表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第陸縁:深まらない愛は愛じゃない・・・・・・?
88/214

第Ⅷ十Ⅶ話:拾う神はちっちゃくても大きかった。

「っく・・・う゛ぇ・・・。」


 奏のいた場所から、姿が見えなくなる距離まで走った後、征樹は急な嘔吐感にみまわれて、岩場の影でえづいていた。

正直、征樹自身、整理出来てなかったし、何故このような状態に陥っているのかも解らない。


「う゛ぅ・・・。」


「何やっとる、酒でも呑んだか?」


 状態をくの字に折っていた征樹の頭上、岩場の上から声がして反射的に顔を上げたのだが、肝心の声をかけた人物が逆光でよく見えない。


「ヤレヤレ・・・吐いてはおらんな?吐き気だけか?」


 岩場の上で後光が射したような状態になっていたその人が、征樹に向かって来る。


「長時間砂浜にでもいたのか?熱射病かも知れん。」


 てくてくと歩いてくる人物は・・・。


(小さい・・・。)


 身長が征樹よりあからさまに低い。

150cmあるのだろうか?


「何を呆けてる、ホレ、頭出せ。手が届かんだろ?」


「あ、はい。」


 言われるがままに、その"少女"に向かって額を突き出す。

藍色。

ちょうど、今の海の色のような髪と瞳の色。


(銀?)


 藍の髪の中に、日に透けて光る銀髪が混ざって見えた。

よく注意して見なければ、気づかない程度だったが、征樹が彼女に向かって突き出したお陰でそれを視認する事が出来た。

ぺたりと額に置かれる、少し冷たい手。


「うむ。熱はないか。視界ははっきりしてるな?」


 紺色の競泳用水着に幼児体型、そして偉そうな態度。


(何か、アンバランス・・・な人・・・。)


 こんな状況になっても相変わらずバッサリの征樹だった。


「多分、一時的な・・・神経性のものかと・・・。」


 心配してもらったのだから、常識的に考えて下手に出るべきであろうという思考が彼らしい。


「ん?若いのにな。ゆっくり深呼吸してみろ。ゆっくりだぞ?」


 若いのはどっちがだと突っ込みたい衝動を我慢して、深呼吸。


「下は見るなよ?余計気持ち悪くなるからな。どうだ?」


「多少は・・・。」


「そうか。」


 未だ嘔吐感はるものの、精神的な余裕が出てくる。

余裕が生まれると、今度は目の前の少女の事が気になる。

主に何者なのかが。


「あの、君は・・・?」


「ん?私か?なんだ?それは新手のナンパか?」


 体調を崩した今の自分に、そんな事が出来るか!と、言いそうになるも、具合いが良かろうとナンパなぞしないので、この言い方では意味がないと気づく。


「こんな所で何をしているのかと。」


 ここは岩場だ。

遊泳区域でもないし、人気だって無い。


「あぁ、人を待っていたんだが、ちと、な?」


 チラリと海の方を気まずそうに見る少女つられて視線を動かすと、少し遠方の海面に何かが浮いていた。


「君の?」


「うむ。」


「取りに行かないの?」


「行ってもいいんだが、私は魚類でもないし、巨人でもない。」


(え~と・・・。)


 少女の唐突な不思議発言に、一瞬思考回路が停止しかける。


(つまり・・・泳げないうえに、足もつかないと・・・。)


 なんて回りくどい。


「これも重力のなせる因果か・・・。」


 とうとうスケールが惑星サイズにまで壮大になってゆく。

ふと、徐に征樹は身体を海に向け、歩を進める。


「おいっ。」


 少女の声に反応もせず、そのままどんどん進んで行き、身体を投げ出し始めたかと思うと、あっという間に海に浮かぶ物体を掴む。

そして、すぐさまその物体を掴んだまま、再び泳いで岸に戻ってくる。


「ふぅ・・・。」


 遊泳禁止区域だが、そこまで大変ではなかった。

きっと干潮だったり、満潮だったりすると危険なのだろう。

少し上がっている息を整えながら、持っていた物体を少女に渡す。

白い麦わら帽子。


「・・・済まんな。」


 物言いは尊大だが、一応礼らしきモノを言うあたり、そこそこ礼儀正しいのだと征樹は思う。


「ふむ・・・おい、オマエ。」


「?」


「名前は?」


「僕の?」


「他に誰がいる?」


 確かに周りには人はいない。


「征樹、葵 征樹。」


「征樹か・・・ふむ。で、"オマエ"。」


(名乗った意味あったんだろうか?)


 一人で納得したうえにそれかと、少々呆れる。


「さっき、神経性と言ったな?何か悩み事でもあるのか?」


「え?」


「帽子の礼に私で良かったら、聞いてやるぞ?」


 征樹ははたとそこで気づく。

"礼儀正しい尊大な人"というのは、そもそも両立するのだろうかと。


「もっとも、私が役に立つとは限らんが・・・まぁ、言ってみると楽になるというしな。」


 そう言うと少女は、岩山の横にどっかりと座り込む。

しかも、胡坐で。


(ッ?!)


 突然に視界に入った少女の水着、正確には胡坐をかいた足の中心を見ないように・・・。


「ほれ、座れ。」


 ぺしぺしと自分の隣のスペースを叩いて征樹を促す。

表情にはさしたる気負い等というものもない。


「あの・・・失礼します。」


 何故だか、逆らう事も出来ずに腰を下ろす。


「うむ。好きに話せ、何でも良いゾ。」 

さぁて、そろそろ書ききれなくなってきたぞ~(苦笑)

翌日更新アリマス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ