとっては予期せぬものだから、ハプニングというのだが。

これもまた、夏のイベントの一つなのだろうか・・・?

お約束、お約束。

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