第Ⅷ十Ⅷ話:袖触れ合うも、一生の縁?
末広がり話数ですナ。
いや、深い意味はナイデスケド・・・(汗)
「ふむ・・・。」
出だしから何を話したらいいのか、征樹は困っていた。
問題や悩み事があるかといえば、特段何があるわけではない。
少なくとも、生死に関わるものでもない。
それに、この辺りの事ならば、人間ある程度はある事だとも思えた。
ただ、それが征樹には一気に押し寄せているというだけで・・・。
「掴みあぐねているのだな。」
徐に少女が呟く。
「誰かから、好意を素直に向けられるという現象を。」
「少なくても、一緒にいてくれるから・・・嫌われてはいない・・・はず、かな・・・とは。」
現に静流は自分と寝食を共にしている。
杏奈と琴音にしても、それに近い状態だ。
「それでも、今回のようにあからさまな主張をされた事はない、と?」
頷くしかない。
そもそも、何故、自分の傍にいるのか?などという質問を面と向かってするような人間はそうはないだろう。
「確かに人は他者評価というものも必要だが、この場合、自分の言動が自分の預かり知らぬとこで他者に影響を与えているというコトが問題のようだな。」
ふむ。と、一人で納得の声を上げる。
「果たして、それは自分が責任を負うべきなのか・・・か。」
「そこまで極端ではないけれど・・・。」
自己と他者の評価の激しい差異。
どちらかというとそれに驚いて、どう整理したらいいか解らない。
「まぁ、なんだ、そんなものは無視してしまえ。」 「は?」
別に明確な答えに期待をしていたワケではないが、その発言の意図が掴めず、まじまじと少女の顔を凝視してしまう。
「オマエが真面目で、不器用で、イイヤツというのはよぉ~く解った。」
うんうんと一人頷く少女。
「でもな、一々オマエが責任を取れる事でもなかろう?」
「・・・まぁ。」
だから困っているのだから。
「それは未来を把握するのと同意義だ。袖を触れるだけ、スレ違うだけだった相手も、オマエの言動次第では友人になったかも知れん。恋人、伴侶になったかもな。」
少女の勢いは止まる事を知らず、更にまくし立てていく。
「それは所謂、"縁"というヤツだ。それを全て手繰り寄せ、読み取るなんてのは無理なんだよ。」
それは神でもない限り、無理だという事。
矛盾はない。
「じゃあ・・・。」
自分の周りにいる人達はなんだというのだろう?
奏にしたって・・・。
"自分ハ、愛サレル 人間カ?"
「ただな、そうやって悩んでしまうオマエのその誠実さも含めて、皆がいるのだろうよ。大丈夫だ、オマエは人に愛される人間だよ。ただ愛し方が解らないだけでな。」
フッと大人びた笑みをすると、少女はすぐさま立ち上がる。
「私が保証してやろう。」
ぱんぱんと水着の尻をはたく横で、征樹は少女を見上げてその大きさ、達観した眼差しを見つめる。
「オマエはイイヤツだ。それにな・・・。」
傍らにいる征樹に座った時と同じように、今度は手を伸ばして立ち上がるよう促す。
「オマエは私の帽子を拾ってくれた。私はオマエの話を聞いた。これだって"縁"なんだぞ?」
「あ。」
彼女の柔らかくて、身長と同じように小さい手を掴んで立ち上がった征樹は呟きを漏らす。
その通りだ。
これが縁と言わずして、何だというのか。
「なぁ?そう悪いものでもないだろう?こうやって人は出会い、別れ、幾多の想いを刻んでいく。要は気の持ちようだ。」
ニカッと歯を見せて不敵に笑う少女に対して、不思議と反論が出来なかった。
「ほれ。」
そんな呆然としている征樹の胸に押し付けられる物体。
「やる。」 「え?」
ぐいっと押し付けられた物体である帽子を見つめる。
「この縁がオマエの中に残ると、私も嬉しい。ではな。」
言うだけ言って、すぐさま踵を返して征樹の前から去って行く。
「ちょっと!」
はっと我に返った征樹が声をかけると、少女は振り向きもせず手を振って応えるのみだった。
「・・・お礼・・・言えなかった。」
元々、小さかった少女の影は、すぐに見えなくなっていく。
「あ・・・名前、聞くの忘れてた。」
そんな事にすら気づかずに会話。
しかも、あんな込み入った話を・・・。
「はぁ・・・戻ろ。」
一言呟いた征樹は、手に持った白い麦わら帽子を被り引き返すのだった。
ベタがベタで、うずうず(謎)




