第Ⅷ話:沈んだり、叫んだり、謎だったり。
更新予定、日々の呟きなど、活動報告にて書いておりますので、よろしかったら併せてご確認を~。
「う~ぶぶぅ~まびっだなぁ・・・。」
湯船に鼻の下まで浸かった征樹は今日の出来事を思い返していた。
突然に父から連絡があって・・・いや、突然ではない父の連絡なんぞ一度たりとも無いが、その父から家政婦さんみたいなのが来ると聞かされ。
「つか、普通、家政婦と言えば、家の秘密をうっかり見ちゃうあの人みたいなのだろ・・・。」
アラ、まぁ。とか甲高い声を出すようなオバさんではなく、理知的でスレンダーな美人が来て、胸もおっきくて・・・。
「って、ナニ考えてんだ僕は。」
服の上からでも圧倒的な存在というか、特盛り?などと思い出していたら・・・。
「ま、まァ・・・そうなるよね・・・思春期だし・・・。」
反応してしまう青い性を仕方ないモノだと自分に納得させて。
「本当、変なの。美人は瀬戸さん達で見慣れてるハズなのに。」
見慣れるという事と免疫がある事は別だという事に気づいてない征樹。
綺麗で長い黒髪に、理知的な瞳と薄い細い唇。
おっきな胸にタイトスカートに包まれたお尻・・・。
「って、いがん、うっぎゃあぁーッ!」
色々と思い出すと止まらなくなって、何というか、こう大変な事に。
主に下半身だが。
のぼせそうなのと、想像が爆発しそうになって思わず叫び声を上げる。
「征樹君、どうしたの?」
「はひぃっ!」
風呂場の脱衣所から静流の声がして、思わず飛び上がった。
何とか前を押さえているのがポイントだ。
「急に大きな声がしたものだから。」
「い、いえ、なにも。ちょっとしたことです。よくあるでしょ、お風呂場で歌ったりとか。」
叫ぶのと歌うのでは全く違うのだが。
「そ、そう。・・・あ、折角、脱衣所まで来たんだから、背中流してあげましょうか?」
静流は再び胸を高鳴らせながら聞いてみる。
当の征樹にしてみたら、それどころではない。
服の上からでもアレなのに、更に薄着になられでもしたら・・・。
出てしまう。
下半身からでなく、まず先に鼻から白でなく赤い方が。
「遠慮しておきます。」
「そう。」
静流は征樹のリアクションが楽しくて言ってみただけだたのだが、自分が出した声は残念さが含まれていた。
「は、はい。もうすぐ出ますから。」
「ん。わかったわ。」
静流が脱衣所から出て行って気配がなくなるのを確認すると、征樹はかたまったままの状態で、ずるずると湯船に沈んでいった。
「へ、平穏な日常は・・・どうなったんだ・・・?」
そう呟く。
しかし、平穏ではないという状況はそうなのだが、征樹の今までの日常も平穏と呼ぶべきものではない。
征樹が風呂から上がり、居間に行くと静流は紙の束を眺めているところだった。
仕事か何かだろうか、とすぐに征樹は思う。
「あ、あの上がりましたけど?」
征樹が声をかけると、静流はそこから顔を上げてにっこりと微笑む。
(心臓に悪い。)
征樹は一呼吸すると、再び言葉を続ける。
「仕事ですか?」
「え、まぁね。引継ぎ用のね。さてと・・・。」
紙の束を脇に重ねてどけると、おもむろに立ち上がって背伸びをする。
反られた背中に合わせて、元々主張し続けていた胸が更に持ち上がって主張する。
(心臓に悪い、絶対。)
「私もお風呂いただくわね。」
「は?え、あ、えー、はい。」
予想外の展開。
征樹は色々と聞き返したかったが、静流はさっさとお風呂場へ行ってしまった。
しかもタオル持参で。
「謎だ・・・。」
結局、湯上り征樹と紙の束だけが居間に残されたのであった。




