第Ⅶ十Ⅶ話:罰☆げぇむ。
次々と場(座布団)に捨てられていくトランプ。
今が何巡目かを誰かが数えているわけでもないが、繰り返し淡々と進んでいく同じような動きの中、皆終始無言だ。
「いっちば~んっ。」
そう声をあげ、高らかに宣言したのは杏奈だ。
これで質問をする権利を得た事になる。
あとは征樹が最下位になればいい。
杏奈は熱い視線を征樹へと・・・。
「これは・・・やっぱり私が最下位、かしら?」
杏奈の思惑を外れ、最下位になったのは琴音だった。
そもそも、このルールの穴。
"2~4位になれば、何の利益も不利益もない"のである。
こんな単純な事に気づかない程、皆は目先の利益に惑わされていたのだ。
征樹を除いて。
「質問は何かしら?」
(くっ・・・。)
にっこりと笑みを浮かべ杏奈に問う琴音の表情を見て、一瞬ワザとではないのかと彼女の頭に過るも、とりあえずルールはルール。
次を続ける為にも質問しなければならない。
悩む杏奈。
当たり障りの無い質問でもいいのだが、それでは罰ゲームの意味をなさない。
多少の辱め、ペナルティの側面がなければ。
「えと・・・・・・今の、下着の色とか・・・?」
非常に低レベルな質問。
それは周りの空気でも解るくらいに。
「あら、まぁ。」
杏奈の非常にアレな質問に対しても、琴音は一切嫌がる表情もなく・・・。
「ん~、ベージュ・・・かしら?」
自分の身につけているものなのに疑問系なのが引っかかるが、随分地味だなぁと杏奈は思う。
自分なんて、何時使うかわからないクセに買っておいた可愛い下着を片っ端から旅行バッグに詰めたというのに。
「というか、肌色?」
「肌色?」
そこではたと静流が言葉を漏らす。
「着けてなければ・・・肌色よね?」
「は?!」
「だって、浴衣って"そういうモノ"でしょう?」
何か間違ってるかしら?という表情をしている琴音の理論に皆は目を丸くする。
罰ゲームの質問から、こんな展開になるとは・・・。
ゴクリと琴音の豊満な胸を見て、杏奈が唾を飲み込む。
あの浴衣の中は素肌だと思うと・・・ふと征樹を見ると顔を真っ赤にしているのが見える。
どうやら、同じような事を考えているらしい。
性別:女の自分が見てもそう思うのだから、征樹の反応は仕方が無い。
色々と注意する気にもなれなかった。
第一、杏奈自身の質問でこんな事になったのだから。
「つ、次は七並べで勝負ですっ!」
呆気に取られる皆の中で奏が真っ先に2回戦目を促す。
かくして、ほぼ強制的な次戦へ・・・。
七並べというゲーム自体の説明はいらないだろう。
実際のところ、このゲームは初期手札にも左右されるが、パスのタイミングとジョーカーの行方だけに注意していれば、そうそう負けるものではない。
説明する程、それは簡単な事ではないが、2~4位は無害という状態の現在はそう難しい事ではなかった。
「はい、上がり。」
「うぅ~。」
今回の1位は、静流。
最下位は、奏だ。
「じゃあ・・・同じく、下着の色にしましょう。」
本音としては、奏が何故征樹の事をそこまで詳しく知っているのかを知りたかった静流ではあったが、皆の、征樹の前でそれはどうかと思い留まった。
最下位は征樹ではないし、ここは無難な質問でまとまったのだ。
「えぇっ?!」
「先輩、"ルール"ですから。」
のけぞって引いている奏に対し、杏奈が次の勝負をする為だと言わんばかりの・・・実際、そう言っているのだが、強固にアピールすると奏は俯いてしまう。
「・・・上下お揃いの・・・黒デス・・・。」
ぽつりと。
(ヤルわね・・・。) (それって完全に勝負しにきてるじゃない。)
奏の白い肌に黒という色合いは、さぞかし映える事だろう。
「大人っぽいのねぇ~。」
琴音には言われたくないと言うのを他の女性陣が堪える中で、征樹は再度赤面する。
(これって・・・僕的には1位以外の何位に入っても罰ゲームなんじゃ・・・。)
征樹の考えは確かにもっともなのかも知れない。
大体、浴衣姿という普段とは違う薄着の女性がいて、その薄い一枚の下にある最後の布地(琴音は違うが)を想像するというのが無理だ。
「じゃあ、次は大富豪にしましょう。」
あわあわとなっている奏とそれを見る二人をよそに、琴音はさっさとトランプを回収して3回戦目を示唆する。
(まだ続くのか・・・コレ。)
次も自分にとっての罰ゲームと相違ないのだろうか?
そう少しうんざりしながらも、配られたトランプを律儀に手に取る征樹なのであった。




