第Ⅶ十Ⅴ話:家族団欒の夕餉のカタチ?
少しずつ、ハーレム系のカタチというか、ノリというものに慣れてきた気がします。
相変わらずの文章量ですが。
「征樹ちゃん、あ~んっ♪」
ノリノリである。
きっと誰もがやってみたくて出来ない、或いは誰かがやろうと思った事を平然とやってのけたのは琴音である。
征樹に拒否されでもしたら、精神的なダメージ(恥ずかしさも含めて)を負うであろうその行為。
「いや、自分で食べられるし・・・。」
案の定、皆が予想していた通り、遠慮するというか、拒絶する征樹の様子にこんな風になるからやらないで良かったという安堵の空気が・・・。
「あ~んっ♪」
「いや・・・。」
「あ~んっ♪」
「だから、その・・・。」
「あ~んっ♪」
「・・・・・・あ~ん。」
まさかのゴリ押し!全力投球!
これにはなす術も無く征樹が折れて、口を開ける。
(そ、そんなテが?!) (征樹・・・押しに弱いのかな?)
ノーガード戦法(?)のような状態で打開する様を見て、静流と杏奈はそんな事を思う。
「あ、あの、鶏肉好きでしたよ、ね?コレ。」
あんぐりとなりながら、琴音と征樹の様子を見ていた二人をよそに向かいに座っていた奏が箸で鶏肉をつまんで、征樹の眼前に出す。
ちなみに征樹の両隣は年長組、向かいは年少組である。
(前から思ってたけど、何でそんなに征樹のコトをよく知ってるんだろう?)
好きだから。という理屈は解るが、普段の生活では全く接点がないのである。
征樹が部活をしているとか、外交的・社交的なら話は別だが、生憎それはない。
そうだったら、これまで杏奈は苦労してなかっただろう。
「あ、ありがとう。」
奏の申し出に皿を出そうと・・・。
「あ、あ、あーん!」
目をぎゅっと閉じて、箸を突き出してくる奏。
(・・・何か新手の罰ゲーム?)
征樹の通常の思考回路だったら、そう思ってしまうのも無理はない。
「えぇと・・・。」
正直なところ、本当に困っていた・・・。
「あ、あ~ん?」
何処の世の中に疑問系で、こんなバカップル的展開を受け入れる輩がいるだろうか?
しかし、罰ゲーム的な流れなら、これが一瞬で終わって最も楽な対応だと咄嗟に判断した結果なのだから仕方ない。
これも征樹クオリティというヤツだ。
だが、征樹のこの対応は、杏奈と静流には予想外だった。
姉と自称している琴音はまだしも、一番接点が少ないだろう奏に対してもコレなのである。
これ以上、遅れをとるわけにはいかない。
「征樹、アタシのもあげるよ!」
次に動いたのは杏奈だった。
行動力の差だろうか?
それとも若さ・・・言い換えれば、大人としての立場や躊躇いの差だったのかも知れない。
「いや、まだ僕のもあるし、そんなに鶏肉ばっかいらない。」
「あぅっ。」
玉砕。
見事なまでの玉砕である。
しょんぼりする杏奈の様子に苦笑いしつつも、内心ほっとする静流。
もしかすると、自分がなっていたかも知れない状況だった。
だが、同時に恋のライバルであろう杏奈の失敗にほっとしている自分。
その自分がとてつもなく嫌な人間だとも思えた。
ある意味、その感覚が彼女の良識で、美点とも言える。
この際、未成年に対してどうのこうのは別として。
恋は盲目。
それはこの場にいる女性陣が充分に感じている事だろう。
「じゃ、次は何がいいかしら?」
「もう充分、大丈夫です・・・。」
約一名は感じているかどうかは、甚だ疑問ではあるが。
「あ、じゃ、アタシもー。」
メゲない杏奈。
「あらぁ、楽しいわねぇ。」
「・・・私も。」
(だから・・・どんな罰ゲームなんだよ。)
よくわからない女性陣のテンションについていけず、完全に取り残されたような形になっている征樹。
楽しそうな琴音の微笑み。
便乗する奏。
夕食を食べ終わるまで、まだまだこの喧騒は続きそうである。
「・・・これも・・・家族団欒・・・か。」
見当違いな方向かも知れないが、征樹は一人苦笑した。
やっぱり琴音さん、最強説?(苦笑)




