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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第陸縁:深まらない愛は愛じゃない・・・・・・?
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第Ⅷ十Ⅱ話:Lady×Ready。

時間経過的にはキリが悪いですけれど、ここから新章で。

「不公平だ・・・。」


 旅行2日目。

杏奈は砂浜で一人呻いていた。

もしくは己の身を呪っていた。


「どうした?」


 旅館を出て、この旅の本命である海に行く事になったのだが、今朝は酷い朝を迎える事に。

心配して声をかけてくれた征樹が、普段とはうってかわって憎いと思う程。

海に着いてからも着替える事なくベージュのキュロットパンツに黄色いキャミソール。

白いパーカーのフードを頭にずっぽりと被った杏奈は、ビニールシートが敷かれた砂浜に体育座りで項垂れているのである。


(何でこんな時に・・・。)


 水着に着替えて、これから征樹に見せ付ける(と勝手に思い込んでいる)皆が羨ましい。


「葵くん・・・どうかな?」


 感想を恥ずかしげに求める奏は、以前の試着の時とは違う、淡いピンクのセパレート水着だった。

胸を覆う部分は白く縁取られ、下は腰骨の辺りから同じく白のフリルが付いている。

可愛い系路線は以前と同じだが、露出度は上昇している。


(・・・恥ずかしい・・・でも、前に杏奈さんのおヘソ褒めてたし・・・。)


 世の中には冗談が通じない、通じても一定の範囲内のみという人間もいるという良い例である。

ある意味で悪いが。


「・・・可愛いと思うよ。」


 社交辞令ではなくそう述べる征樹に対して、彼が嘘を言っていないと理解出来ている杏奈は面白くもない。


「色々と征樹くんに準備を任せちゃってごめんなさい。」


「あ・・・。」


 申し訳なさそうに奏の後ろから現れる静流の水着姿に声を漏らす。

こちらは以前見た通りのホルダーネックタイプなのだが、色は真紅に変わっていた。

しかも、胸元と臍の部分、背中までがざっくりと空いている。


「どう?」


 それっぽくポーズを取ってみるのだが、まんまモデルとしか言いようがない。


「す・・・。」


「す?」


「素敵・・・です。」


 何をどう褒めればいいのだろうか?という疑問を頭に浮かべたままで答えるしかない自分を征樹は呪う。


(顔を真っ赤にしちゃって、やっぱり征樹くんてお臍フェチなのかしら?)


 試着室での杏奈との会話をちゃっかり聞いていた静流は、完全に見当違いな方向を向いていた。


(・・・いいなぁ・・・私も、早く大人になりたい。)


胸から腹、腹から腰、腰から尻。

どれをとっても静流に敵わない奏は、そう強く思う。

別に身体で征樹を誘惑しようなどとは思ってもいないが、勝負の土台から負けるのは嫌なのだ。

と、言っても、大人になったからといって、スタイルも静流のようになるとは必ずしも決まっているわけではないが。


「征樹、鼻の下伸びてる。」 「そんな事はない。」


 即座に否定するところが、突っ込んだ杏奈には更に面白くない。


「お披露目~。」


 じゃんじゃじゃ~んっとちょっと古い登場時の効果音を口にしながら、琴音も水着を征樹の前に見せる。

白いビキニタイプの水着。

試着室で見たのとこちらもほぼ同じだが、若干胸を覆う布地の面積が小さく三角になっている。

それも覆う部分以外は完全な紐タイプで、下もパレオがなくなっている。


「あのデパートの中だと、これくらいしかサイズ無いんですって。」


 困ったわねぇと苦笑する琴音をよそに征樹だけでなく、女性陣も含めた全員の視線が胸に注がれる。

サイズの選択肢がないくらいの大きさという事だ。


「お姉ちゃんも征樹ちゃんの好きなおヘソ、出してみたの♪」


(僕、そんな事言ったっけ?)


 特に深い意味を込めて言ったつもりなど当然ない征樹は、そんな事など覚えてすらいなかった。

しかし、ここでそれを言うとまた厄介な事になりそうなので、黙っている事も出来るくらいの器用さはある。

あるつもりだ。


「杏奈は着替えなかったの?」


 試着室の時と変わらない勢いで水着姿になり、褒めろと言ってこない杏奈に不思議そうに首を傾げる征樹。

流石に征樹だって、それくらいの性格の把握は出来るようになった。

一歩前進・・・だろうか?


「アタシは・・・今日は泳ぐつもりないの!」


 苛立ちで怒鳴り出す。


「私も最初は荷物番するから、三人でいってらっしゃい。」


 何かに感づいたように琴音が杏奈の横に座る。

たゆんっと揺れるその物体を杏奈は思わず凝視してしまって・・・。


(すごっ・・・。)


 何をどうしたら、ああも育つのか見当もつかない。

杏奈自身も他の同級生よりも大きい自覚はあるにも関わらず。


「そう・・・解った。じゃあ、行ってくる。」


 琴音の発言にさしたる疑問も突っ込みもせず、海へ向かう征樹と、その後を追いかける奏と静流。

それをにこにこと手を振りながら、見送る琴音。


「あ~あ・・・。」


 杏奈はそれをつまらなさそうに、そして羨ましさ一杯で見送る。


「杏奈ちゃん、辛くなったら言ってね?」


「琴音さん・・・。」


「ね?」


 ウィンクしてくる琴音の可愛らしさと、優しさが身に沁みる。

琴音だって、征樹と遊びたいに違いないと杏奈にも解るから。

それでも彼女は、自分を心配して残ってくれたのだがら、感謝の言葉もない。


「はい・・・。」


「杏奈ちゃんは重い方?」


「いえ、軽い方・・・かと。明日の夕方にはほとんど・・・。」


「そう。」


 にっこりと杏奈に微笑んだ後、琴音は浜辺の波打ち際で戯れる三人を眺め始める。


「私も昔は憎々しげに思っていたわ。」


 不妊と知ってからは余計に・・・本当、完全に無用の長物だと思っていたから。


「今も変わらないけど・・・。」


 それでも昔より辛くならないのは・・・と、海辺を踊る影の中の一つを見つめる。


「考え方を変えると、自分が女だって・・・女として誰かを愛せるんだって・・・て、ちょっとヘリクツね。」


 苦笑する。


「早く終わって、皆で遊べるといいわね?」


「はい・・・う~っ、"の日"のバカヤロー!」


 海向かって吠える内容としては、如何なものかと誰しもが思う、そんなちょっぴり恥ずかしい事を杏奈は叫ぶのだった。

次は一体誰がメインなんだろう?(ヲイ)


翌日も更新致します。

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